The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
香田洋二・著“北朝鮮がアメリカと戦争する日”を読んで
いよいよ確定申告の月になった。毎年、関連書類がそろっているかに悩まされる。面倒なことこの上ない。良く考えると、私の金の出入りは結構 当局に捕捉されているので取られすぎているのを取り返す作業でしかない。しかし、ここで取り返しても、国民健康保険で取られる。でも、それは国民健康保険財務の健全性のために資する活動なのだ。何だか、自分自身のためでもないことに何故こうも躍起にならなければならないのか疑問だ。
先週は女子レスリングの選手がパワー・ハラスメントを受けていたとする週刊誌情報が世間を騒がせた。それも国民栄誉賞受賞者に、だという。この国は国民栄誉賞受賞者の生き方すら政府は面倒を見ていないのか。いわば国の宝ではないのか。その人が自分の思い通りの生き方を選べない状態に陥っているのを知らずに放置しているのだ。それは賞そのものへの信頼性が疑われるような気がするが、そんなものなのか。時の権力者の人気取りの単なるツールだから仕方ないのか。
柔道界や相撲界に引き続くレスリング界でのトラブルだ。背景には限られた分野での小ボスの変な権威主義的意識が、ひたすら成長したいとする純粋な才能を抑え込もうとする働きがあるように思える。被害者が国民栄誉賞をもらったある種の権威を持った人物だったから、事は明るみになったといえるのかも知れない。こんな環境で、日本の若い未だ力のないアスリートがどんどん育っていくとは、とても思えない。育つ過程でどんどん潰されて行っているのが現実と見て良いのではないか。その結果として国際的にみても、日本のメダル獲得数は少ないのではないか。
これはひょっとして、スポーツに限ったことではないのかも知れない。日本人の“美徳”とされる“和を以って貴しとなす”そして“忖度する”ことは、こうした小ボスを周囲が守り、盛り立てるために存在する言葉のような気がする。現に、告発された監督は、その言葉を口にした。“忖度”は一時国会でも話題になったようだが、突っ込んで議論されることはなかったようだ。その“忖度”は場合によっては小ボスをどうしようもない大ボスの首相にさえしてしまう危険性が高いのだ。そして“おもてなし”も“忖度”の延長上に在る。
こうした“日本人の美徳”が、日本の社会の発展の桎梏となっているのではないか。最近特に日本社会が世界的な技術革新の中で停滞し、相対的に後退して行っているような気がしてならない。現に東京市場の株価はいかに企業パフォーマンスが良いとの評価があっても、ニューヨークのそれを常に下回っている。それは、その“美徳”が真の深い所での主因であるように思えるのだ。権力者にとって都合の良い“美徳”は大いなる“悪徳”ではないか。
さて、ピョンチャン五輪は何とか無事終了した。これからはパラリンピック開催となる。3月9日から18日までのようだ。この間、韓国の文在寅大政権は、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長による招待を受け、同国に特使を派遣する予定であるということだ。果たしてどのような会談となるのであろうか。
一方、トランプ大統領は、北朝鮮の船が禁輸品を洋上の船舶間で移し替える行為を厳しく取り締まることや、北との関係が強い企業・組織への圧力等、制裁強化に乗り出すことを発表し、“(制裁が効かなければ)第2段階に進まなければならない。非常に手荒なことになるかも知れない。”と述べたという。このことから、韓国の北への特使派遣によって、“北の非核化”への成果がなければ、米軍による攻撃もあり得ると推測されている。何故ならば、2月下旬に米軍はハワイで3日間北攻撃作戦のシミュレーションを行ったという話もあるからだという。やはり依然として強いきな臭さが漂う。
と言う次第で、香田洋二・著“北朝鮮がアメリカと戦争する日”を読んだ。しかし、この本の表題は主語が逆転している印象だ。実はこの本1月の末に読んで、いささか時間が経過している。細部については直ちに思い出せるか自信はないが、本が手許にあるので何とかしたい。
米軍がどのように攻撃するのかの大筋では私が想定したものと殆ど変りなかった。但し、違っていたのは次の2点だった。
一つは戦端を開くのは巡航ミサイルの先制攻撃で、その数は1500発だろうという点だ。私は北の推計されている軍事拠点の数から、おおよそ千発だろうと想定した点だ。それより5百発多かったのだ。私は千発であれば、3空母打撃群が揃う必要があると推計したが、これに5百発上乗せとなれば、それに見合う艦艇の動員が必要となる。数の点で空からの攻撃には多数の航空機が必要なので、頼りは海上艦艇となる。1隻で90発程度発射可能なトマホーク原潜を5~6隻に相当する。潜水艦ならば隠密性が高いのでありえるだろうが、・・・。それに5百発多いのは、軍事境界線に沿った地下施設の破壊に余分に必要なのかもしれない。いずれにせよ、素人の私の推計に近いのには驚いた。
もう一つの想定外は、北の潜水艦攻撃だ。私は、北の潜水艦は玩具のようなものと考えていたので、想定しなかったが、現実に北は潜水艦からのミサイル発射の映像を発表している。従って、この点も確かに実際には対応が必要だ。しかし、著者の香田氏はその可能性を簡単に示していたが、対応については具体的には述べていなかった。何故か。私の想像では、海上自衛隊は北の潜水艦が日本に近づいても、領海外であれば手出し出来ないからだ。北の潜水艦が実際にミサイルを発射して、そのミサイルが日本の領域に達して初めてこれを攻撃できることになる。これでは、完全に手遅れで、日本側に何らかの被害は確実だ。なので、北の潜水艦への事前攻撃は米軍にお任せしなければならない。海自はせいぜいで、北の潜水艦の動向を細かく捕捉して、米軍に通知して攻撃を依頼するくらいだからだろう。こうした点での法整備の不十分が、現役自衛官等の不満のあるところなのだろう。日本政府は分かっているのに何故やらない?
