小児アレルギー科医の視線

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発熱を繰り返す小児・・・ PFAPA?

2022年08月11日 16時36分37秒 | 感染症
発熱を繰り返す子どもを診たとき、ただの風邪の反復ではないことがあります。
前項目の「家族性地中海熱」がその一つですが、毎月1回ペースの痛みを伴う発熱発作、でした。

他にPFAPAという病気も考えておく必要があります。
PFAPAって?
・・・ periodic fever, aphthous stomatitis, pharyngitis and adenitis の略で、日本語に訳すと「周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・リンパ節炎症候群」となります。症状を並べただけ病名なので、内容がバレバレです。
つまり、「発熱すると口内炎ができやすく、診察を受けると喉が赤い・リンパ節が腫れている、これを繰り返す子ども」ということ。

発熱・喉が赤い・リンパ節が腫れる・・・これはふつうの風邪です。
保育園・幼稚園に入るとしばらく風邪を繰り返すパターン(私は「入園症候群」と呼んでいます)と区別できません。
口内炎を伴う、というのが特徴かな。

この病気について以前にも調べたこともあるのですが、成長とともに目立たなくなるので、診断する意味があるの?と疑問に思った記憶があります。

さて、気を取り直して基本情報を拾ってみました(参考1と2より)。

【概念】
・周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・頚部リンパ節炎を主症状とし、主に幼児期に発症する、最も頻度の高い非遺伝性の自己炎症性疾患。

【疫学】
・頻度不明
・遺伝性なし
・発症年齢:3-4歳が多い(成人発症例もある)

【原因】
・不明

【症状】
・主症状は3-6日間続く周期性発熱発作で、3-8週間毎に繰り返し、間欠期には無症状。
・アフタ性口内炎、頚部リンパ節炎、(白苔を伴う)扁桃炎・咽頭炎などの随伴所見のいくつかを認める。

<Federらの105例の検討>
・男児:62%
・平均発症年齢:3歳4ヶ月(5歳以下が80%)
(口内炎)38%
(咽頭炎)85% 
(頚部リンパ節腫脹)62%
(頭痛)42%
(嘔吐)27%
(軽度の腹痛)41%

【検査所見】
・発作時:好中球優位の白血球数増加、CRP高値
・間欠期:異常なし

【診断】(参考2より)


【合併症】
・特になし

【治療】
・発作時の副腎皮質ステロイド薬が(9割以上で)有効。PSL:0.5-1.0mg/kgを発熱発作時に1-2回内服(2回目は発熱が頓挫しない場合に12-24時間後に内服)
・しかしステロイド薬投与により発作間隔が短くなり、発熱以外の症状が残存する場合があるなどの問題がある。
・ヒスタミンH2受容体拮抗薬であるシメチジンや、ロイコトリエン拮抗薬が一部の症例に有効。
・内科的治療に抵抗する例には扁桃摘出術が行われる(寛解率70-80%)。

【予後】
・通常4-8年で治癒し、予後は良好(成長・発達障害を認めない)。


ちょっとちょっと・・・
頻度不明、原因不明、治療はステロイドが効くけど、発熱間隔が短くなる・・・これでは診断する意味が感じられません。
診断フローチャートも除外診断がメインに見えます。
口内炎の頻度も38%と高くなく、認めなくても否定はできません。
扁桃摘出術は昔から扁桃炎を繰り返す子どもに行われてきた処置ですし。

昔の小児科医は、
・風邪を引くと抗生物質を処方、
・高熱が続くとステロイドを処方し、
・日常生活に支障が出るほど発熱回数が多いと扁桃摘出術を勧めていました。
って、PFAPAの治療そのものではありませんか!?

かくいう私も発熱・扁桃炎・中耳炎を繰り返す虚弱児でありました。
耳鼻科で「扁桃腺を取りましょう」といわれたものの、躊躇して決めかねている内に熱を出さなくなったので、今でも扁桃は残っています。
成長に伴い寛解する、を体現しているのかもしれません。

以上、なんだかなあ、という昔の感想が変わらなかったPFAPAのお話でした。


<参考>
(難病情報センター)
2.自己炎症性疾患診療ガイドライン2017(日本小児リウマチ学会)

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