第278話 気がかり

2010年03月12日 03時09分00秒 | 子育て・「おママごと」

秋の運動会と並ぶビックイベントといえば、お遊戯会。
時期的に年度末に開催されることから、
もしかしたら園での最大の年中行事かもしれないこの発表会。
保育園での日常の様子がその時如実に映し出されることから
今は「生活発表会」という名で開催されているメインイベント。
息子の勇姿を見るため、夫婦揃って土曜休暇を取得。
じぃじ、ばぁばにも声援依頼し、両家総出でKの出番を待ちわびた。

かぶりつきで緞帳を見つめる。
ついに、幕があがった。
瞬時にステージ上の息子を見つけ出す。
始まると同時に、息子が輪から外れ、背中を向けて座り込んでしまう。
どうした、K?!
みんなの輪からの距離は1メートル。
時折ちらっと見える息子の傷ついた表情にいてもたってもいられない。
舞台上の息子を抱きあげたい衝動をおさえながら、
誰か・・・先生、息子を抱っこしてあげてくださいとただただ祈る。
センターポジションを確保した我々。
左手隅にいる息子を茫然と見つめる私に、
右向きにカメラを構え、手を振り、呼びかける笑顔が視界に入る。
耳には音楽が届かない無音の長い時。早く終わってくれと願う。
ふと気がつけば、隣りの主人はいつの間にかビデオカメラをまわしていない。
あまりの出来栄えに、撮ることを止めた主人に腹が立つ。
Kが後々見たくない映像だと勝手に判断して止めたのだ。
何もできていないかもしれないけれど、この歳の発表会は一生に一度。
いつか笑って話せる日がくるんだから・・・残さなきゃ
と怒鳴りたいが、周りの迷惑になるので、カメラを奪い取って、間もなく終わった。
ようやく終わってくれた・・・

どうして? なぜ? 理由を探す。
息子は森の妖精。色々な動物に変身しながら妖精たちが遊ぶという演目設定。
発表会前、みんながワーッとなっている時、Kが固まってしまうと聞いていた。
ノリ遅れるのか・・・みんなの勢いにひいてしまうのか・・・
手がかりを育児日記に探す。
お馬さん(に変身)が苦手なようです。お馬さんは固まってしまう、とある。
発表会前日、出来栄えも気になるので、息子にきいた。
どんなことするの? お馬さん? お馬さん、ママにみせて。
イヤだと言う。ママ、お馬さん、どんなのかわからないから、教えて。
私がしつこくお願いするので、かんねんしたのか息子が見せてくれた。
それは、一瞬だった。私が、あ!と思った瞬間、息子が馬を止めてしまったからだ。
え、短くてわかんなかったよ。もうちょっと、みせて。
お願いしたが、もう二度と見せてくれなかった。
今までの原因はこれだと。
パッカパッカと、同じ右足を踏み込むギャロップ(スキップ)ができなくて、
微妙に左足まで出てしまって止まってしまうのだ。

翌当日、心配だったので、「楽しんでおいで」と送り出した。
カエルさん、ゾウさん、ちょうちょさん、とんぼさん、他の色々な動物に変身できるのに、
馬ができないからといって、まさか本番すべてを拒絶するとは・・・
きっと当日を迎えるまでに自信を失っちゃったんだね。
自分にはできないって思っちゃったんだね。
だから、拒絶しながらあんな傷ついた悲しい顔をしていたんだね・・・
できなくても、それが可愛いのに!
パパ似でプライドが高い恥ずかしがり屋さんなんだから(笑)

出番が終わると楽屋口に保護者が迎えに行くことになっている。
出てきたKに何と言えばいいのか・・・?
みんな笑顔で出てきた。よくがんばったね~とか。上手にできたね~とか褒められている。
なかなかKが出てこない。
ようやく出てきたKをやっと抱きしめてあげることができて、
私は「よく最後まで泣かずにいたね」と言った。
もっと何かしら言いたかったが、
注文になってしまうようで、これ以上傷つけてしまうようで言えなかった。
あの時の一言は重要だったような気がするだけに、
あの時、たった一声、なんと言えばよかったのか・・・
その一言で子育ての結論がでるわけではないのだが、
たくさんの選択肢の中から何かを瞬時に選んでいく作業に、あぁ 子育てって難しいなと。


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数年前のうちの息子・・・☆ (あぷりこっと♪)
2010-03-12 14:26:47
年中の運動会の日の朝、突然“行かない!”“踊りたくない!”と言い出し、なんとか引きずって担任の先生に引き渡した所、やってくれましたよ・・・。
みんなが元気に可愛くお遊戯を踊る中、みごとに最初から最後まで突っ立ったまま・・・★
有言実行、やらないと言ったらホントにやらない。あれだけの観衆を前に、あんなに目立てるなんて、ある意味すごい度胸やわ・・・と思ったものです。
その年の、音楽教室の発表会でも、やっぱり“歌わないからね!”と宣言するも、運動会の数倍の観衆を前にして、またしてもやってくれました★その後も、練習では、なんとかやっていても、本番はどうなるかわからないという冷や汗ものを、私は何度か味わいました・・・。
けど、本番がどうであれ、ありのままの息子の姿。それでいいじゃない♪って思いました。
今思えば、彼なりに本番独特の緊張感を感じていたのかもしれません。
ここ最近は、大きな行事で私がドキドキする事もなくなりました♪
Kくんも、小さな胸にいろんな思いをいっぱい抱えていたのかもしれませんね☆
それも、成長過程。あんな事でハラハラさせられたな~なんて笑い話になりますよ♪

はてさて、我が家も来週の連休には、また音楽教室の発表会。今年は舞台でどんな姿を見せてくれる事やら・・・♪
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あぷりこっと♪様 (とーま由花)
2010-03-13 06:41:09
ありがとう。
息子が立ち尽くすというか、
うちの場合は座り尽くすなんだけど、
それを客席から見守る親の気持ちといったら・・・
という同じ経験をあぷりこっと♪さんもしていたのね。
そうだね、彼なりに緊張し、彼なりに自己主張し、だね。
自己主張、勇気のいることだしね。

あぷりこっと♪さんの日記を読んで、
お子様の成長とともに、
子供が大きくなるにつれて精神疲労・・・という文言が、ほんとにそうだなと。
体力勝負の育児から思春期の親の精神疲労。
これからも色々ありそうです(笑)
そのたびごとに、親として悩んだり、笑ったり。

来週の発表会、あぷりこっと♪さんの息子さんの主張、私も気になります(笑)



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