著者の香田氏は元海上自衛隊艦隊司令官という経歴で、ハーバード大学アジアセンター上席研究員とある。昔ならば元連合艦隊司令長官、といったところだろうか。こういう人の発言ならば相当信頼性は高い。
そう言えば、北は昨年の9月まで毎月ミサイル発射実験を実施したが、11月以降は手控えているように見え、しかもピョンチャン五輪にも参加し、あたかも雪解けを演出しているかのように見える。
この点を、この本の初めで香田氏は、北は“アメリカの「虎の尾」を踏んでしまった”のだと解説している。つまり、“アメリカが自分たちを怖がっているという、「神話」を信じていた北朝鮮は、グアムを標的にすれば相手がますます震え上がると考えて”いたが、結果は逆で、トランプ大統領の“炎と怒り”から“徹底的な破壊”、“嵐の前の静けさ”から“残された選択肢は一つ”のと口撃へと強硬に変化させてしまった。そして、“(ミサイル)発射実験を行わなければアメリカと対等な交渉のテーブルにはつけず、発射実験を行えばアメリカを刺激し、下手をすれば武力攻撃を受けてしまう。そういう二律背反の現実によって北朝鮮は身動きがとれなくなった”のが現状と分析している。
実際に、北はピョンチャン五輪でも会談を希望しながら、直前でキャンセルしている。実に手詰まり状態に陥っているのだ。その一方で米軍は部隊や兵器の配備の布石を着々と打っているのが現状だ。
海上自衛隊は黄海に複数の護衛艦を派遣して、北の制裁逃れを監視しているという。それほど日本が“瀬どり”監視に注力するのは不自然な印象だ。これに対する中国の反発は、驚くことに全く聞かない。私の憶測では、何らかの米中合意があって、護衛艦派遣はそれに基づいているのではないか。そして、それは米朝間の戦闘が始まる直前に、在韓米人や邦人救出支援のために目立たずに控えているのではないかと、私は憶測している。
香田氏は北の日本攻撃はあまり懸念する必要はない、という論調だ。元自衛隊幹部という立場からの発言なので多少割り引いて理解する必要があると思うが紹介したい。
北が日本を核攻撃すれば、その直後米軍の反撃によって、北は無くなってしまうのでそのような愚かなことはしないとの予測が初めに語られている。注目するべきは、その後の次の記述だ。“仮に北朝鮮が日本攻撃用の100発のノドンミサイルを用意していたとしても、それを1度にまとめて発射するのは不可能です。・・・「ミリタリーバランス」によれば、北朝鮮にはノドンの発射基が10基しかありません。稼働率も考慮すれば、1度に撃つことが可能なのはせいぜいで8発までです。” 8発程度ならば日米のイージス艦が合計20隻いれば、何とか邀撃できるような気がする。その後は米空軍が発射基地を叩くと思える。
否、北は先述の論理で基本的に最初に手出しできない。考えられる先制は米軍側からで、その後叩きもらした基地からの北の反撃に懸念するべきだが、一桁程度の発射基地であればほとんど先制攻撃で破壊されていると思われる。問題は移動発射台だが、この点の香田氏の指摘はない。それでも大半は地下壕の出入り口を先制で塞がれてしまうと考えてよいだろう。(北の施設のほとんどは日頃の人工衛星や無人偵察機によって細かく把握されていることを前提としている。)
ただ、政治的理由で日本側の政治家に優柔さがあれば、“北朝鮮にとって、首都東京、特に官邸を中心とする日本の意思決定中枢へのギリギリの攻撃ができれば、それは大きなメリットになる可能性”がある、と言っていて、東京への攻撃の可能性の高さは否定していない。
