小児アレルギー科医の視線

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テトラサイクリン系抗菌薬の年齢制限が解除される(かもしれない)。

2015年04月14日 08時01分09秒 | 小児医療
 テトラサイクリン系抗菌薬を乳幼児に使用すると「歯芽着色」の副作用が出やすいため、「8歳未満の小児には使用禁忌」(使ってはいけない)となっていることは医師の間で常識です。

テトラサイクリン系抗菌薬による歯牙の黄染(はしもと小児科HP)
ミノマイシンで歯が着色するのはなぜ?(くすりの勉強 -薬剤師のブログ-)

 しかし、この常識が変わるかもしれない報告が発表されました;

■ 「“8歳未満へのテトラサイクリン系薬は原則禁忌”見直しを」米CDCと先住民健康サービスの共同研究
(2015.3.20:MTPro)
 医薬品を使用するときにはそのベネフィットとリスクの比較考量が行われる。その際に薬剤の添付文書が参考にされることも少なくない。抗菌薬テトラサイクリン系薬は投与による歯牙着色のリスクから,8歳未満の小児への投与は原則禁忌とされている。米疾病対策センター(CDC)のSuzanne R. Todd氏らは他に有効な治療法がなく,迅速な投薬開始が必要となる感染症の治療が,患児が8歳未満の場合,この「原則禁忌」の記載のためにしばしば控えられていると指摘。現在,CDCがドキシサイクリン(DOXY)を第一選択に推奨するダニ媒介性感染症の診療録を用いた後ろ向きコホート研究と歯科医の問診による横断研究を実施した。その結果をJ Pediatr(2015年3月17日オンライン版)に報告した。結語では同薬添付文書上の記載を見直すよう提言している。

◇ドキシサイクリンの歯牙着色に関する十分なデータ存在せず
 Todd氏らによると,テトラサイクリン系薬の歯牙着色またはエナメル質形成不全の副作用は1950年代から報告がある。歯牙形成期の小児を対象とした先行研究では,23~92%に肉眼的に明らかな歯牙着色が見られるとのデータが示されている。DOXYはテトラサイクリン系薬の中でも比較的後の1967年ごろから使用されているが,同薬と小児の歯牙着色の関連の報告はあまりなかったと指摘している。

◇「年齢問わずDOXYで一次治療」の推奨も8歳未満への投与は35%
 一方,確定診断前からの治療開始が重要なダニ媒介性感染症の1つにロッキー山紅斑熱(RMSF)がある。特に10歳未満の小児の致死率は同年齢以上の5倍に上るといわれている。RMSFに対し,CDCや米国小児科学会(AAP)は年齢にかかわらずDOXYの7~10日間投与を一次治療として推奨。しかし,米国では8歳以上~成人患者がDOXYの一次治療を受ける割合は80%なのに対し,8歳未満の場合は35%にとどまっている。Todd氏らは「DOXYの添付文書に示されている8歳未満に対する警告内容が,医師の処方控えにつながっているのではないか」と分析する。

◇RMSF好発地域の小児の歯を比較
 Todd氏らは,医療記録および薬歴から先住民のインディアン居住地に住む小児のDOXY使用歴の有無を調査。それぞれの小児の永久歯の着色あるいはエナメル質形成不全の程度を歯科医が評価した。
 同居住地が今回の検討に選ばれた理由は,RMSFの好発地域で,以前から保健当局が患者年齢を問わず,確定診断前からDOXYをルーチンに用いるようにとの啓発を行っていたため。

◇8歳以前の使用例における歯牙着色はゼロ,色調変化などもなし
 この検討では,8歳以前にDOXY投与(平均投与期間1.8コース)を受けていた小児58例,同薬投与歴のない小児213例の永久歯が評価された。DOXY群のテトラサイクリン系薬による歯牙着色はゼロ。非DOXY群との歯の色調比較において有意な変化は見られなかった(P=0.20)他,エナメル質形成不全にも有意な変化はなかった(P=1.0)。
 Todd氏らは8歳以前に短期間のDOXY投与歴のあった小児を対象としたこの検討では,歯の色素沈着やエナメル質形成不全,あるいは歯の色調変化は見られなかったと結論。同薬添付文書の8歳未満の小児に関する警告を緩和することにより,早期のDOXY開始が重要な小児に対するRMSFの使用控えが改善するのではないかと提言した。
 CDCは同日発行のニュースリリースで,小児へのDOXY短期投与が歯への副作用に関連しないことを示した同氏らの研究成果は,RMSFだけでなく同薬が有効なその他の細菌性市中肺炎に対する小児の治療成績の改善にもつながるのではないかと評価している。


 ミノマイシン®と子どもの歯の着色は小児科医の間でも時々話題になります。
 「総使用量が問題」という意見もありますが「感受性者は少量短期間でも」という意見もあり、結局「危険だから避けよう」という結論になることが多いですね。
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