The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
PIGS,STUPIDそれとも JAB?
またまた週刊誌ネタで大変恐縮だが、ニューズウィーク・日本語版:2010.4.14.号の“世界経済16のポイント”で 財政赤字に苦しむ資本主義諸国政府を話題にしていた。
従来は PIGS(豚)と 呼ばれるポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシア、スペインの財政赤字が問題だと言われていたが、最近はSTUPID(馬鹿:スペイン、トルコ、イギリス、ポルトガル、アイルランド、ドバイ)と言われているとのこと。しかし、これらの国・政府より 問題を起こすと世界経済に もっと深刻な影響を与える財政赤字の政府があると次のように指摘している。
アメリカの財政赤字は2010会計年度(09年10月~10年9月)に過去最大の1兆5556億ドル(約141兆円)に達する見込み。日本の2010年度予算は92兆円の支出に対して税収が37兆円、国債発行額が44兆円。戦後初めて借金が税収を上回る異常事態だ。
さらに日本は毎年の財政赤字の累積額である政府債務残高(地方含む)が949兆円。GDPの197%と、アメリカやイギリスの80~90%、イタリアの120%も上回り、先進国で最悪だ。
ただ、日本の国債は家計の貯蓄を元手に国内の金融機関が買っている。だから多くの国の場合のように外国人が逃げ出して国がつぶれる心配はないが、日本の政府債務はもうすぐ日本人の純貯蓄額(貯蓄額と借金の差額)を超える勢い。もし財政破綻すれば、国民の貯蓄が失われることになる。
先に倒れる先進国はアメリカか、日本か、イギリスか。いずれ劣らぬ「ハイレベル」の戦いだ。
日本、アメリカ、イギリスと並べるとJABとなるが、残念ながら ニューズウィークではこのようなキャプションは採用してはいない。
世界中の先進国政府が 財政赤字に悩んでいると言わざるを得ない状況にあるということだ。これは一体 どういうことなのだろう。各国 それぞれの事情はあるのだろうが、一般的には有効需要喚起のための赤字財政が 結局 需要喚起・景気上昇にいたらず、盛り上がらない景気で 税収が上がらず慢性的財政赤字に陥ったというトレンドなのだ。
日本では 政官財の利権が絡んだ非効率な公共投資を繰り返したことが問題となっているが、要は 適切な公共投資先が 無いことが本質的問題なのだ。というよりも財は政官の設定する 利権に絡まないと生き残れない社会になっていたのである。つまり、一般に言われているのとは 因果関係が逆なのだ。高度に進化した経済社会では生産性が高いため少々の投資があっても それで単純に雇用等が増加する訳ではなく、既存の雇用のほとんどがそれを吸収してしまい、有効需要が乗数的に増加しないのである。
それが、中進国BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)では 多少の利権があったとしても投資さえすれば、それを上回る有効需要の喚起、景気上昇に直結するのである。中国での賄賂はよく知られた事であるが、それが日本のように経済の効率を阻害する要素とはなっていないのは、乗数効果が高い社会だからなのである。逆に 先進国では 日本のように効果的な投資先が無い状態なのである。それを、水野和夫氏は“日本経済は世界の最先端にある”と指摘していたのだと理解できるのだ。
要するに日米英の社会に 有効な投資先が無いことが問題であり、投資の限界効用が逓減している社会なのだ。ここに経済学で言う“収穫逓減の法則”が貫徹していると言って良い。全く経済基盤がないか未整備の産業分野への投資でなければ、ケインズの乗数効果は発生しないのである。
あの米国にすら経済的フロンティアは涸渇しているのだ。未だに人口が増加している社会であるにもかかわらず、フロンティアが無いのだ。米国の産業は 80年代に日本の産業が肉薄して空洞化してしまっていた。そこへ90年代の東西緊張緩和が軍需産業をも頓挫させ、金融に乗り出したのである。ここで、ITを活用した金融工学の開発で大成功を収めたのだ。英国も同様なのだが、英国では その金融すらウィンブルドン化していると言われつつも持ち直したのだった。先年は、その金融で皆コケたのである。
彼らも投資先が無いので、手近の米国内の貧しい人々の住宅投資に悪乗りしたのが 問題だったのである。それがサブプライム・ローン問題の本質なのだ。このことに気付き、注意するべきなのだ。
