小児アレルギー科医の視線

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ミャンマーではインフルエンザが夏(7〜9月)に流行する。

2018年09月24日 15時29分53秒 | 感染症
 日本では毎年、12月〜翌年3月中心にインフルエンザが流行します。
 一方、南半球では日本とは逆の季節になるので、インフルエンザ流行も日本の夏に当たる5〜8月に流行します。

 では、熱帯・亜熱帯ではどうでしょうか?
 インフルエンザの迅速診断キットが普及してから、小児科医の間では「沖縄では1年中インフルエンザが小流行している」ことが常識になっています。
 しかしそれがなぜなのか、という問いに対する答えは、まだわかっていないようです。

 そんな折、ラジオNIKKEIで以下の放送をしているのを知りました;

「東南アジアにおけるインフルエンザの流行」2018年8月29放送
 新潟大学大学院 国際保健学分野教授 齋藤 玲子


 やはり疑問は解けてはいないものの、インフルエンザ流行を解析する際のキーワードがいくつか出てきて参考になりました。

 そのキーワードは「湿度」と「感染様式」。
 湿度が異なると、インフルエンザの感染様式が異なってくるというのです。

 高湿度の時は、接触感染が中心。
 中湿度の時は、飛沫感染が中心。
 低湿度の時は、飛沫感染+空気感染もありえる?

 
 そして広がりやすさは、接触<飛沫<空気感染です。
 湿度が高いと水分を含んだウイルス粒子が重くなるので遠くに飛びにくいというイメージですね。 
 この解説は画期的です。
 
 四季のある北半球の日本、南半球のオーストラリアやニュージーランドでは寒くて低湿度の季節に爆発的に流行する理由になります。
 中湿度のミャンマーなどの亜熱帯地方では、飛沫感染が中心なので、日本ほど大きな流行になにくい。
 高湿度の熱帯地方では接触感染が中心であり、さらに感染拡大しにくく小流行にとどまる、という説明でした。

 なるほど。
 今までの疑問が、一部解決した感じ。

 さて、熱帯・亜熱帯地方の季節は「雨季」と「乾季」の二つだけだそうです。
 そしてインフルエンザが流行るのは「雨季」。
 高温で湿度の高い雨季に流行する・・・日本人の感覚ではピンときませんね。
 推察として、雨が降ると室内で過ごすことが多くなり、ヒトとヒトとの接触も密になるから、接触感染のリスクが上がるのではないか、とのことでした。
 ただし、接触感染は空気感染より広がりにくいので、流行も小さく患者数も少ない。

 フムフム。
 ここまで読んできてもピンとこない方に、例示してみます。

 代表的な接触感染は、伝染性膿痂疹や水いぼですね。
 仲のいいお友達間でうつるくらいの印象。
 まあ「うつるけれど流行るほどではない」イメージでしょうか。

 代表的な飛沫感染は、いわゆる“かぜ”です。
 患者さんの口や鼻から出た唾液や鼻水に含まれる病原体(ウイルスや細菌)が飛び散って、他のヒトの口や鼻や目にくっつくと感染が成立します。
 鼻風邪、RSウイルス、インフルエンザ、マイコプラズマ等々。
 それなりに流行します。

 代表的な空気感染は、水ぼうそうと麻疹(=はしか)と結核です。
 というか、この3つしかありません。

 皆さんご存じのように、小児科医院ではたいてい「隔離室」が用意されていますね。
 これは「空気感染対策」に外なりません。
 当院でもそうですが「水ぼうそう、はしかが疑われる患者さんは待合室に直接入らないで隔離室のインターホンを押してください」と掲示しています。
 空気感染は同じ空間にしばらくいるだけでももらってしまう、こわい感染症なのです。

 インフルエンザは従来、「接触&飛沫感染」と説明されてきました。
 しかし「空気感染もするのではないか?」という意見もチラホラありましたが、まだ教科書に載るほどのエビデンスはないようです。
 今回のこの番組で「インフルエンザは空気感染もあり得る」と述べているのは、じつは新しいことなのです。

 いかがでしょう。
 イメージできましたか。

 さて、9月に入りインフルエンザ流行による学級閉鎖のニュースが流れる季節になりました。
 まあ、例年のことです。
 このように小流行が散発し、そして12月に入ると本格的に流行します。

 ただ、湿度が異様に低くなる環境では、流行が早まるかもしれません。
 日本では「エアコン」が普及しているので、室内湿度は簡単に20%位まで下がってしまい、インフルエンザ・ウイルスを喜ばすことになりますね。
 ぜひ、加湿器を併用しましょう。
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