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曽村保信・著“地政学入門 改版―外交戦略の政治学”を読んで

円相場は30数年ぶりの安さ。口先介入ではどうしようもないし、実際に介入しても先が知れているので如何ともし難い。金利を上げるしかないが、それもできない。重大な国家的危機が続く!

アホアホ現首相の下で、アホアホ元首相を“国賊”呼ばわりして、“罰則?”・・・
これが言論の自由を守るハズの政党のすることか?
国賊を国葬か?矛盾だらけの不自由非民主党のすること?!・・・・

どうやら“国賊”呼ばわりは国際的に流行か?
北京市内の高架橋に「独裁の国賊、習近平を罷免せよ」と書かれた巨大な横断幕が掲げられた、という。

“中国共産党が16日から開く第20回党大会で、習氏(69)は前例を破って5年間、もしくはそれ以上の(国家主席着任)続投を決める見通しとなっている。これにより、習氏を正式に「核」とする共産党の全面的支配が盤石のものとなるだろう。”
だが、“米中関係”と“ゼロコロナ政策”の改善は期待薄。GDP成長率は暫時低下してきているのは経済開放の停滞によるのではないか、との解説も出て来ている。

これで最早中国の経済発展は“停滞”への道へ突き進み急ブレーキとなる可能性すらある。あまつさえ、破綻の淵に立たされる可能性すらうかがえる状態になるのではないか。
何故ならば、習近平政権が強力になって政治が優先され、経済は2の次になることが明らかだからだ。アリババの創業者は追放、ハーウェイ、テンセントの米国での活動は制限を受けている。国内一般企業の倒産も多いという。
独裁下での経済発展は限界があり、国民の平均所得1万ドルの限界があるという経済ジンクスはここでも真実となるであろうと言うのが一般的見方と言えよう。
であれば、中国経済の自転車操業も危うい。先ず、不動産が危険水域にある。それが爆発すれば、金融機関も機能しなくなる。そうなれば経済自体の崩壊に至る。
これが、習近平続投の結果であろうと思われるのだ。



さて、今週は曽村保信・著“地政学入門 改版―外交戦略の政治学”の読後感想としたい。
いよいよ“地政学”への入門である。チセイガク?私には“地勢”の学問、或いはそれに毛の生えたものと勘違いしていた時期もあった。果たして“地勢”と“地政”はどうちがうのか。

地勢:比較的広域な視点で捉えた土地の概況のことで、自然環境だけでなく、人工的な改変を含めた総合的な土地の状態をいい、地形・水系・植生・交通網・集落などの要素によって構成される。また、洪水、地震、津波などの災害の歴史も地勢に反映されている。

“地政学”という概念はあり、また学問としても成立しているようだが、“地政”という用語・概念は無く、ドイツ語ではGeopolitik、英語ではGeopoliticsなので、この日本語訳として登場した用語のようだ。(英後の日本語訳としては「地政治」と訳すのが適切であると主張もあるようだ。)
逆に、“地勢学”と呼ぶ学問は無いようだ。これが、“地勢”と“地政”の違いといったところか。

変な戯言はさておき、本当の前置きと行きたい。実は一時、佐藤優氏の博学に憧れて同氏の著書を読んでいたのだった。その内の“地政学入門 (角川新書)”を読み始めたのだが、内容が博学で詳細に過ぎてこのままでは“地政学入門”ができないのではないかとの疑念が生じて、半分程度で佐藤優氏を手放し、本書を入手して読み始めたという次第だ。本当は佐藤優氏もこの本を推奨していたのだ。“改版”して再出版というのは、確かに名著の証なのだろう。
出版社の内容説明、目次、著者紹介は次の通り。

内容説明
地政学とは地球全体を常に一つの単位と見て、その動向をリアル・タイムでつかみ、そこから現在の政策に必要な判断の材料を引き出そうとする学問である。誤解されがちだが、観念論でも宿命論でもない。本書は現代の地政学の開祖マッキンダー、ドイツ地政学を代表するハウスホーファー、そしてマハンらによるアメリカ地政学を取り上げ、その歴史と考え方を紹介する。地図と地球儀を傍らに、激動の国際関係を読み解こう。