最近、金融関係者の肉声を聞くと、新興国投資ファンドが花盛りのようだ。寺島実郎氏の指摘の通り、残念ながら日本には有力な通信社が無いためか、マスコミは井の中の蛙状態で、世界の経済情勢を把握し辛いが、これまでのイメージで新興国を見ていると物事を見誤るようだ。“日本では新興国というと中国しか浮かびませんが、日本以上に金余りの米国では 新興国と言えばブラジルを意味します。”と言っていた。成る程、そうなのか。その結果が ブラジルのサッカー・ワールド・カップやオリンピック開催へとつながっているのだと理解できる。
世界経済は 先進国と開発途上国の経済力の格差が縮まる傾向にあるというのが 現在の経済学者の世界認識なのだ。それは 有効な投資先の有無に依存して 起きている現象なのだと了解するべきなのである。
だが、実際にはギリシャやドバイとブラジル、インド、中国では何が違う社会なのかを 良く知悉していなければ 投資に失敗するということなのだ。
さて、日本の経済的フロンティアをどこに設定するのか、それを早急に見出さなければ 日本は沈没する。今、雨後のタケノコのように新党が芽吹いているが、新規産業による発展が見込めなければ財政赤字に足許をすくわれてコケるのが見えているのだ。政治よりメシが先であり、メシが食えなければ どんな政治的目標も意味を持たないのだ。
とはいうものの 私には グリーン産業が 日本のフロンティアであるとは思えない。何故ならば それらの多くは 既存産業が 取りこぼした落ち穂拾いの 効率化のための守りの分野でしかなく、それでは大きな需要喚起は望めないからである。サービス産業も、様々な既存産業の補完機能を担うのが本質なので一時的な逃げ場にしかならないだろう。
日本に残されたフロンティアは 海洋か宇宙しかないのだ。少なくとも 日本の近海に メタン・ハイドレートという資源が見えているではないか。何故だか こういう議論が生まれないのが不思議だ。日本には それらを開発する技術基盤は存在するのだ。にもかかわらず 萎縮した精神状況の中で あえいでいるように見える。
はつらつとした資本主義は、萎縮した精神の下では育たない。まさに“立ち上がる”どころか、そのまま“立ち枯れる”だけなのだ。早急に 進取の気性で フロンティア開発に取組むべきなのだ。それこそ最後の勝負なのだ。
従来は PIGS(豚)と 呼ばれるポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシア、スペインの財政赤字が問題だと言われていたが、最近はSTUPID(馬鹿:スペイン、トルコ、イギリス、ポルトガル、アイルランド、ドバイ)と言われているとのこと。しかし、これらの国・政府より 問題を起こすと世界経済に もっと深刻な影響を与える財政赤字の政府があると次のように指摘している。
アメリカの財政赤字は2010会計年度(09年10月~10年9月)に過去最大の1兆5556億ドル(約141兆円)に達する見込み。日本の2010年度予算は92兆円の支出に対して税収が37兆円、国債発行額が44兆円。戦後初めて借金が税収を上回る異常事態だ。
さらに日本は毎年の財政赤字の累積額である政府債務残高(地方含む)が949兆円。GDPの197%と、アメリカやイギリスの80~90%、イタリアの120%も上回り、先進国で最悪だ。
ただ、日本の国債は家計の貯蓄を元手に国内の金融機関が買っている。だから多くの国の場合のように外国人が逃げ出して国がつぶれる心配はないが、日本の政府債務はもうすぐ日本人の純貯蓄額(貯蓄額と借金の差額)を超える勢い。もし財政破綻すれば、国民の貯蓄が失われることになる。
先に倒れる先進国はアメリカか、日本か、イギリスか。いずれ劣らぬ「ハイレベル」の戦いだ。
日本、アメリカ、イギリスと並べるとJABとなるが、残念ながら ニューズウィークではこのようなキャプションは採用してはいない。
世界中の先進国政府が 財政赤字に悩んでいると言わざるを得ない状況にあるということだ。これは一体 どういうことなのだろう。各国 それぞれの事情はあるのだろうが、一般的には有効需要喚起のための赤字財政が 結局 需要喚起・景気上昇にいたらず、盛り上がらない景気で 税収が上がらず慢性的財政赤字に陥ったというトレンドなのだ。
日本では 政官財の利権が絡んだ非効率な公共投資を繰り返したことが問題となっているが、要は 適切な公共投資先が 無いことが本質的問題なのだ。というよりも財は政官の設定する 利権に絡まないと生き残れない社会になっていたのである。つまり、一般に言われているのとは 因果関係が逆なのだ。高度に進化した経済社会では生産性が高いため少々の投資があっても それで単純に雇用等が増加する訳ではなく、既存の雇用のほとんどがそれを吸収してしまい、有効需要が乗数的に増加しないのである。
