goo

インキュベーション・センターでのセミナー“強い組織づくり”に参加して

久しぶりのISOマネジメントへの投稿である。このブログの眼目への投稿頻度がこの体たらくであることに大変申し訳なく思っている。しかしながら中々適当なネタがないのが実情である。人間の組織活動の全てがISOマネジメントにつながると言えば、そう言えなくもないのだが―そういう意図もあって、一見ISOに関係のない本の読書感想も掲載して来てはいるが・・・―あまりにも間接的な関連の内容を ISOマネジメントの解説として提示するのははばかられるのだ。
さて、今回のこの記事は、実は品質ISO審査員資格保持者の集まりで発表し、さらに審査員資格維持のためにJRCA(日本規格協会マネジメントシステム審査員評価登録センター)にCPD(継続的専門能力開発)の実績として報告したものである。JRCAへの報告内容であるため、ISOマネジメントにつながるものである。申し訳ないが いわば、“1粒で3度おいしい”である。

関西のある自治体が運営している起業家のためのインキュベーション・センターでは 組織経営に有益なセミナーを多数開催している。参加したセミナーでは“強い組織づくり”のためのプロジェクト活動の成果報告というか、PRがあった。主催者は当然のことながら、現代的企業経営の考え方の起業家への普及を期待し、それにより起業の成功と、結果として街の活性化と発展を期待している。これに対し、私自身はISO審査員は合理的組織づくりについての知識・情報に精通しているべきであり、特に 小規模事業組織の運営の注意点に興味があり、何らかの情報が得られるものと思った。
今回はこのセミナーの内容について報告し、次回はこのセミナーで参加者に配布された企業経営者への企業経営上の問題点チェックのリストについての所感を紹介したい。

セミナーでは講師により、プロジェクト活動の成果事例の紹介として3社の実例を取り上げ、この3社の経営者により実情の報告とパネル・ディスカッションが行われた。(その内1社はISO認証取得企業)そこでは、適切な経営理念を確立し、その経営の意思を適切に社員に浸透させることが企業経営の要点されているが、その意思浸透にあたっては適切な組織デザインを通じて組織構成員による①共通目的(経営意思)の共有②協働意欲の醸成③内部コミュニケーションの活発化を促進し、このことにより人材を育成することが肝要であるとの説明であった。
その内容自体は、極めて当然のものであったが、セミナー受講が有料であるにもかかわらず、受講者は当初予定60名のところ180名の参加であり盛況であった。参加者は、ほとんど中小企業経営者であるところを見ると、このテーマは彼らが経営者として日頃意識している問題の核心であるためと思われた。つまり、日常的に多忙な経営者は、自身が逐一関与しなくても“自動的に経営意思が浸透し、それにより人材育成が育成され、それが企業文化及び/又は仕組化している”ことを強く望んでいると思われた。改めて企業・組織にとって、それを構成する人材育成の重要性、つまり“企業は人なり”を痛感した。
ここまで来ると思い出すのが次の歌だ。
“人は城、人は石垣、人は堀、情は味方、仇は敵なり”
この歌は武田信玄のものだと言われているが、実は そうではなく江戸時代初期の頃から文献等に登場するのが事実だという。しかし、私はこの歌は 組織経営の要点を突いていると思っている。人々が一丸となって組織を構成し、その組織を取り巻く人々からもその組織を信頼されるように活動するべきだ、という意味に取れるのである。

しかし、こうした企業活動の方針・目標の設定と、その従業員への浸透・徹底は、ISO9001マネジメント・システムの確立により容易にしかも確実に可能となるものでる。
組織内での“品質保証体系図”、“品質管理工程表”に基づいて、目標とする役割・ビジネス(基本機能)を理解し、経営者がそれを方針・目標として示し[5.1]、それに基づき組織構成員がその業務目的・内容を各自が“自覚” [6.2.2d)]し、理想的パフォーマンスを追究し、運営するというPDCAの確立[8.5.1]がベースとなる。こういう業務プロセスのチェックをプロセス・アプローチに従って実施するために、できればISO/TS16949で用いられるタートル分析を監査[8.2.2]に採用すれば、極めて効果的であると思っている。

取り分け、人材育成については、ISO9001では、業務・階層に応じて必要な力量を明確化[6.2.2a)]し、それを何らかの形で資格化し、力量評価を視覚化[6.2.2b),c)]すれば、従業員意識の活性化(インセンティブの付与)につながり、組織全体を“学習する組織”にすることが可能となると期待できる。こうして、ISO9001によって仕組み化されたものが、自ずと企業カルチャー化し、社長自身が逐一関与しなくても“人材育成が企業文化となった組織”を形成することができると思われる。

ところが、残念なことに このようなISO9001の有効性について、セミナー主催者であり、コーディネータであった社労士からはISO9001という言葉すら発せられることもなく、パネル・ディスカッションに参加していたISO認証取得企業経営者の口からも語られることはなかった。恐らく、コーディネータにはISO9001の知識・情報は無く、ISO認証取得企業の経営者にあっては、まだまだISOマネジメントが経営の骨肉化していないのではないかと思われる。認証取得時のコンサルタントの指導が適切でなかったのかも知れない。このような企業ではISO9001が 逆に思わぬ重荷になる可能性が出てくることを危惧する次第である。その結果 それがISO9001への敵意(あだ)となってしまわないか心配なのである。

改めて、ISO9001の組織経営の方法論としての重要性を 特に中堅企業以下の小規模事業経営者に知ってもらうことは、産業界にとって重要なことである。特に中堅以下の企業では“目標の設定とその浸透(内部コミュニケーション)を通じた教育・訓練”に留意するべきだと思うようになった次第である。

コメント ( 0 ) | Trackback ( )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« CO2削減か人口... “経営診断チェ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。