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この1週間で感じたこと―特に米中貿易摩擦で思うこと

先週は、10日間の休み明けで、金融市場は波乱なく推移していたのでホッとしていたところ、トランプ大統領のツイッターでマーケット参加者は狼狽してしまった。最後のどんでん返しの印象。まぁ何度も言うが、私は高みの見物で過ごせている。それでも株価は日経平均2万1千円付近を底に上げると見る向きが多いようだが、それも一時的ではなかろうか。

その週末には、私用で奈良の学園前を訪れて、久しぶりに愛すべき小さな美術館の中野美術館に立ち寄って、洋画の“洋画・版画セレクション”展と日本画の“神仙と菩薩 ―富岡鉄斎、村上華岳を中心に―”を鑑賞した。但し、富岡鉄斎は、2点だけ。その内の“壽老人”(1923年)は、迫力あり鉄斎の自信がみなぎっていた。荒い筆致で簡単に描いて見せておいて、賛に“こんな絵をかいて、高く売れるかなぁ”と言う意味の台詞を書いているという。村上華岳は正反対の真面目な筆致。“観世音菩薩”(1926年)が代表作のようだ。私にはオッパイの位置が不自然に思えて仕方ないが、まぁ菩薩であって仏様、人間ではないのでそんなヤボは言わない、との突込みが入るか。
村上華岳については、何の予備知識もなかったので、階段の踊り場にあるロビーに置いてあった華岳を紹介する分厚い図書を見ていた。生まれは大阪だが、どうやら育ちも活躍の場も神戸の人。京都市立美術工芸学校出身とのこと。神戸に こういう画家が居たこと自体を知らなかったのを恥じるばかりだ。

気が付けば、11時半過ぎ。近くのイタリアン・レストランに行くのを半ば楽しみにしていたので、慌てて美術館を退去し、レストランへ。小さな坂を上り、レストランの門を入って、今度は急な坂を下って建物へ向かって行く。ところが建物が異様に騒々しい。
このレストラン実は中野美術館に来るたびに行って見ていたが、その都度お休みで、前回2月にようやく何とか食べる機会を得られたところだ。前回はドリアを食べたので、今回はピッザを食べようと意気込んでいた。
その時は、静かな森のレストランの印象でそれが良かったのだが、こうお客が大勢になると折角の雰囲気はぶち壊し。不安に駆られながら、入口に立つ。しばらくして女性がやって来て、“イッパイなんで、カウンターの狭いところになります。30分かかりますが、大丈夫ですか。”勿論イェス、で案内されるままに席についた。すると確かに店のカウンターの端の先、コーナーに簡単に高めの三角棚を作ってあり、高めの丸椅子だった。メニューは置いていない。まぁ良いかッ!で、しばらく待っていたが、ウェイトレスは近くの客に料理を持っては来るが、まるでここには客は居ないかのように無視して去って行く、の繰り返し。
気付くと10分以上放置されていた。これからさらにしばらくして、注文を聞いてから30分して料理が出て来るとなると、12時半には私用があるので、殆ど食べる時間がなくなる。そう考えると、我慢できなくなり、黙って席を蹴って、店を出て行ったが、ウェイトレスは見て見ぬフリ。客扱いの知らないレストランは困ったものだ。
静かなことが売りのレストランが騒々しくなり、客扱いが酷ければ個人的には、もうあまり行きたくない。思い返せば、前回もそんな雰囲気はあったのを少し思い出した。チョット素人ッポイ レストランだ。まぁ素人さんが、客が来てくれるなら、それで良いという体で営業しているのなら、そして現に大勢の御客が押し寄せているのなら、それはもうそれで仕方ない。何だか残念。
その後は、駅前の中華レストランでプロの客扱いに安心し満足して、午後に臨むことができた。


さて、今回は冒頭のトランプ大統領の対中貿易協議について、少々思うところを述べてみたい。私は、中国や北朝鮮は非人道的で非民主的独裁国家であり、人類史上においてこの存続を1日でも放置することは許されざることであると信じている。かつてのヒトラーの体制を悪と言うのなら、この両国の政権も同様なのだ。従い、世間やマスコミは何故か指摘しないことだが、トランプ大統領が中国や北朝鮮を手玉に取ることは、基本的に間違っていないことだと見ている。勿論、トランプ氏はアメリカ・ファーストの立場だろうが、国際社会ではそういった力を利用しつつ正義に近づくと言う議論もあって良いのではないか。また中国のキリスト教徒弾圧に、トランプ氏を支持する米国福音派の人々は反発しているとの報道もあり、思想信条の自由を損なう中国共産党政権に圧力を加えることは、その局面では間違ってはいない。そいう立場でコメントしているものと見て頂きたい。