目次
序章 地球儀を片手に
第1章 マッキンダーの発見
 1.地政学の起こりと古典
 2.英国の海上権の衰退
 3.西欧シー・パワーの起源と由来
 4.ハートランドの動向
 5.ヨーロッパ半島の運命
 7.最後の論文
第2章 ハウスホーファーの世界
 1.ハウスホーファーと日本
 2.生活圏の哲学
 3.広域の思想
 4.太平洋の地政学
 5.大東亜共栄圏との関連
 6.悲劇の結末
第3章 アメリカの地政学
 1.モンロー主義の発展過程
 2.西半球防衛の展望
 3.汎米主義と二つのアメリカ
 4.アルフレッド・マハンの遺産
終章 核宇宙時代の地政学
 1.ソ連と地政学
 2.アフリカおよび中近東の地政学
 3.危機の弧
 4.インド洋―世界の地中海
参考文献について

著者等紹介・曽村保信[ソムラヤスノブ]
1924(大正13)年、東京に生まれる。1947(昭和22)年、東京大学法学部卒業。東京外国語大学講師、東京理科大学教授、北陸大学教授を経て、東京理科大学名誉教授。国際戦略問題研究所(IISS)のメンバー。専攻、外交史。2006(平成18)年7月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

序章で著者は、次のように言っている。“この本は、書肆の要望によって『地政学入門』と題したが、本来私の気持ちからいえば、ただこれまでの地政学の主要な文献から、何か現代にも通用するものを掘り起こしてみたい衝動に駆られて、書いたものに過ぎない。したがって、同じような関心をもつ人にとっては、あるいは一種の手引になるかもしれない。が、同時に、これには多少、従来の国際政治学と称するものにたいする新たな挑戦の気持ちもあった。そのことは、本書を読んでいただければおわかりになるだろう。”
構成は目次を見て分かるように、地政学の発展に沿って“マッキンダーの発見”に始まり、“ハウスホーファー”の解説から、北米のモンロー主義の展開に移り、現代の地政学の傾向へと移っている。だが残念なことに、現代の米中対立はテーマにはなっておらず、未だソ連が健在だった時代で終わっている。

サー・ハルフォード・ジョン・マッキンダー(Sir Halford John Mackinder, 1861年~1947年)は、イギリスの地理学者、政治家である。ハートランド理論を提唱し、事実上の現代地政学の開祖である。
この“マッキンダーの発見”とは端的に言えば、マッキンダーは1900年代初頭の世界地図でユーラシア大陸とアフリカ大陸を世界島(ワールド・アイランド)と呼び、地球全体を下図のように地域分類したことである。
・中軸地帯(ハートランド) (Pivot Area)
・内側の三日月地帯 (Inner or marginal crescent)
・外側の三日月地帯 (Lands of outer or insular crescent)



そして、次の直感的結論を得た。
①東欧を支配するものはハートランドの運命を制する。
②ハートランドを支配するものは世界島(ワールド・アイランド)の運命を制する。
③そして世界島を支配するものは世界の運命を制する。

こうした思想はどうやら、中央アジアの遊牧民の移動が古代から中世の世界動向を決めたことにあるようだ。アフリカは中東からの砂漠地帯で分断されることになる。しかし、ここで中東は古代文明発祥の地であり、インド洋にかけてエジプトのシー・パワーが活躍したこともあり、世界の東西文明の結節点でもあり、今も世界動向の鍵を握っている。
地政学はそれらがベースになっている。

当然かもしれないが、ドイツ人のハウスホーファーもマッキンダーの延長上にあるという。だが、イギリス人マッキンダーとは異なり親日家であり、第一次大戦後の日本の戦略的誤りを訂正しようとして、届かなかったことを残念に思っていた、という。

そして、“第3章 アメリカの地政学”に至って、私はこの本でようやくモンロー主義・宣言の意味・意義が理解できたような気がしたのだった。北米大陸に収まっている合衆国が何故海洋国家に分類され、栄華を享受し誇っているのかが理解できなかったのだが、その謎がこの本によって氷解したきがしたのだ。この宣言によって、米国は南北アメリカ大陸の覇権を確立し、いわば南北両大陸を第二の世界島として海洋国家として世界に君臨しようと試み、それに見事に成功し今日の繁栄に至ったのだと、心から理解できたような気がしたのだった。
それだからこそ、その一角を崩そうとソ連がキューバを取込もうとしたのであり、今も中国が中南米の国々に秋波を送っているのだ。

