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“講演・C0P21を踏まえた兵庫県の地球温暖化対策について”を受講して

トランプ・安倍会談がそつなく実施され、マスコミも含めて関係者一同ほっとしている気配が濃厚である。貿易、為替の問題は話題にならなかったようだ。政権の中枢を支える人々は日本を軽視していないことは分かった。さらに良い雰囲気が伝わってくれば、月曜からの日本の株価はとりあえず上昇局面に入るのではないか。
しかし、トランプ氏と過度にウマが合うのも今後のことを考えると、良し悪しではないかと思われるがどうだろうか。トランプ氏は世界中から嫌われている。そういった人物と親分子分の盃を交わしたということになりはしないのか、非常に不安である。

さて、うかつにも21世紀文明研究セミナーのことを1月受講分はすっかり忘れていて、欠席してしまった。それを思い出して、資料を確認すると、さっそく先週該当する講演があったので、急遽参加した。
講演のタイトルは“C0P21を踏まえた兵庫県の地球温暖化対策について”で、“適応策”を中心に説明するということで、講演者は兵庫県農政環境部環境管理局温暖化対策課長・小塩浩司氏であった。要は、兵庫県の温暖化対策・政策の概要を分かり易く解説してくれると期待して出かけた。つまり、兵庫県下で環境審査する際に、県の政策を知っておくことは有益だと考えたのだった。

当然のことながら お役所の話なので、温暖化について異端の説をとることはない。つまり、現在は地球は温暖化しており、その原因の中心は人類の排出するCO2をはじめとする温室効果ガスによるものであることを前提としている。
この件に関して、トランプ政権は“地球の温暖化”そのものがインチキであると言っているようだが、私は“温暖化”は事実として是認するが、それは専ら温室効果ガスによるものとは考えないという説を取っている。それは過去30万年間に数度のCO2の増加と減少を繰り返しており、それにつれて温暖化と寒冷化を繰り返しているという科学的データ(南極ふじドームでの観測)があるからだ。この自然の循環おなかで、たまたま人類の排出する温室効果ガスが上乗せされていると見ているのだ。とはいうものの、地球の資源は有限であるので、無制限に浪費することは極めて危険な行為と考えている。この点で、トランプ政権とは大いに異なる立場をとっていることになる。

さて、講演者・小塩氏は当然のことのように温暖化の事例を様々に提示して講演を始めた。先ずはCO2濃度が400ppmを超えつつあるとのデータの提示である。それに伴い、1880年から2012年に気温は0.85℃上昇しているとのこと。兵庫県の1981~1990年と2006~2015年の平均気温分布を示して、温暖化の進展を示す。例えば、神戸市の気温は1981~1990年:15.6℃から2006~2015年:17.0℃となっている。しかも神戸市でのさくらの開花が50年間で5.6日早まっていることを示す。つまり、講演者も含めて我らの世代ではさくらは入学式のイメージだが、若い人のイメージは卒業式のイメージであると、森山直太朗の歌を例に指摘していた。

よく言われるように気候は極端化しつつ温暖化するとも言っていた。
それは社会的にも様々な影響を与えることになる。農林水産業では病害虫の増加、水稲の高温障害、用水の不足等、産業一般ではエネルギー需要の増大、災害の増加、感染症の拡大等々である。これに対処するためには、温暖化阻止というよりも、すでに起こった事象としてどのように適応していくかの方策を考える方向性が重要であるという。“どのような分野にどのような温暖化の影響が現れるかを知り、その影響に備え、リスクを減らすための「適応策」に取り組むことが必要”というもの。

ここで改めて日本の国際公約である“温室効果ガス削減目標”を示すと次のようである。
●2020年度に2005年度比3.8%以上削減(原発稼働なし)
●2030年度に2013年度比26.0%削減(原発稼働を見込む)
●2050年度に80%削減(基準年なし
計画期間は2016年5月13日から2030年度まで
毎年進捗点検、3年ごとに計画見直しを検討

兵庫県の温暖化対策(温室効果ガス削減目標)は次の計画によっている。
●3次計画として2020年度目標:2005年度比6%削減
●2017年度より2020年度再エネ導入新目標設定と実施
●適応策基本方針の設定と実施(2020年に必要に応じて見直し実施)
2020年度には2030年度目標にした計画を策定
●温室効果ガス削減目標の新たに設定
●再エネ導入目標の見直し

