The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
京商ECOサロンでのセミナー“ワタミの環境戦略”を聴講
先月末、京都商工会議所環境対策委員会主管の“京商ECOサロン2013”シリーズで“エコロジーとエコノミーの両立―ワタミの環境戦略”のセミナーに参加した。“環境”にかかわる者として、夜の宴会でお世話になっている居酒屋チェーン店がどのような環境活動をしているのか興味のあるところだ。恐らく、このセミナーに参加した人のほとんどは、同じ動機ではなかったろうか。
さて、講演者の説明によれば“ワタミの環境取り組み”は、企業活動が外食産業と介護事業、高齢者向け食品宅配事業、MD(食品工場等の運営:マーチャンダイジングの略と思われる)、農場で構成されており、その“環境活動”を、ワタミエコロジー㈱が企画・運営しており、講演者は そのワタミエコロジー㈱の環境マネジメント部の松沢裕二部長であった。
JABのホームページで確認すると、ISO14001の認証はワタミグループで登録されており、その内訳は次の通りである。ワタミ㈱ [ワタミグループの経営管理]、ワタミエコロジー㈱ [店舗、介護施設、営業所及び食材仕込センターから発生する廃棄物の管理、再生可能エネルギーの活用及び運営管理]、ワタミフードサービス㈱ [飲食店の経営]、ワタミの介護㈱[介護施設の経営、訪問介護事業及び居宅介護支援事業] 、ワタミ手づくりマーチャンダイジング㈱[食材仕込みセンターの経営、卸及び問屋から酒・飲料類を仕入れ、当社グループの直営店及びフランチャイズ加盟店への納入、農場・有限会社 ワタミファームの経営]、ワタミタクショク㈱[高齢者向け食品宅配サービス]。
環境問題の深刻化に対応して、①企業の義務としてその存在ゆえに生じる環境負荷を小さくする②エコノミーとエコロジーは両立することを実証したい③従業員が“環境”を意識し、変えていくための行動をとるようになること、を目的として取り組んでいるということである。
その歴史は、1999年に業界初のISO14001の認証取得し、ワタミ環境宣言を発して以来、活動は継続的に行われている。2002年、リサイクルセンターを設立して首都圏でのリサイクルを開始。2004年には政府補助金を得て店舗ごとの使用電力の経時変化を見える化するシステムを導入し、活動に役立てている。2010年には環境省エコファースト企業に認定されている。
使用電力の見える化するシステムは、30分から1時間毎に時間帯別使用量の現状や実態を把握し、常に何が要因になっているかを認識し、それを元に改善に資するようにしたという。スイッチ類にはアルバイト、パート従業員にも分り易いように、時間帯によって点灯するべきものと、必要時点灯するものを色分けして表示するようにした。また照明を極力LED化する。さらに、省電力のための具体的な改善10項目*を掲げ、実行状況をエリア毎の環境専任者が巡回し、チェック直後にその場で店長に報告するようにしている、とのこと。これらにより、1店舗当たり15~16万円/年、会社全体で約1億円の削減になったということであった。
*営業時間外エアコンOFF/営業時間中、エアコンはお客様適正温度/エアコンフィルター、月1回清掃/厨房給気フィルター・排気口、月1回清掃/営業時間外、作業エリア以外の消灯…等々ごく普通の10項目…しかし、徹底させることが肝要との指摘
ゴミの分別については、その手順を具体的に示したゴミ分別表を従業員に配付して、実施を徹底。特に、生ゴミは水切りが重要で、そのための器具等を配置し処理の手順化をすることで、生ゴミ重量の15%削減が可能であることが判ったという。これにより、ゴミ処理費の削減につながる。(東京15.5円/㎏、京都6.5円/㎏)
首都圏では生ゴミを回収してリサイクルしている。都内23区内エリアを中心に、隣接の多摩地域、都内東部エリア、それらに隣接する北側の埼玉エリア、南側の神奈川エリア、千葉県エリアで1~2台の回収車を配置。さらに和民系以外の排出者からも回収車を巡回させて、これを提携先の堆肥工場に持ち込み、その堆肥をワタミファームや契約農家に提供することで、有機野菜に利用しているとのこと。しかも、こうした回収の実績を各店舗に週1回フィードバックして、さらに実績を高めるようにしているとのことであった。
リユースは、オリジナル日本酒瓶について物流と飲料メーカーの協力で実施しているとのこと。この仕組も首都圏を中心に東日本(東北、北陸、甲信越、静岡)にて404店舗で実施しているという。
リヂュースは割箸の使用中止、搬入商品の通箱・コンテナ化で実施。
これらの結果として、また廃掃法の徹底遵守の結果として廃棄物の実態を見える化して、排出量、処理料金を把握して その都度分析し反省・改善することで削減を徹底してきた由であった。
