The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
“ISOを活かす―63. サービス業にも設計・開発が存在する?”
今回は サービス業の設計・開発についてです。
【組織の問題点】
コンビニエンスストアA社の各チェーン店では、本部で作成したサービスマニュアルに基づいて業務が行われています。しかし、製造業で言われるような“設計・開発”プロセスは、コンビニエンスストアのような流通サービス産業では 当てはまるプロセスがないと考えています。したがって、A社ではISO9001認証には、“設計・開発”は 適用除外としています。これは 適切な考え方と言えるかという課題です。
【磯野及泉のコメント】
著者・岩波氏は“サービス業では、決められたルールにしたがってサービス業務を実施することが「サービスの提供」で、そのサービス業務のルールを作ることが、サービス業における「設計・開発」ということになります。”と述べ、この例のコンビニエンスストアの場合は、商品の種類、並べ方、仕入や販売のルール(サービスマニュアル等)は、チェーン店の本部で作成しており、これが設計・開発だと指摘しています。したがって、“設計・開発”の適用除外は 不適切なこととなります。
さて、ISO9001の“7.3.1 設計・開発の計画”では “組織(企業)は、製品の設計・開発の計画を策定し、管理すること。” となっています。そこで、“製品”とは何か気になります。これは、ISO9000に定義が記載されていますので、岩波氏が 前回指摘したように ISO9000を紐解いてみましょう。
長い引用になりましたが、“製品”の定義そのものは、あっけなく短く、“プロセスの結果”ということです。何だか、分かったようで分からない定義です。しかし、これは“活動の結果”と言い換え可能と思います。
参考1.に“製品”の事例が4つのカテゴリーに分類して提示しています。ここに“サービス”が 含まれています。例として“輸送”だけを挙げていますが、コンビニエンスストアの場合、“販売と販売に関連する業務”となるでしょう。
したがって、岩波氏の指摘どおり、サービスも製品として取り扱うべきで、設計・管理の対象となると考えるべきです。
最後に岩波氏は この場合“設計・管理”という言葉が ふさわしくないならば、“企画”という言葉を使うことを推奨しています。
また岩波氏このコンビニエンスストアの本部には“設計・開発”プロセスが含まれているが、販売店側には“設計・開発”は含まれていないとしています。これは販売店だけで、認証取得した場合は“設計・開発”は除外できることを示唆しています。ですが、そうなると本部には 肝心の“製品”が無いことになります。また、そうなると“設計・開発”の結果の妥当性確認はどうするべきでしょう。
このように ISO9001の規定要求事項を適用除外すると、それに関連して適用除外項目が増加し、システム全体がいびつになる恐れが生じます。適用除外の規定要求事項があれば、どうしてもその“製品”の創出プロセスがつぎはぎの管理しがたいものとなってしまうものと考えます。なので、できるだけ、ISO9001のシステムの完整性(integrity)を保った形で業務システムを解釈し、認証取得することが大切だと思うのです。認証範囲を適切に確定し、認証取得することが適切な 品質マネジメントシステム運営には必要だと 私は考えています。
個人的経験で恐縮ですが、プロセスの一部をISO9001から適用除外している運送業の一部上場の企業がありました。運送業では 店所への集荷・店所間の輸送・店所からの配達が 全体の業務システムなのですが、店所からの配達だけを認証範囲としてISO9001を認証取得していたのです。この運送会社の顧客として、そのサービス提供に問題があったため、第二社監査に赴いたのです。その原因は 集荷・運送にありましたが、ISO9001の認証範囲外ということで 監査受審を拒否されたことがあります。その後も、この運送会社は 当方の要求を満足するサービスを提供せず、トラブルが解消しなかったので、発注を停止しました。
ISO9001認証が あてにならない1例でした。
ISO9001の精神を 生かすためには完整性(integrity)を保った形で業務システムを解釈し、それに沿って認証範囲も適切に確定し、認証取得することが大切だと思います。
コメント ( 0 ) | Trackback ( )
« “知的な痴的な... | 日本における... » |
コメント |
コメントはありません。 |
コメントを投稿する |