毎年9月になるとインフルエンザワクチンの予約が始まります。
当院も9月中旬に開始し、結構埋まってきました。
さて、インフルエンザワクチンは“発症予防”の有効率が低いことで有名です。
健康成人では流行株と型が合えば50~70%有効、小児ではそれより劣り、幼児期では20~30%、乳児に関しては有意差がない、とされてきました。
■ 乳幼児(6歳未満)に対するインフルエンザワクチン接種について
-日本小児科学会見解-(2004年)
1) 1歳未満児については対象数が少なく、有効性を示す確証は認められなかった。
2) 1歳以上6歳未満児については、発熱を指標とした有効率は20-30%となり、接種の意義は認められた。
私は開き直って、
「効くんですか?」
という質問に、
「罹らないためではなく、重くならないためのワクチンと考えてください」
と説明しています。
実感としても報告論文から見ても、インフルエンザワクチンの学校集団接種がなくなってから「インフルエンザ性脳症」「老健施設での高齢者死亡増加」が社会問題化し、その後接種率が改善したらそのことが話題になる回数が減りました。
“発症予防”としての有効率が低い一因として、小児では接種量が少ないことが以前から指摘されてきました。
それが2011年にようやく世界と同じレベルに増量され、有効率改善が期待されました。そのタイミングで取られた日本のデータ記事を紹介します。接種量増量により幼児に対する有効率が20-30%から40-50%へ改善したという報告です(一部を抜粋。下線は私が引きました):
■ 2012/13年シーズン、保育園児のインフルエンザワクチン有効率が向上
(2013/10/31:日経メディカル)
2012/13年シーズンにおける保育園児のインフルエンザ罹患率は17.1%で例年より低く、ワクチン(2回接種)の有効率はA型38.5%、B型48.2%と例年より高かったことが示された。川崎市医師会保育園医部会が同市の保育園児約1万2000人の保護者を対象に行ったアンケート調査の成果で、同部会長の中島夏樹氏(川崎市・中島医院院長)が、第19回日本保育園保健学会で報告した。罹患率低下、有効率向上には、2011年秋より、特に3歳以上の小児に対するワクチン接種量が大幅に増やされたことが寄与している可能性を示唆した。
9797人(82.5%)より得られた回答を集計した結果、まずインフルエンザに罹患した園児は17.1%で、2011/12年シーズンの罹患率34.1%の約2分の1に留まった。例年の20~25%に比べても低かった。また、罹患率は例年、3歳以上よりも4歳以上で明らかに高いが、2012/13年シーズンはほとんど差が見られなかった。
迅速診断は、罹患した園児の94.9%が受けていた。結果はA型が罹患者の83.8%、B型が6.5%だった。
ワクチン接種は71.8%(2回接種64.8%、1回接種7.0%)の園児が受けていた。ワクチン接種の有無別、回数別に見た罹患率は、未接種群ではA型19.7%、B型1.6%だったのに対して、1回接種群ではA型13.2%、B型1.6%、2回接種群ではA型12.1%、B型は0.9%と、ワクチン接種を受けた園児、特に2回接種の園児で低いことが分かった。A型では未接種群と1回接種群、2回接種群との間で、B型では未接種群と2回接種群との間で、それぞれ有意差が認められた(P<0.001)。
以上のデータから算出した2012/13年シーズンのワクチン有効率は、A型の1回接種群で32.7%、2回接種群で38.6%、B型の1回接種群で2.4%、2回接種群で48.2%。特に2回接種群では、A型、B型とも高い有効率が得られた。2回接種群の有効率がA型29.6%、B型21.2%であった2011/12年シーズンに比べて明らかに高く、例年の有効率に比べてもやや高かった。
インフルエンザワクチンの1回接種量は2011年秋に、米国などの基準と統一された。保育園児の場合、従来は1歳未満0.1mL、1~5歳0.2mLだったのが、6カ月~2歳0.25mL、3歳以上0.5mLにそれぞれ増量された。このことから、中島氏は、2012/13年シーズンのワクチン有効率が高かった理由について「特に0.2mLから0.5mLへと大幅に増量された3歳以上の児でワクチンの有効性が高まったことによる可能性が考えられる」と推測した。
以上のように、接種量増量により幼児に対する有効率が20-30%から40-50%へ改善し、ワクチンを勧める根拠に少し自信がつきました。
しかしそれでも50%未満と満足すべき数字ではなく、皮下注射という方法の限界を示しています。
海外に目を向けると、欧米では経鼻生ワクチンが導入されており、より高率の有効性を示しています(次項で扱います)。