ワタミ環境活動の目的の最後にあった従業員の環境意識を変えてもらうために “社員一人ひとりの生活におけるCO2排出量を2020年度までに30%削減(2008年度比)することを具体的な目標”に掲げて個人活動を“エコ夢サイト”として推奨しているという。具体的には、まず現状のCO2排出量を推計し、来年度から1年目-5%を目標に取り組みを開始する。その際、具体的な削減活動の事例を“エコ・チャレンジ項目”として50項目程度ある中から、できそうな項目を選んで削減計画を提出し、実行してもらう、というものということである。現状、従業員80~90%の実施率であり、今後はパート、アルバイト従業員にも広げて行きたいとのことであり、会社としては“企業は従業員に感じてもらうように助力するもの”との考え方を推進していくつもりとのことであった。
2012年度活動の結果は、次の通りであったとのこと。
(1)事業活動におけるCO2削減(08年比・売上高当り)-19%[目標:-15%]
(2)環境改善事業強化(リサイクル率向上)
①リサイクルループ拡大:205店舗[目標:200店舗]
②再生利用実施率:64%[目標:50%]
③日本酒瓶リユース:404店舗[2009年:379店舗]
(3)社員の生活でのCO2排出(エコ夢サイト):-14%[目標:-10%]
(4)“ワタミの森”の活動促進:間伐197本、植樹477本、環境教育参加1,626人
今後は、(4)の“森林再生活動の支援”推進と風力発電(秋田県にかほ市)への風車(風民;2000kW/機,5.4億円/機)設置を増やして行くつもり(現状3機;年間平均電力450万kWh/ワタミ年間使用量の3%)であるとのことであった。
特に森林再生は、円高による国産材の競争力の低下と人手の激減による放置森林の増加を抑制することを目的として2007年設立した“NPO・Return to Forest Life” を中心に実施。千葉県山武市の森林で、間伐と植樹、間伐材の有効利用、これらの森林再生活動体験を 従業員等のボランティア活動として実施。実際に間伐材を介護ホームの内装材として利用しているとの説明であった。こうしたボランティア活動は月に数回実施しているとのことであった。
別途、会場からのソーラー・パネルの設置予定はないのかの質問に関し、店舗はビル・テナントのため独自での設置は困難なため、食品工場への設置を検討しているとのこと。飲食メニューでの“カーボン・オフセット・カクテルのメニュー化”は目下検討中とのことであった。
聞き終わった印象としては、森林再生や風力発電以外は、特に変わった活動はなく、地道に出来ることから着実にやっているとの感じがした。環境活動とは本来こうしたものでなければならないのかも知れない。
また、環境活動は進化すれば、CSRへと変化して行くのが一般的で このワタミ・グループもCSR報告書を出している。そこで、気になるのが経営者のリーダー・シップ過剰の企業での従業員の待遇だが、そのCSR報告書では 通り一遍の報告であるのには少々落胆してしまう。従業員のワークライフ・バランスへの取り組みや、正規・非正規社員の格差についての言及という真摯さがあって欲しいと思っているが、そのような企業報告書は未だ目にしたことはない。
さて、講演者の説明によれば“ワタミの環境取り組み”は、企業活動が外食産業と介護事業、高齢者向け食品宅配事業、MD(食品工場等の運営:マーチャンダイジングの略と思われる)、農場で構成されており、その“環境活動”を、ワタミエコロジー㈱が企画・運営しており、講演者は そのワタミエコロジー㈱の環境マネジメント部の松沢裕二部長であった。
JABのホームページで確認すると、ISO14001の認証はワタミグループで登録されており、その内訳は次の通りである。ワタミ㈱ [ワタミグループの経営管理]、ワタミエコロジー㈱ [店舗、介護施設、営業所及び食材仕込センターから発生する廃棄物の管理、再生可能エネルギーの活用及び運営管理]、ワタミフードサービス㈱ [飲食店の経営]、ワタミの介護㈱[介護施設の経営、訪問介護事業及び居宅介護支援事業] 、ワタミ手づくりマーチャンダイジング㈱[食材仕込みセンターの経営、卸及び問屋から酒・飲料類を仕入れ、当社グループの直営店及びフランチャイズ加盟店への納入、農場・有限会社 ワタミファームの経営]、ワタミタクショク㈱[高齢者向け食品宅配サービス]。
環境問題の深刻化に対応して、①企業の義務としてその存在ゆえに生じる環境負荷を小さくする②エコノミーとエコロジーは両立することを実証したい③従業員が“環境”を意識し、変えていくための行動をとるようになること、を目的として取り組んでいるということである。
その歴史は、1999年に業界初のISO14001の認証取得し、ワタミ環境宣言を発して以来、活動は継続的に行われている。2002年、リサイクルセンターを設立して首都圏でのリサイクルを開始。2004年には政府補助金を得て店舗ごとの使用電力の経時変化を見える化するシステムを導入し、活動に役立てている。2010年には環境省エコファースト企業に認定されている。
使用電力の見える化するシステムは、30分から1時間毎に時間帯別使用量の現状や実態を把握し、常に何が要因になっているかを認識し、それを元に改善に資するようにしたという。スイッチ類にはアルバイト、パート従業員にも分り易いように、時間帯によって点灯するべきものと、必要時点灯するものを色分けして表示するようにした。また照明を極力LED化する。さらに、省電力のための具体的な改善10項目*を掲げ、実行状況をエリア毎の環境専任者が巡回し、チェック直後にその場で店長に報告するようにしている、とのこと。これらにより、1店舗当たり15~16万円/年、会社全体で約1億円の削減になったということであった。
