The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
“ISOを活かす―48. 内部監査は計画的に実施することによって、一層の改善が期待できる”
今回は 内部監査のオープンな計画的実施の是非についてです。
【組織の問題点】
建設業のA社は、ISO9001認証を取得して5年です。内部監査は年2回実施しています。最近は この内部監査を抜き打ちでしたところ、不適合事項が従来の2倍の件数となり、不適合検出力が増加したと管理責任者K氏は満足しているとのこと。内部監査は抜き打ちでした方が、不適合検出力が増すにもかかわらず、ISO9001では 何故“内部監査は計画的に実施すること”となっているのかK氏は理解に苦しんでいます。
品質マネジメントシステムの改善のためには、抜き打ちにする方が良いのではないか、とのテーマです。
【磯野及泉のコメント】
著者・岩波氏の懸念するように 抜打ち監査の結果、この事例のA社内に 管理責任者やISO事務局への敵意が蔓延するというのは 十分に考えられる事態です。特に、主体性のしっかりした組織にはそのような傾向が大きいのではないかと思われます。
そういう懸念の原因は、“監査の良否は不適合検出力にある”と考え、“抜打ちの監査で不適合検出力が増したと満足している” 管理責任者K氏の姿勢にあります。
それは、著者・岩波氏の指摘するように“監査の良否は不適合検出力にある”という考え方が、本末転倒であることに起因しています。このような考え方の人が管理責任者では、組織の品質マネジメントシステムが 上手く機能を発揮するとは思えず、不適切に思います。
社内に敵意があふれてしまう中で、このA社に長期的成功が得られるとは 到底思えません。A社の経営者は K氏の考え方を支持するのでしょうか。こういった ところにも経営者のコミットメントのありかたが、問われると思います。経営者は心するべきでしょう。
このあたりで、品質マネジメントの原則を思い出してみるべきです。この場合、特に8原則の1つ c)項の“人々の参画”に留意するべきで、ここでは “すべての階層の人々は組織にとって根本要素であり、その全面的な参画によって、組織の便益のためにその能力を活用することが可能となる。”と言っています。組織の人々のベクトルを合わせることで、協力的で効果的な 組織の“継続的改善”が得られると考えるのです。敵意が満ちていては何も前進しないでしょう。
ある程度 組織にISOマネジメント意識が形式的にせよ根付いた頃から、内部監査はテーマを決めて実施するべきだと私は考えています。つまりISOで要求されている事項を包括的に漫然と実施するのではなくて、弱いと思われる機能について深く計画的に実施することが 大切だろうと思っているのです。そうすることで、人々の“ISOマネジメントの考え方”への認識が深まると思うのです。
例えば 初歩的には 文書管理のルール通りの運営についてなどがテーマになるでしょうし、かなり高度なテーマとしては、設計・開発の運営が 各部署の連携でルール通り運営されているかどうかを それこそプロセス・アプローチで監査するといったことも考えられます。
また、そうしたテーマで監査することで、社内の各部署の特徴が 思わず見えてくることもあります。それが、各部署の弱点への理解と進む場合も多いように思うのです。そういう認識が 今度は 組織の改善につながっていくでしょう。この場合の改善には、経営者の理解と支持が不可欠です。経営者の高い見識と “リーダーシップ”が期待されます。
内部監査のテーマは、前回のマネジメント・レビューで指摘された 組織の弱点を明確化させるようなテーマとすることが良いと思っています。この辺は 管理責任者やISO事務局のセンスの問われるところだと思います。品質の側面に限った監査とは言え、経営上の視点につながって行くことなので 内部監査の計画的 戦略的実施は重要であると思うのです。
目先の不適合検出のために、組織を猜疑心と敵意の中に置いてしまうのは 非常に罪深い行為です。
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