中国の経済政策は自由競争とは言い難いものだ。例えば、電気自動車については自国内メーカーには補助金漬けにしておいて、買い手の国民には電気自動車には早めにナンバー・プレートを交付するという。これでは中国以外の外国自動車メーカーの競争力は著しく低下するのは当然だ。そういったような措置が出来る限り他の産業でも陰に陽に起きていることと見れる。こういった不正競争状態にはWTOも中国に警告を発しているという。こうした補助金の総額は55兆円以上とされる。その上、中国は技術情報を盗み取りコピー製品を足掛かりに、最先端へ伸し上がろうとしている。不正の権化だ。
従い、米国の対中警告とそれに沿った政策実行は全く間違ったことではなく、実はこれに異を唱えることが間違っている。だが不思議なことにマスコミは、恐らく特に無定見な日本のマスコミは、トランプ氏の変な政策であるかのように喧伝している。それが自由貿易に反することだと言うのだ。何だか論理が逆転しているように思う。世界中が中国の不正に対して異を唱えることが出来ない状態の中で、米国だけがこれに真っ向から立ち向かっているにも拘わらず、なのだ。中国を利することに世論を傾かせている。まるで中国のパブリック・ディプロマシーに洗脳されているかのようだ。実に、不思議な話だ。

米国の対中関税の引き上げの経過をまとめてみると次のようだ。
第1弾18年7月:半導体、電子部品、産業・一般機械/340億ドル/関税率:25%
第2弾18年8月:化学製品、電子製品、パソコン/160億ドル/関税率:25%
第3弾18年9月:通信機器、自動車部品、家事用品、家電、プラスチック製品/2千億ドル/関税率:10%
第4弾19年5月:第3弾と同じ/2千億ドル/関税率:25%
ここで、注意するべきは、第1、2弾はハイテク絡みであり、対象額もあまり大きくないが、第3弾から第4弾の対象が極めて広範囲で産業の基礎資材関連であることに注意するべきで、この変化でトランプ大統領の本気度が透けて見えると、思うべきだ。また、逆に中国の側に立って見れば彼らの産業のベーシックな部分へのボディー・ブロー打撃となるものと思える。それが、これまでは関税10%引上げで収まっていたので、何とか値下げで耐えられる部分であったと思われる。それが、この5月輸出分から、或いは6月1日以降に米国に入った物かから関税が10%→25%となるという。これでは、中国の裾野の広いベーシックな産業、恐らく中国の補助金等の保護政策から漏れているような脆弱な産業・企業の部分への強烈な打撃だろう。米国当局は全ての中国輸入品に適用することを検討しているという。こうなれば中国での企業倒産が続々と始まるのではないだろうか。これが水膨れの中国経済への大打撃になるのではないかと、私は見ている。中国経済は不良債権問題を処理完済できていないはずだ。打撃がこの部分へ及べば経済崩壊につながるのは必至ではなかろうか。
識者の大半によれば、米中交渉は長引くと見られている。半年もゴタゴタすればさすがの中国経済もガタガタになるだろう。さしずめ当面は、中国の貿易統計に注目すべきだろう。中国の経済統計は殆ど正確ではないらしい。これで計画経済が上手く行くハズがない。あるいは政権当局者が正確に経済状況を把握できる訳がないと思う。恐らく、どこかで必ず大きく政策を誤るに違いない。しかし、外国に相手のある貿易統計は正確であろうと言われている。

中国経済で不思議なのは、先ほど指摘した不良債権は膨大なものと想像される。鬼城と呼ばれる人の住まないマンションの都市がいくつもあるという。それにもかかわらず、産業力強化のために補助金を際限なくばらまいている。一帯一路政策で海外にもバラマキをしている。金で人々の面子を引っ叩いている。
こんな財政赤字政策を取っていれば、必ず強烈なインフレに陥るはずだが、中国経済の現実は正常に近い。不思議な現象だが、どこかに貨幣退蔵が起きていると見ざるを得ない。それが何処なのかが最大の疑問である。このことへの疑問をぶつける日本の経済学者は不思議にも居ない。
中国では共産党要人に貨幣退蔵させているのかも知れない。それは考えられない程の超巨額であろう。有り余り過ぎて使い道がないのが現実ではないか。その一部は確実にキャピタル・フライトさせているのは容易に想像できる。中国のことであれば、それぐらいのことはあり得るのではないか。しかし国外にフライトした要人の財産は、米国政府は確実に把握していて、事あるごとに中国政府に対するブラフ材料に使っているようだ。
例えば、クリントン元国務長官は“中国が日本に対し軍事力を行使することがあれば、中国要人の在米資産凍結を即刻実施する”と言う意味の書簡を出していたと、聞いたことがある。ついでに“米西海岸にある中国要人の2号村の住民の身柄拘束の実施”も付け加えていた、という呆れるような中国の不正話だ。しかし、これが日本にとって屁のツッパリにはなっているのかも知れない。

こうした中国経済が破綻した時、人民元はどうなるのだろう。日本円の崩壊よりは時期は早いのではないか。¥マークは日本円のものと思っていたが、人民元にも使われているのは驚きだ。日本側は何故これに異議を唱えず放置しているのだろう。いずれ、中国が逆に日本に言いがかりを付けてくるのは明らかだろう。
日本には中国経済に関するレポートは多いようだが、憶測に基づくものばかりで、正確な議論は出来ていないように見受ける。また“木を見て森を見ず”という言葉があるが、“枝葉を見て森を見ていない”議論が多すぎるのではないか。実は、正確な中国像を描けていないことも今後の大きなリスク要因になるのではないだろうか。

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