*営業時間外エアコンOFF/営業時間中、エアコンはお客様適正温度/エアコンフィルター、月1回清掃/厨房給気フィルター・排気口、月1回清掃/営業時間外、作業エリア以外の消灯…等々ごく普通の10項目…しかし、徹底させることが肝要との指摘
ゴミの分別については、その手順を具体的に示したゴミ分別表を従業員に配付して、実施を徹底。特に、生ゴミは水切りが重要で、そのための器具等を配置し処理の手順化をすることで、生ゴミ重量の15%削減が可能であることが判ったという。これにより、ゴミ処理費の削減につながる。(東京15.5円/㎏、京都6.5円/㎏)
首都圏では生ゴミを回収してリサイクルしている。都内23区内エリアを中心に、隣接の多摩地域、都内東部エリア、それらに隣接する北側の埼玉エリア、南側の神奈川エリア、千葉県エリアで1~2台の回収車を配置。さらに和民系以外の排出者からも回収車を巡回させて、これを提携先の堆肥工場に持ち込み、その堆肥をワタミファームや契約農家に提供することで、有機野菜に利用しているとのこと。しかも、こうした回収の実績を各店舗に週1回フィードバックして、さらに実績を高めるようにしているとのことであった。
リユースは、オリジナル日本酒瓶について物流と飲料メーカーの協力で実施しているとのこと。この仕組も首都圏を中心に東日本(東北、北陸、甲信越、静岡)にて404店舗で実施しているという。
リヂュースは割箸の使用中止、搬入商品の通箱・コンテナ化で実施。
これらの結果として、また廃掃法の徹底遵守の結果として廃棄物の実態を見える化して、排出量、処理料金を把握して その都度分析し反省・改善することで削減を徹底してきた由であった。
ワタミ環境活動の目的の最後にあった従業員の環境意識を変えてもらうために “社員一人ひとりの生活におけるCO2排出量を2020年度までに30%削減(2008年度比)することを具体的な目標”に掲げて個人活動を“エコ夢サイト”として推奨しているという。具体的には、まず現状のCO2排出量を推計し、来年度から1年目-5%を目標に取り組みを開始する。その際、具体的な削減活動の事例を“エコ・チャレンジ項目”として50項目程度ある中から、できそうな項目を選んで削減計画を提出し、実行してもらう、というものということである。現状、従業員80~90%の実施率であり、今後はパート、アルバイト従業員にも広げて行きたいとのことであり、会社としては“企業は従業員に感じてもらうように助力するもの”との考え方を推進していくつもりとのことであった。
2012年度活動の結果は、次の通りであったとのこと。
(1)事業活動におけるCO2削減(08年比・売上高当り)-19%[目標:-15%]
(2)環境改善事業強化(リサイクル率向上)
①リサイクルループ拡大:205店舗[目標:200店舗]
②再生利用実施率:64%[目標:50%]
③日本酒瓶リユース:404店舗[2009年:379店舗]
(3)社員の生活でのCO2排出(エコ夢サイト):-14%[目標:-10%]
(4)“ワタミの森”の活動促進:間伐197本、植樹477本、環境教育参加1,626人
今後は、(4)の“森林再生活動の支援”推進と風力発電(秋田県にかほ市)への風車(風民;2000kW/機,5.4億円/機)設置を増やして行くつもり(現状3機;年間平均電力450万kWh/ワタミ年間使用量の3%)であるとのことであった。
特に森林再生は、円高による国産材の競争力の低下と人手の激減による放置森林の増加を抑制することを目的として2007年設立した“NPO・Return to Forest Life” を中心に実施。千葉県山武市の森林で、間伐と植樹、間伐材の有効利用、これらの森林再生活動体験を 従業員等のボランティア活動として実施。実際に間伐材を介護ホームの内装材として利用しているとの説明であった。こうしたボランティア活動は月に数回実施しているとのことであった。
別途、会場からのソーラー・パネルの設置予定はないのかの質問に関し、店舗はビル・テナントのため独自での設置は困難なため、食品工場への設置を検討しているとのこと。飲食メニューでの“カーボン・オフセット・カクテルのメニュー化”は目下検討中とのことであった。
聞き終わった印象としては、森林再生や風力発電以外は、特に変わった活動はなく、地道に出来ることから着実にやっているとの感じがした。環境活動とは本来こうしたものでなければならないのかも知れない。
また、環境活動は進化すれば、CSRへと変化して行くのが一般的で このワタミ・グループもCSR報告書を出している。そこで、気になるのが経営者のリーダー・シップ過剰の企業での従業員の待遇だが、そのCSR報告書では 通り一遍の報告であるのには少々落胆してしまう。従業員のワークライフ・バランスへの取り組みや、正規・非正規社員の格差についての言及という真摯さがあって欲しいと思っているが、そのような企業報告書は未だ目にしたことはない。
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