米軍の攻撃の態様は次の様だと述べている。“第一次攻撃は、最初の5~6時間で、北朝鮮東西両岸に配備した艦艇・潜水艦からの巡航ミサイル・トマホークと、グアムから出撃するB1やB52爆撃機の発射する航空機発射型の巡航ミサイルなどを使う”。(レーダー・サイトや飛行場、固定ミサイル発射基地、地下基地の出入り口等の破壊)“そこで破壊できなかった残存兵力や施設に対し、第二次攻撃として空軍のF16と海軍のFA18などの有人戦闘攻撃機を投入し、巡航ミサイルの「撃ち漏らし目標」をできるだけ潰す。”私も従来このように思っていた。
また北と韓国の軍事力比較は、クリントン大統領が北への攻撃を決断できなかった1994年とは大きく変化し、通常兵器では韓国軍有利となっているという。北はその点において近代化が出来ていないという事実に言及している。つまり通常レベルの地上戦には問題ないと言っている。
この後、香田氏は米国の国益に言及し、北の核開発がすでに“レッド・ライン”を越えていて、一年以内の軍事力行使があると言っている。つまり、直接的表現を避けつつ、核軍事力の独占を通じて世界を牛耳るという米国の国益は断固として死守するだろうと指摘している。核拡散の端緒となる北の核保有は断固拒否するはずだという。
私はその際、大統領の意志というよりも軍の首脳の意志が強く徹底される、むしろ米軍の動向については大統領は不可触ではないかと見ている。それが証拠に、トランプ大統領就任直後、軍の首脳に“不正な命令は拒否する”と明言する事例が多発したからだ。ここに私は“米軍の意志”を見たのだ。これが大戦後、どこかに必ず敵を作って戦ってきた米軍の本質ではないかと思うのだ。
こんなことはこの本に書いてはいないが、日本政府が警戒するべきは、北への攻撃と北の脅威の除去によって、米軍が多額の戦費を要求するに違いない、と言うことだ。それが不当に高かろうが、日本はそれに気弱に唯々諾々と応じるのだろうか。安倍首相ならば大いにあり得ることではないだろうか。北の悪あがきによる被害があったとしても、強硬で高い請求書が突きつけられるのは確実ではないか。
先週は女子レスリングの選手がパワー・ハラスメントを受けていたとする週刊誌情報が世間を騒がせた。それも国民栄誉賞受賞者に、だという。この国は国民栄誉賞受賞者の生き方すら政府は面倒を見ていないのか。いわば国の宝ではないのか。その人が自分の思い通りの生き方を選べない状態に陥っているのを知らずに放置しているのだ。それは賞そのものへの信頼性が疑われるような気がするが、そんなものなのか。時の権力者の人気取りの単なるツールだから仕方ないのか。
柔道界や相撲界に引き続くレスリング界でのトラブルだ。背景には限られた分野での小ボスの変な権威主義的意識が、ひたすら成長したいとする純粋な才能を抑え込もうとする働きがあるように思える。被害者が国民栄誉賞をもらったある種の権威を持った人物だったから、事は明るみになったといえるのかも知れない。こんな環境で、日本の若い未だ力のないアスリートがどんどん育っていくとは、とても思えない。育つ過程でどんどん潰されて行っているのが現実と見て良いのではないか。その結果として国際的にみても、日本のメダル獲得数は少ないのではないか。
これはひょっとして、スポーツに限ったことではないのかも知れない。日本人の“美徳”とされる“和を以って貴しとなす”そして“忖度する”ことは、こうした小ボスを周囲が守り、盛り立てるために存在する言葉のような気がする。現に、告発された監督は、その言葉を口にした。“忖度”は一時国会でも話題になったようだが、突っ込んで議論されることはなかったようだ。その“忖度”は場合によっては小ボスをどうしようもない大ボスの首相にさえしてしまう危険性が高いのだ。そして“おもてなし”も“忖度”の延長上に在る。
