The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
零戦をめぐる機密管理の推測―NHKの番組制作をめぐって
06.03.20.
記事内容が 少し古いものになってしまって恐縮です。また零戦関係です。まるでオタッキーですね。
先々週、NHKが また零戦の欠陥をテーマにした番組“ゼロ戦・設計者が見た悲劇~マリアナ沖海戦への道~”を放送しました。零戦設計者・曽根嘉年氏の遺品メモを元に制作され8月に放送されたETV特集“零戦ニ欠陥アリ”の焼き直しで、“その時歴史は動いた”のシリーズ番組で内容は殆ど変わらず コンパクトに纏められていました。
ここで取り上げられたいくつかの“欠陥”問題の内の “32型の航続距離低下によるガダルカナル奪還失敗”という兵器開発と運用の失敗に絡んだ問題について思ったことについての感想です。
これは 当初の零戦の速度向上改良のため、出力を増強した大きなエンジン装換により、スペースの問題から燃料タンク容量が小さくなり、さらに機材生産性向上のための主翼端切落としによる空気抵抗の悪化による 航続距離低下という開発方向性と兵器運用ミスマッチ問題です。
この問題について「零戦の会(旧零戦搭乗員会)掲示板」というサイトに NHKからインタビューを受けた当時の零戦パイロット自身が “零戦ニ欠陥アリ” を見た、赤裸々な感想がありました。これを見た後に“その時歴史は動いた”を見たのですが “零戦ニ欠陥アリ”と番組内容が全く同じだったので少々暗澹たる感想でした。
零戦パイロットの感想は NHKの意図とは 正反対で、前線では32型の零戦の性能についてそれほど問題になっていなかったという証言です。曰く、“二号戦(32型零戦のこと)ぐらい良い飛行機はない。・・・航続距離が短いと言うけれど、ブイン、ムンダと前進基地ができて、ガダルカナルへ行くのにも、航続距離の心配をしたことは一度もない。・・・飛行機にはそれぞれ性能というものがあって、それを把握して使いこなすのが搭乗員の仕事。言われているのはその飛行機の特性であって欠陥ではない。当時、欠陥などと考えたこともなければ、(NHKのインタビュー)取材でも一言も言っていない。それがこういう意図でまとめられたとすれば、はなはだ心外”
どうも この証言には 真実味があるように思います。改めて 源田実氏、堀越二郎氏や坂井三郎氏の著書を 斜め読みして見ましたが、彼らの著書にも このような“欠陥”の指摘は見当たりませんでした。
当事者達には当時から“欠陥としての認識”は無かったのか、という気がしたのです。
まぁNHKには従来から思い込みで番組制作する癖があり、そのまま受け入れるには注意を払う必要があると思ってはいたのですが、やっぱりそうなのかなぁ、と。私が個人的に把握していた事実に対するNHK報道を見た時にも そのようなことは複数回経験したことがありましたので、これはNHKの体質に帰する問題だと瞬間的に思ったのです。
ですが 一方では、番組内で明らかにした事実として、32型の開発方針について当時の海軍航空本部長が進退伺いを出すほどの問題となっていたというからには 海軍首脳部では確かに重大問題とされていたことは間違いなさそうです。
この事実を 前線のパイロットや 設計者に知らされていなかったと言うのは、軍機密ということでオープンになっていなかったためではないのかと思い到ったのです。ここで“軍機”ということによる 軍人という技術官僚組織の隠蔽体質が見え隠れする思いがします。
機密事項ということ。これを どこまで明らかにし、どのレベルの関係者にまで明らかにするべきか、組織にとって非常に難しい問題ではあります。しかし、機密事項の共有化が 組織全体の意志統一のためには大切であることも 間違いないことです。特に 組織の弱点については その組織の参加者が自覚していることが重要だと思うのです。弱点の自覚こそ 強い組織の前提条件だと思うからです。
最近は 企業によっては カルチャーや体質の問題が 直ちにマネできるものではない、とばかりに ビックリするほど組織運営の方法やノウハウをオープンにしている会社もあります。或いは 特許戦略で武装し、クロス・ライセンスによって逆に弱点をカバーしていく戦略をとる企業も多いようです。
そういう意味でも 知り得たことを無闇に機密事項としてしまうことは無策に近いことだと思うのです。夜郎自大でバカバカしいことを機密にしていることもあり得るのです。自ら所有する知識・情報を客観的に評価し、十分に見極めた情報管理が 大切ではないか、と思った次第です。