しかしながら、この本ではアルフレッド・セイヤー・マハン(1840年~1914年アメリカ海軍の軍人・歴史家・戦略研究者)を高く評価せず、解説もほとんどなく、私の期待に沿ってくれなかったのが、大変残念である。それはロバート・シーガーの『マハン伝』を根拠とし、次のように言う。“マハンが海軍の軍人としてあまりすぐれた実際的器量の持ち主ではなかったことや、その言説が英国海軍の予算獲得のための利用された結果世界的に有名になったこと、さらにドイツやロシア等の建艦競争を誘発して、不幸な大艦巨砲主義の時代をまねいた”ことだというのだ。また、“マハンがカリブ海をヨーロッパの地中海になぞらえてパナマ運河の重要性を説いたことや、彼がセオドア・ルーズベルト大統領の海軍政策に参考意見を供したこと、それからハワイの併合を支持したことなど、すべて伝説として有名だ。・・・が、たとえ彼が現れなくても、おそらくアメリカの国家的な動きはさほど変わらなかっただろうとも考えられる”と指摘している。著者の何だか辛すぎる評だが、“シー・パワー”の概念はマハンの『海上権力史論The Influence of Sea Power upon History』に由来しており、“ランド・パワー”はその対語として生まれたことを付記したい。

ところでマッキンダーの言ったハート・ランドは事実上、ソ連であり今のロシアである。だが、ロシアは近代以前の発展途上では精神的にはドイツの影響を強く受けたという。だから、実はドイツがハート・ランドだったのかも知れない。だからこそ、両世界大戦はドイツが中心となって争われた。
第一次大戦はランド・パワーのドイツを向こうに回して、イギリスがシー・パワーを発揮し少ない損害でヨーロッパ大陸に兵力を送り、しかもフランスを橋頭保として勝利した。第二次大戦もほぼ同様となり、ランド・パワーは2連敗したのだ。こうして、欧州西方には3カ国のシー・パワーがあることになる。
今もまたドイツはEC内では事実上覇権を握り始めてはいるが、軍事力ではNATOで主導権を握っている米国にとても頭が上がらない。そして、今やそれを是としている風もあり、ギラギラした野望は失せてドイツは平和の安定を望んでいるかのようだ。

その米国の影響を強く受けたNATOを極端に恐れるロシアはこれに立ち向かい、今やウクライナを相手に代理戦争下にある。冷戦に敗れた鬱憤をはらすかのようだが、どう見ても形勢不利。米国を中心として、英国などのシー・パワーがランド・パワーを圧倒していると言ってよい状態だ。ここでも本家ランド・パワー・ロシアの2連敗必至なのだろうか。
考え直せば世界史ではランド・パワーがシー・パワーを上回った事実はなく(実は、ロシアは日露戦争で日英のシー・パワーに敗れている。両大戦では、そのシー・パワーの後押しで戦勝国となったが、単独では連敗しているのだ。)、常にシー・パワーが世界の覇権を握って来ている。ルネッサンス時代のベネチアを中心とした北イタリアから大航海時代のポルトガル、スペインとオランダそしてイギリスから米国。そして、どうやら今後もシー・パワー米国の覇権が続く気配が濃厚なのだ。

だからこそ、“海の地政学”を学ぶ必要があり、さらにこの本で省略されたマハンの本質を私なりに確認し、“お勉強”したいと思っているところなのだ。
その上、日本が海洋国家としての一員である限り、“海の地政学”の思想は必須のはずなのだ。その思想を日本人が確立できなければ近代国家としての日本の国家戦略は描けず、覇権には近付けないのではなかろうか。国家戦略のない近代国家はどこかの国家の属国でしかあるまい。恐らく、今の日本の正直な国際評価は、そんなところであろう。要するに、怖い恐れるべき国家ではないのだ。何らの影響もない、ついでのスシの国なのだ。

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