こうした“日本人の美徳”が、日本の社会の発展の桎梏となっているのではないか。最近特に日本社会が世界的な技術革新の中で停滞し、相対的に後退して行っているような気がしてならない。現に東京市場の株価はいかに企業パフォーマンスが良いとの評価があっても、ニューヨークのそれを常に下回っている。それは、その“美徳”が真の深い所での主因であるように思えるのだ。権力者にとって都合の良い“美徳”は大いなる“悪徳”ではないか。
さて、ピョンチャン五輪は何とか無事終了した。これからはパラリンピック開催となる。3月9日から18日までのようだ。この間、韓国の文在寅大政権は、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長による招待を受け、同国に特使を派遣する予定であるということだ。果たしてどのような会談となるのであろうか。
一方、トランプ大統領は、北朝鮮の船が禁輸品を洋上の船舶間で移し替える行為を厳しく取り締まることや、北との関係が強い企業・組織への圧力等、制裁強化に乗り出すことを発表し、“(制裁が効かなければ)第2段階に進まなければならない。非常に手荒なことになるかも知れない。”と述べたという。このことから、韓国の北への特使派遣によって、“北の非核化”への成果がなければ、米軍による攻撃もあり得ると推測されている。何故ならば、2月下旬に米軍はハワイで3日間北攻撃作戦のシミュレーションを行ったという話もあるからだという。やはり依然として強いきな臭さが漂う。
と言う次第で、香田洋二・著“北朝鮮がアメリカと戦争する日”を読んだ。しかし、この本の表題は主語が逆転している印象だ。実はこの本1月の末に読んで、いささか時間が経過している。細部については直ちに思い出せるか自信はないが、本が手許にあるので何とかしたい。
米軍がどのように攻撃するのかの大筋では私が想定したものと殆ど変りなかった。但し、違っていたのは次の2点だった。
一つは戦端を開くのは巡航ミサイルの先制攻撃で、その数は1500発だろうという点だ。私は北の推計されている軍事拠点の数から、おおよそ千発だろうと想定した点だ。それより5百発多かったのだ。私は千発であれば、3空母打撃群が揃う必要があると推計したが、これに5百発上乗せとなれば、それに見合う艦艇の動員が必要となる。数の点で空からの攻撃には多数の航空機が必要なので、頼りは海上艦艇となる。1隻で90発程度発射可能なトマホーク原潜を5~6隻に相当する。潜水艦ならば隠密性が高いのでありえるだろうが、・・・。それに5百発多いのは、軍事境界線に沿った地下施設の破壊に余分に必要なのかもしれない。いずれにせよ、素人の私の推計に近いのには驚いた。
もう一つの想定外は、北の潜水艦攻撃だ。私は、北の潜水艦は玩具のようなものと考えていたので、想定しなかったが、現実に北は潜水艦からのミサイル発射の映像を発表している。従って、この点も確かに実際には対応が必要だ。しかし、著者の香田氏はその可能性を簡単に示していたが、対応については具体的には述べていなかった。何故か。私の想像では、海上自衛隊は北の潜水艦が日本に近づいても、領海外であれば手出し出来ないからだ。北の潜水艦が実際にミサイルを発射して、そのミサイルが日本の領域に達して初めてこれを攻撃できることになる。これでは、完全に手遅れで、日本側に何らかの被害は確実だ。なので、北の潜水艦への事前攻撃は米軍にお任せしなければならない。海自はせいぜいで、北の潜水艦の動向を細かく捕捉して、米軍に通知して攻撃を依頼するくらいだからだろう。こうした点での法整備の不十分が、現役自衛官等の不満のあるところなのだろう。日本政府は分かっているのに何故やらない?
