第46話 粋な桜

2005年04月04日 23時55分46秒 | Weblog

今年も、咲いた!
私のお気に入りは職場の昼休みに垣間見る桜。
建物2階、鍵がかかって入れないその部屋を覗くと、正面に大きな窓が三面見える。
その向こうに桜の木が1本。
ちょうどその高さで枝を伸ばし、花を咲かせている。
ガラス窓に描かれる見事な桜の屏風絵!
外から見上げるより、毎年、この桜を正面に望むのが好き。
(ゆっくり眺めたいのだが…今は使っていないその部屋を、用もないのに外から
戸にへばりつかんばかりに覗き見る私は相当怪しいので人目を忍んでこっそり愛でている)

忘れられない花見がある。

3、4、5月、一年で最も忙しい時期である。
体力のペース配分下手な私は、休日は倒れ込むように眠るだけ、翌週への力を蓄えるのみで、
花見に行く余力などない…と残業中、先輩にもらしたところ、
今日はここで切り上げて、これから花見に行こう!ということになった。
帰り道、先輩の車が停まったのは団地の前の短い桜並木。
団地のライトアップがほのかに明るい午後9時…桜、貸し切り状態…穴場?
夜空に白く、品よく映える桜を見ながら歩いていると、
前から中学生野球部男子三人組、並木道外を自転車に乗って走り去るのだが、
途中、その内の一人が

「この桜の木の下でな~キスした恋人は永遠に結ばれるねんて~」と残して…。

きっと、気を利かせた彼は先輩と私の間にあいた距離を縮めようとしてくれたのだろう。
けれど、先輩は既婚者、私とは単なる職場の先輩、後輩である。
彼らが過ぎ去った後、できたてほやほやの伝説に笑い転げた。

あれからもう3年経つが、あの夜の伝説を越える粋な桜にはそうそう出会えない。


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