それが、中進国BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)では 多少の利権があったとしても投資さえすれば、それを上回る有効需要の喚起、景気上昇に直結するのである。中国での賄賂はよく知られた事であるが、それが日本のように経済の効率を阻害する要素とはなっていないのは、乗数効果が高い社会だからなのである。逆に 先進国では 日本のように効果的な投資先が無い状態なのである。それを、水野和夫氏は“日本経済は世界の最先端にある”と指摘していたのだと理解できるのだ。
要するに日米英の社会に 有効な投資先が無いことが問題であり、投資の限界効用が逓減している社会なのだ。ここに経済学で言う“収穫逓減の法則”が貫徹していると言って良い。全く経済基盤がないか未整備の産業分野への投資でなければ、ケインズの乗数効果は発生しないのである。
あの米国にすら経済的フロンティアは涸渇しているのだ。未だに人口が増加している社会であるにもかかわらず、フロンティアが無いのだ。米国の産業は 80年代に日本の産業が肉薄して空洞化してしまっていた。そこへ90年代の東西緊張緩和が軍需産業をも頓挫させ、金融に乗り出したのである。ここで、ITを活用した金融工学の開発で大成功を収めたのだ。英国も同様なのだが、英国では その金融すらウィンブルドン化していると言われつつも持ち直したのだった。先年は、その金融で皆コケたのである。
彼らも投資先が無いので、手近の米国内の貧しい人々の住宅投資に悪乗りしたのが 問題だったのである。それがサブプライム・ローン問題の本質なのだ。このことに気付き、注意するべきなのだ。
最近、金融関係者の肉声を聞くと、新興国投資ファンドが花盛りのようだ。寺島実郎氏の指摘の通り、残念ながら日本には有力な通信社が無いためか、マスコミは井の中の蛙状態で、世界の経済情勢を把握し辛いが、これまでのイメージで新興国を見ていると物事を見誤るようだ。“日本では新興国というと中国しか浮かびませんが、日本以上に金余りの米国では 新興国と言えばブラジルを意味します。”と言っていた。成る程、そうなのか。その結果が ブラジルのサッカー・ワールド・カップやオリンピック開催へとつながっているのだと理解できる。
世界経済は 先進国と開発途上国の経済力の格差が縮まる傾向にあるというのが 現在の経済学者の世界認識なのだ。それは 有効な投資先の有無に依存して 起きている現象なのだと了解するべきなのである。
だが、実際にはギリシャやドバイとブラジル、インド、中国では何が違う社会なのかを 良く知悉していなければ 投資に失敗するということなのだ。
さて、日本の経済的フロンティアをどこに設定するのか、それを早急に見出さなければ 日本は沈没する。今、雨後のタケノコのように新党が芽吹いているが、新規産業による発展が見込めなければ財政赤字に足許をすくわれてコケるのが見えているのだ。政治よりメシが先であり、メシが食えなければ どんな政治的目標も意味を持たないのだ。
とはいうものの 私には グリーン産業が 日本のフロンティアであるとは思えない。何故ならば それらの多くは 既存産業が 取りこぼした落ち穂拾いの 効率化のための守りの分野でしかなく、それでは大きな需要喚起は望めないからである。サービス産業も、様々な既存産業の補完機能を担うのが本質なので一時的な逃げ場にしかならないだろう。
日本に残されたフロンティアは 海洋か宇宙しかないのだ。少なくとも 日本の近海に メタン・ハイドレートという資源が見えているではないか。何故だか こういう議論が生まれないのが不思議だ。日本には それらを開発する技術基盤は存在するのだ。にもかかわらず 萎縮した精神状況の中で あえいでいるように見える。
はつらつとした資本主義は、萎縮した精神の下では育たない。まさに“立ち上がる”どころか、そのまま“立ち枯れる”だけなのだ。早急に 進取の気性で フロンティア開発に取組むべきなのだ。それこそ最後の勝負なのだ。
コメント ( 2 ) | Trackback ( )
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この記事、2010年の記述。リフレ派が勢いを増してからの御発言ですな。
私は、産業のフロンティアに公共投資しなければ、乗数効果は得られないと主張している。その意図を よく考えて反論してください。
安倍首相も、そういう意識で構造改革しないと日本は行き詰るし、安倍政権も立ち行かない。