このための適応策の数値目標は先日の2月7日に公表したという。
ここで示された目標は次の通りである。(単位:kt-CO2)
産業部門  47,952(2013年度実績)  38,489(2030年度目標)  ▲19.7%(2013年度比)
業務部門   6,815(2013年度実績)  3,822(2030年度目標)  ▲43.9%(2013年度比)
家庭部門   8,364(2013年度実績)  4,766(2030年度目標)  ▲43.0%(2013年度比)
運輸部門   8,128(2013年度実績)  5,941(2030年度目標)  ▲26.9%(2013年度比)
その他     3,923(2013年度実績)  3,188(2030年度目標)  ▲18.7%(2013年度比)
吸収源による吸収量            ▲958  *一般的には植林や植生の回復が中心となる。
合計     75,182(2013年度実績)  55,2489(2030年度目標)  ▲26.5%(2013年度比)

国は26.0%削減であるから、0.5%だけ積極的な目標値となっている。まして、県の目標には原発の効果は算入されていないので、非常に意欲的と言えるのではないか。
産業部門の改善には火力発電の効率化に大きく期待しているようだ。何だか他力本願の印象だが、県下には重厚長大産業が集積している。主に鉄鋼産業も含めた産業界の自発的自助努力に大きく依存している。県下の大手鉄鋼メーカーと言えば神鋼だが、灘浜の高炉はやがて終息するはずで、加古川に合理化集約するのを見込んでいるようだ。だが、入れ替わって火力発電プラントが設置されるので、少々不安要素となっているようだ。制度的には県条例で、大規模事業所の規制(2003年度以降)つまり、排出抑制計画の作成・提出と措置結果の報告をさせ、結果を公表するというもの。J-クレジット制度の活用による排出取引の促進を図ることも含まれているようだ。
家庭部門43%削減は火力発電の効率化が20%と大きく寄与する。残り約20%は家庭部門の工夫に期待しているという。それから大手の緑化、森林(吸収源)整備への協力にも期待しているらしい。

業務部門は、オフィス、病院、商業施設が対象になる。あまり解説はなかった。エコ・オフィス宣言活動や環境マネジメント・システム(ISO14001やEA21,KES,KEMS)の導入くらいであろうか。

家庭部門ではエコ診断事業の推進の徹底に期待。ここで、兵庫県の家庭では診断後の削減効果が約20%で全国平均10%に対し飛び抜けているので、大いに期待しているようだ。それを促進した結果としてのソーラーパネル化で70~90%の削減期待という。これへの低利融資も推進したいとのこと。

電力の固定価格買取制度にも期待している由。買い取り価格が下がって来ているが、電力代は上昇しているので、ソーラーパネルへの移行のインセンティブは上がると期待しているというが、この発言には少々問題あり。

再生可能エネルギー導入促進も大きな政策の要素になっている。メガ・ソーラーの展開や、大規模風力発電施設の設置、木質バイオマス発電、地熱バイナリー発電、小水力発電等の推進を挙げていた。
メガ・ソーラーではため池水面の有効活用にも積極的に行っている。しかし、自然破壊を伴うので、今後条例での規制を検討中で、近くその条例を制定するという。
大規模風力では、低周波騒音の問題があるので海上に設置し、足元に漁礁を設けるなど検討したいという。
木質バイオマスでは100%間伐材や廃材を燃料にできなければ全く意味がないという。厳しい事例では、県境付近で岡山のバイオマス発電と燃料の取り合いになって、燃料の値上がりを招いているという問題も発生しているとのこと。今後は小水力との組み合わせで、村興しできないか考えている由。

いよいよ適応策だが、取組み例として次の事例を挙げていた。
日本酒の醸造米として兵庫県では山田錦があるが、これが温暖化で白化したり、胴割れで品質が低下している。この対策として実る時期に施肥を追加して防げることが分かって来ているとのこと。
日本海でサワラの漁獲が増加しているが、日本海側の漁民にはその生態や調理法が知られておらず価値を低く見ている。これを太平洋側の漁民との交流で是正したい、という。
それ以外については、これからパブコメを募集して検討したいとのことだった。

よくない発想かも知れないが、結局のところ、一般県民が差し迫って何かしなければならないことは、あまりないようだ。

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