当院も9月中旬に開始し、結構埋まってきました。
さて、インフルエンザワクチンは“発症予防”の有効率が低いことで有名です。
健康成人では流行株と型が合えば50~70%有効、小児ではそれより劣り、幼児期では20~30%、乳児に関しては有意差がない、とされてきました。
■ 乳幼児(6歳未満)に対するインフルエンザワクチン接種について
-日本小児科学会見解-(2004年)
1) 1歳未満児については対象数が少なく、有効性を示す確証は認められなかった。
2) 1歳以上6歳未満児については、発熱を指標とした有効率は20-30%となり、接種の意義は認められた。
私は開き直って、
「効くんですか?」
という質問に、
「罹らないためではなく、重くならないためのワクチンと考えてください」
と説明しています。
実感としても報告論文から見ても、インフルエンザワクチンの学校集団接種がなくなってから「インフルエンザ性脳症」「老健施設での高齢者死亡増加」が社会問題化し、その後接種率が改善したらそのことが話題になる回数が減りました。
“発症予防”としての有効率が低い一因として、小児では接種量が少ないことが以前から指摘されてきました。
それが2011年にようやく世界と同じレベルに増量され、有効率改善が期待されました。そのタイミングで取られた日本のデータ記事を紹介します。接種量増量により幼児に対する有効率が20-30%から40-50%へ改善したという報告です(一部を抜粋。下線は私が引きました):
■ 2012/13年シーズン、保育園児のインフルエンザワクチン有効率が向上
(2013/10/31:日経メディカル)
2012/13年シーズンにおける保育園児のインフルエンザ罹患率は17.1%で例年より低く、ワクチン(2回接種)の有効率はA型38.5%、B型48.2%と例年より高かったことが示された。川崎市医師会保育園医部会が同市の保育園児約1万2000人の保護者を対象に行ったアンケート調査の成果で、同部会長の中島夏樹氏(川崎市・中島医院院長)が、第19回日本保育園保健学会で報告した。罹患率低下、有効率向上には、2011年秋より、特に3歳以上の小児に対するワクチン接種量が大幅に増やされたことが寄与している可能性を示唆した。
9797人(82.5%)より得られた回答を集計した結果、まずインフルエンザに罹患した園児は17.1%で、2011/12年シーズンの罹患率34.1%の約2分の1に留まった。例年の20~25%に比べても低かった。また、罹患率は例年、3歳以上よりも4歳以上で明らかに高いが、2012/13年シーズンはほとんど差が見られなかった。
迅速診断は、罹患した園児の94.9%が受けていた。結果はA型が罹患者の83.8%、B型が6.5%だった。
ワクチン接種は71.8%(2回接種64.8%、1回接種7.0%)の園児が受けていた。ワクチン接種の有無別、回数別に見た罹患率は、未接種群ではA型19.7%、B型1.6%だったのに対して、1回接種群ではA型13.2%、B型1.6%、2回接種群ではA型12.1%、B型は0.9%と、ワクチン接種を受けた園児、特に2回接種の園児で低いことが分かった。A型では未接種群と1回接種群、2回接種群との間で、B型では未接種群と2回接種群との間で、それぞれ有意差が認められた(P<0.001)。
以上のデータから算出した2012/13年シーズンのワクチン有効率は、A型の1回接種群で32.7%、2回接種群で38.6%、B型の1回接種群で2.4%、2回接種群で48.2%。特に2回接種群では、A型、B型とも高い有効率が得られた。2回接種群の有効率がA型29.6%、B型21.2%であった2011/12年シーズンに比べて明らかに高く、例年の有効率に比べてもやや高かった。
インフルエンザワクチンの1回接種量は2011年秋に、米国などの基準と統一された。保育園児の場合、従来は1歳未満0.1mL、1~5歳0.2mLだったのが、6カ月~2歳0.25mL、3歳以上0.5mLにそれぞれ増量された。このことから、中島氏は、2012/13年シーズンのワクチン有効率が高かった理由について「特に0.2mLから0.5mLへと大幅に増量された3歳以上の児でワクチンの有効性が高まったことによる可能性が考えられる」と推測した。
以上のように、接種量増量により幼児に対する有効率が20-30%から40-50%へ改善し、ワクチンを勧める根拠に少し自信がつきました。
しかしそれでも50%未満と満足すべき数字ではなく、皮下注射という方法の限界を示しています。
海外に目を向けると、欧米では経鼻生ワクチンが導入されており、より高率の有効性を示しています(次項で扱います)。