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“生態リスクの評価と管理の最前線”を聴講して

05.12.7.
“「環境リスク管理のための人材養成」プログラム”で 横浜国大の松田裕之教授講演を聞きました。
当初、その副題が“愛知万博、シカ、知床、ヒグマ、漁業管理を例に”とあったので ヒグマやシカ等の生態管理(自然保護)の話であろうと高をくくって出かけました。

しかし、いずれにしても環境の話は危機感に満ちているのが 常で 極めて重い印象で始まりました。
種の絶滅・減少の速度が速い(恐竜時代1000年に1種/1975年頃1年に1000種)→本当に太古以来の大量絶滅より早い、という危機感です。こういうショックな状況を背景に 話は進展しました。

しかし、伺っている内に なるほど 1992年のリオデジャネイロ宣言を原則とし、それに沿って 役に立つ学問、役に立つ科学者を目指しておられるという 真摯な姿勢、その上に 洒脱な 話し方には 大いに 心惹かれるものがありました。
特に 環境問題特有の予防原則を 前提に しかも科学的に学問を開拓するという難題に 果敢に挑んでおられます。
つまり、“環境に対して深刻あるいは不可逆的な影響を与える恐れのある問題については、科学的証拠が不十分でも”対策を立てること、という原則に沿って、生物の個体数を推計し、“不確実性を考慮し、状態を監視しつつ状態変化に応じて捕獲率などの方策を変える「順応的管理」を取り入れ、初期の目的を達成する確率を評価しつつリスク管理”を行なうということを ある種の数学モデルを駆使して 行なっておられるようでした。

つまり、無闇に“保護”するのではなくて 人間を含めた世界が“持続可能”なのかどうか を判断基準として 生態系相互間の適正個体数を 推計し、必要とあれば 捕獲も視野に入れた環境保全を提言していくための学問と理解しました。その場合、保護/捕獲のあり方ついて どのように対処するのか、どういう状態を適正個体数と考えるかの価値観を決めるのは その地域の利害関係者全体の意見であるとの見解でした。その場合、利害関係者と 管理計画を策定する科学者の間での キャッチボールが重要であるとのことでした。

例えば 殖え過ぎるシカが 逆に 生態系を破壊しつつある(知床岬、大台ケ原)現状に対しては これまでの人間による自然な捕獲量も バランスの要因として考慮にいれつつ適正な個体数の維持を目指すべきである、というのが教授の目指しておられる方向である、と理解しました。
これまで知らなかった世界に、またまた 感銘した次第であります。

《参考にしようとしたブログ》
- http://ironpen.exblog.jp/2574343
- http://blog.goo.ne.jp/ichinisan123/e/dbcc3f807daf2410d26db1df86a019c6

それにしても このブログから見える世界は足の引っ張り合いですね。人間界はどこも こんなにバカバカしいのでしょうか。
コメント ( 1 ) | Trackback ( )
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コメント
 
 
 
TBありがとうございました! (ichinisan123)
2006-01-12 21:55:54
中西先生の「環境リスク学」に私も非常に感銘をうけて、簡単な感想文を日記につづっただけであったにもかかわらず、トラックバックしていただきまして、どうもありがとうございました。

ISO休戦さんの上記、「増えすぎる鹿」についても同様の議論がアメリカでなされていて、イヌイットなど原住民の持つ(科学的なデータの蓄積はなくとも口伝で何世代にもわたり伝わる)知恵を参考にして、一律に保護しろというのではなく適正な個体数を維持する方向にすべき、という紹介文を読んだことがあります。ただ、そこにおいても、数値にこだわり、そうした知恵を疑問視し、保護一辺倒に傾く派との対立があることも指摘されていました。

先々の世代のことを考えて日々研鑽し業績を残されている方々を心から尊敬しています。身近でできることを少しでもできるよう心がけたいです。



 
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