徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

続・インフルエンザ(A香港型)が猛威を奮うアメリカ

2018年01月31日 08時13分45秒 | 小児科診療
 1月最終日も、インフルエンザ関連の話題が続きます。
 メディアでもワクチンの「集団免疫効果」が徐々に扱われるようになりました。
 ちょっと進歩。
 
 現在アメリカで流行しているH3N2型(A香港型)は変異するスピードが速く、ワクチンがなかなか追いつけない・・・人類がインフルエンザウイルスに負けている状況が続いています。

■ インフルエンザが猛威を奮うアメリカ。その裏には日本も例外ではないワクチン事情が
2018.01.30:GIZMODO
 アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は先週おこなったプレスカンファレンスで、「今年のインフルエンザは猛威を奮っており、終息に向かう様子は今のところ全くない」と発表。しかも、2009年の豚インフルエンザが世界的に流行したとき以来となる、過去10年で最大のインフルエンザ流行となるかもしれないとのこと。
 昨年12月末、アメリカ疾病管理予防センターは「ハワイ州以外のすべての州においてインフルエンザが広がり続けている」という発表をしました。それ以来、インフルエンザっぽい症状を持つ来院者数が毎週膨れ上がり、入院率も急激に高まったとのことです。この調子だと、近年で最も多かった2014年〜2015年の入院者数(71万人)と死亡者数(5万6千人)を超えてしまう可能性もあるそう。 
 「おおよそこれに近い数字が出るのではないかと予想しています。」とNew York Timesに話したのはアメリカ疾病管理予防センターのDaniel B. Jernigan医師。
 インフルエンザが辛いことは広く知られていますが、1950年代から流行し始めたH3N2型は特にひどいタイプだといわれています。早いサイクルで変異するため、ワクチンを作ってもみなさんが打つ頃には効きにくくなっているが多いそうです。一般的に、H3N2型のワクチンは予防効果が約30%となっていて、昨年オーストラリアで使用された卵培養によるワクチンにいたってはほんの10%だったという懸念も。「アメリカ版のワクチンは別の製造方法が採用されているため、効果は普通通りのはずだ」とアメリカ疾病管理予防センターは話しています。

編集部:アメリカが新規に採用した製造方法は「細胞培養」という、ワクチンの製造過程で必要なウイルスの培養に動物や昆虫の細胞をもちいるもののようです。これまでの鶏卵を使用する方法と比べて、ウイルスの遺伝子変異が少ないことが利点の模様(変異が大きすぎると人の免疫が反応しにくくなる)。アメリカでは2社の細胞培養ワクチンが承認を受けていますが(18歳以上向け)、日本はまだ開発中のようです。

 それでも、今のワクチンも一定の効果(予防or発症した場合は症状の軽減)は期待できるので、なるべく打ってもらいましょう! ひとりひとりが打つことで、ウイルスが広がりづらくなる「集団免疫」という効果もありますよ。
 アメリカ疾病管理予防センターは今季のインフルエンザで亡くなった子供の数も発表しました。先週は30名、今週は37名と増加しています。最終的な、大人も子供も含めた死亡者数がどこまで上るのかは、インフルエンザの季節が終わる頃にならないとわかりません。
 日本でもインフルエンザが猛威を奮っていますが、今からでもワクチンを打つのは遅くありません。高熱で辛い思いをするくらいなら、ワクチン打った方がよっぽどマシですよね。手洗い・うがいなどの予防もしっかり!


 鶏卵を用いた現在のワクチン製造方法より、新しく開発された細胞培養法の方が、ウイルス変異という問題に強い、とされています。
 しかし、鶏卵培養法でも「ウイルス変異なんのその」というスーパーワクチンが過去にありました。
 それは「全粒子ワクチン」です。
 ウイルスそのものをすりつぶして造るワクチン。
 一方、現在のものはHAワクチンとかコンポーネントワクチンを呼ばれる、ウイルスのほんの一部を取り出して造ったワクチン。
 なぜ効果の高いワクチンを捨てたのかというと、副反応(局所の腫れや発熱など)が強かったからです。
 日本は平和なので、効果より安全性を選択した歴史があり、今は「水のような効果の薄いワクチン」をせっせと接種していることを自覚すべきですね。
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