記事内容が 少し古いものになってしまって恐縮です。また零戦関係です。まるでオタッキーですね。
先々週、NHKが また零戦の欠陥をテーマにした番組“ゼロ戦・設計者が見た悲劇~マリアナ沖海戦への道~”を放送しました。零戦設計者・曽根嘉年氏の遺品メモを元に制作され8月に放送されたETV特集“零戦ニ欠陥アリ”の焼き直しで、“その時歴史は動いた”のシリーズ番組で内容は殆ど変わらず コンパクトに纏められていました。
ここで取り上げられたいくつかの“欠陥”問題の内の “32型の航続距離低下によるガダルカナル奪還失敗”という兵器開発と運用の失敗に絡んだ問題について思ったことについての感想です。
これは 当初の零戦の速度向上改良のため、出力を増強した大きなエンジン装換により、スペースの問題から燃料タンク容量が小さくなり、さらに機材生産性向上のための主翼端切落としによる空気抵抗の悪化による 航続距離低下という開発方向性と兵器運用ミスマッチ問題です。
この問題について「零戦の会(旧零戦搭乗員会)掲示板」というサイトに NHKからインタビューを受けた当時の零戦パイロット自身が “零戦ニ欠陥アリ” を見た、赤裸々な感想がありました。これを見た後に“その時歴史は動いた”を見たのですが “零戦ニ欠陥アリ”と番組内容が全く同じだったので少々暗澹たる感想でした。
零戦パイロットの感想は NHKの意図とは 正反対で、前線では32型の零戦の性能についてそれほど問題になっていなかったという証言です。曰く、“二号戦(32型零戦のこと)ぐらい良い飛行機はない。・・・航続距離が短いと言うけれど、ブイン、ムンダと前進基地ができて、ガダルカナルへ行くのにも、航続距離の心配をしたことは一度もない。・・・飛行機にはそれぞれ性能というものがあって、それを把握して使いこなすのが搭乗員の仕事。言われているのはその飛行機の特性であって欠陥ではない。当時、欠陥などと考えたこともなければ、(NHKのインタビュー)取材でも一言も言っていない。それがこういう意図でまとめられたとすれば、はなはだ心外”
どうも この証言には 真実味があるように思います。改めて 源田実氏、堀越二郎氏や坂井三郎氏の著書を 斜め読みして見ましたが、彼らの著書にも このような“欠陥”の指摘は見当たりませんでした。
当事者達には当時から“欠陥としての認識”は無かったのか、という気がしたのです。
まぁNHKには従来から思い込みで番組制作する癖があり、そのまま受け入れるには注意を払う必要があると思ってはいたのですが、やっぱりそうなのかなぁ、と。私が個人的に把握していた事実に対するNHK報道を見た時にも そのようなことは複数回経験したことがありましたので、これはNHKの体質に帰する問題だと瞬間的に思ったのです。
ですが 一方では、番組内で明らかにした事実として、32型の開発方針について当時の海軍航空本部長が進退伺いを出すほどの問題となっていたというからには 海軍首脳部では確かに重大問題とされていたことは間違いなさそうです。
この事実を 前線のパイロットや 設計者に知らされていなかったと言うのは、軍機密ということでオープンになっていなかったためではないのかと思い到ったのです。ここで“軍機”ということによる 軍人という技術官僚組織の隠蔽体質が見え隠れする思いがします。
機密事項ということ。これを どこまで明らかにし、どのレベルの関係者にまで明らかにするべきか、組織にとって非常に難しい問題ではあります。しかし、機密事項の共有化が 組織全体の意志統一のためには大切であることも 間違いないことです。特に 組織の弱点については その組織の参加者が自覚していることが重要だと思うのです。弱点の自覚こそ 強い組織の前提条件だと思うからです。
最近は 企業によっては カルチャーや体質の問題が 直ちにマネできるものではない、とばかりに ビックリするほど組織運営の方法やノウハウをオープンにしている会社もあります。或いは 特許戦略で武装し、クロス・ライセンスによって逆に弱点をカバーしていく戦略をとる企業も多いようです。
そういう意味でも 知り得たことを無闇に機密事項としてしまうことは無策に近いことだと思うのです。夜郎自大でバカバカしいことを機密にしていることもあり得るのです。自ら所有する知識・情報を客観的に評価し、十分に見極めた情報管理が 大切ではないか、と思った次第です。
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