著者の香田氏は元海上自衛隊艦隊司令官という経歴で、ハーバード大学アジアセンター上席研究員とある。昔ならば元連合艦隊司令長官、といったところだろうか。こういう人の発言ならば相当信頼性は高い。
そう言えば、北は昨年の9月まで毎月ミサイル発射実験を実施したが、11月以降は手控えているように見え、しかもピョンチャン五輪にも参加し、あたかも雪解けを演出しているかのように見える。
この点を、この本の初めで香田氏は、北は“アメリカの「虎の尾」を踏んでしまった”のだと解説している。つまり、“アメリカが自分たちを怖がっているという、「神話」を信じていた北朝鮮は、グアムを標的にすれば相手がますます震え上がると考えて”いたが、結果は逆で、トランプ大統領の“炎と怒り”から“徹底的な破壊”、“嵐の前の静けさ”から“残された選択肢は一つ”のと口撃へと強硬に変化させてしまった。そして、“(ミサイル)発射実験を行わなければアメリカと対等な交渉のテーブルにはつけず、発射実験を行えばアメリカを刺激し、下手をすれば武力攻撃を受けてしまう。そういう二律背反の現実によって北朝鮮は身動きがとれなくなった”のが現状と分析している。
実際に、北はピョンチャン五輪でも会談を希望しながら、直前でキャンセルしている。実に手詰まり状態に陥っているのだ。その一方で米軍は部隊や兵器の配備の布石を着々と打っているのが現状だ。
海上自衛隊は黄海に複数の護衛艦を派遣して、北の制裁逃れを監視しているという。それほど日本が“瀬どり”監視に注力するのは不自然な印象だ。これに対する中国の反発は、驚くことに全く聞かない。私の憶測では、何らかの米中合意があって、護衛艦派遣はそれに基づいているのではないか。そして、それは米朝間の戦闘が始まる直前に、在韓米人や邦人救出支援のために目立たずに控えているのではないかと、私は憶測している。
香田氏は北の日本攻撃はあまり懸念する必要はない、という論調だ。元自衛隊幹部という立場からの発言なので多少割り引いて理解する必要があると思うが紹介したい。
北が日本を核攻撃すれば、その直後米軍の反撃によって、北は無くなってしまうのでそのような愚かなことはしないとの予測が初めに語られている。注目するべきは、その後の次の記述だ。“仮に北朝鮮が日本攻撃用の100発のノドンミサイルを用意していたとしても、それを1度にまとめて発射するのは不可能です。・・・「ミリタリーバランス」によれば、北朝鮮にはノドンの発射基が10基しかありません。稼働率も考慮すれば、1度に撃つことが可能なのはせいぜいで8発までです。” 8発程度ならば日米のイージス艦が合計20隻いれば、何とか邀撃できるような気がする。その後は米空軍が発射基地を叩くと思える。
否、北は先述の論理で基本的に最初に手出しできない。考えられる先制は米軍側からで、その後叩きもらした基地からの北の反撃に懸念するべきだが、一桁程度の発射基地であればほとんど先制攻撃で破壊されていると思われる。問題は移動発射台だが、この点の香田氏の指摘はない。それでも大半は地下壕の出入り口を先制で塞がれてしまうと考えてよいだろう。(北の施設のほとんどは日頃の人工衛星や無人偵察機によって細かく把握されていることを前提としている。)
ただ、政治的理由で日本側の政治家に優柔さがあれば、“北朝鮮にとって、首都東京、特に官邸を中心とする日本の意思決定中枢へのギリギリの攻撃ができれば、それは大きなメリットになる可能性”がある、と言っていて、東京への攻撃の可能性の高さは否定していない。
米軍の攻撃の態様は次の様だと述べている。“第一次攻撃は、最初の5~6時間で、北朝鮮東西両岸に配備した艦艇・潜水艦からの巡航ミサイル・トマホークと、グアムから出撃するB1やB52爆撃機の発射する航空機発射型の巡航ミサイルなどを使う”。(レーダー・サイトや飛行場、固定ミサイル発射基地、地下基地の出入り口等の破壊)“そこで破壊できなかった残存兵力や施設に対し、第二次攻撃として空軍のF16と海軍のFA18などの有人戦闘攻撃機を投入し、巡航ミサイルの「撃ち漏らし目標」をできるだけ潰す。”私も従来このように思っていた。
また北と韓国の軍事力比較は、クリントン大統領が北への攻撃を決断できなかった1994年とは大きく変化し、通常兵器では韓国軍有利となっているという。北はその点において近代化が出来ていないという事実に言及している。つまり通常レベルの地上戦には問題ないと言っている。
この後、香田氏は米国の国益に言及し、北の核開発がすでに“レッド・ライン”を越えていて、一年以内の軍事力行使があると言っている。つまり、直接的表現を避けつつ、核軍事力の独占を通じて世界を牛耳るという米国の国益は断固として死守するだろうと指摘している。核拡散の端緒となる北の核保有は断固拒否するはずだという。
私はその際、大統領の意志というよりも軍の首脳の意志が強く徹底される、むしろ米軍の動向については大統領は不可触ではないかと見ている。それが証拠に、トランプ大統領就任直後、軍の首脳に“不正な命令は拒否する”と明言する事例が多発したからだ。ここに私は“米軍の意志”を見たのだ。これが大戦後、どこかに必ず敵を作って戦ってきた米軍の本質ではないかと思うのだ。
こんなことはこの本に書いてはいないが、日本政府が警戒するべきは、北への攻撃と北の脅威の除去によって、米軍が多額の戦費を要求するに違いない、と言うことだ。それが不当に高かろうが、日本はそれに気弱に唯々諾々と応じるのだろうか。安倍首相ならば大いにあり得ることではないだろうか。北の悪あがきによる被害があったとしても、強硬で高い請求書が突きつけられるのは確実ではないか。
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