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“ISOを活かす―68. 予防処置にはお金がかかるため、経営的に判断する?”



お金のかかる処置には 経営的な判断が必要ですが、予防処置は“起こりうる不適合”に対処することですので、損害が未だ生じていません。従って、実施しようとしている処置が経済的に意味があるのかどうか、経営的な判断が必要である、というのが今回の趣旨のようです。

【組織の問題点】
ISO9001認証取しているコンビニエンスストアのA店で、天井の蛍光灯の交換をしていました。よく見ると、店内の全ての蛍光灯の取替えをしており、これは、チェーン・ストア本部の指示で、毎年12月に全ての蛍光灯を交換することになっているためだ、とのことでした。
こういうやり方はISO9001マネジメントに必要なやり方なのでしょうか、という課題です。

【磯野及泉のコメント】
コンビニエンスストアの売り上げは、顧客入店数に大きく依存し、正の相関があると思われます。つまり、沢山の不特定多数の人々の来店が 売り上げを伸ばすキィ・ポイントです。
多数の人々の来店を促すには、特に 日本では清潔感あふれる“きれいさ”が求められます。つまり“整理整頓”と“明るさ”がポイントとなります。このために 店内の照明に気を使っているのだと思われます。
恐らく、A店のチェーン・ストア本部が 実施した顧客満足度のアンケート調査で、判明した結果をルール化(標準化)して 恒例行事のように“毎年12月に全ての蛍光灯を交換”しているものと思われます。
これが、ISO9001マネジメントに特有のパフォーマンスであるとは必ずしも言えませんが、ISO9001マネジメントを満足するやり方ではあります。組織が必要と考えてやっていることを 阻害する考え方はISO9001にはありません。
そして どうやら恒例化しているところを見れば 費用がかかるとしても、この店では効果があることと経営陣は考えているし、立証されてもいることのようです。

*顧客満足にはその店に来店する顧客層とその属性をよく理解しておくべきです。必ずしも “整理整頓”と“明るさ”がポイントとなるとは言えません。ドンキホーテは雑然とした商品の陳列によって“ワクワク感”や“意外性”を顧客に与えるという、逆張り発想で成功しています。何を狙うのか、その店の基本機能は何であるのかも 十分に見極めるべきです。



著者・岩波氏は次のようにISO9001を引用し、指摘しています。
“「予防処置は、起こり得る問題の影響に見合ったものであること。」と述べています。予防処置をとらなかった場合に予想される影響と、予防処置をとることによる費用の双方を考慮して実行することが必要です。また、「不適合の発生を予防するための処置の必要性の評価(を行うこと)」と述べています。予防処置にはお金がかかるため、予防処置はなんでも積極的に行った方がよいというものではありません。予防処置が、マネジメントレビューでレビューすべき項目に含まれているのは、予防処置の必要性を経営的に判断するためです。”

予防処置は 普通の組織では悩みの種のところが多いと思います。しかし、よく見ると 様々の会議などで、今後の問題を協議した時等に出した結論が 予防処置になっている場合が多いのではないでしょうか。
そのように見ると 非定常的に実施されるのが 予防処置のように見えますが、ISO9000による定義によれば、今回の事例のような 恒例の作業も予防処置であると言えなくもありません。しかし、一般的には手順化されていることは あまり立派な“予防処置”とは言いがたいのではないでしょうか。
また、私は 以前に指摘しているのですが、FMEA等で 現状で問題と考えられる“故障モード”に対策を実施して行くことも 予防処置になると思われます。

しかし、このように考えてくると 著者・岩波氏の言うように“予防処置は お金がかかる”というのは あまりにも固定観念に囚われた見方のような気がします。
事前にとる対策には“お金がかかる”ハード面での改善策が多いのはあり得る気がしますが、そのハード面での改善と言うのは 効果が有る対策であれば、際立って組織すなわち企業の力を高めるものだと考えます。ですから、設備投資の際の 投資効果を厳密に見究めるようにしているのであれば、積極的に実施するべきでしょう。
中には 現場の修繕程度の改善で 安全や生産性の向上が期待できる“処置”もしばしば認められることがあります。このような“お金がかからない”現場での改善が活発になるには 現場の人々の意識が元気で活性化していなければなりません。

ですから 予防処置の件数は 企業活動現場の活性度の指標の一つと見て良いように思います。ですが、残念ながら このようなタイプの予防処置件数の多い組織は あまり多くないのが実情ではないでしょうか。

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