小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「熱中症ガイドライン」が改訂されたらしい(2024年)。

2024年08月06日 06時53分10秒 | 医療問題
「熱中症分類」、昔は単語でした。
しばらく前に単語から数字(I度、II度、Ⅲ度)に変更されました。

しかしいくら解説を読んでも、私にはピンときませんでした。
各分類の線引きが曖昧なんです。

一時期、熱中症関連の書籍・資料を読みあさり、
納得できるものに出会ってまとめたのがこちらです。

チェックポイントは「吐気の強さ」と「意識状態」。
これが問題なければ様子観察可、
問題あれば医療機関受診(救急搬送を含めて)。

吐き気+だるさ(+意識正常) → 涼しいところで休んで少量頻回の水分補給
嘔吐頻回+グッタリ(+意識正常) → 医療機関受診し点滴を
意識レベル低下 → 無条件に救急搬送!

とシンプルなフローです。

さて、「熱中症ガイドライン」なるものが存在し、
それが今年(2024年)改定されたという情報が入ってきました。

記事を参考に紹介します。
読んでみると、I度とII度は意識障害の有無で区別し、集中力・判断力の低下がなければ現場で様子観察、怪しければ医療機関へ、とあります。
一見、わかりやすそうなのですが、臨床現場ではどうでしょう。

熱中症を心配する患者さんから訴えられることは、
・暑いところで活動していて熱が出てだるそう。
・汗をたくさんかいている、あるいはかいていないから心配。
が多いです。

ガイドライン2024の分類に「発熱」という単語を探すと・・・IV度のところにしかありません。
では熱があればすべてIV度というと、そんなことはないでしょう。
I度、II度の発熱はどうなっているんですか?と問いたい。

「発汗」という単語を探すと・・・多量の発汗がI度にあります。
ではII度〜IV度では発汗はどうなっているんですか?と問いたい。

<ポイント>
・改定されたガイドライン2024では熱中症の重症度分類や診療アルゴリズムを変更したほか、熱中症患者の身体を冷却する「Active Cooling」の定義などを見直した。
・改訂前の重症度分類では、I度(軽症)、II度(中等症)、III度(重症)の3段階としていたが、ガイドライン2024では、より重症な患者の分類として新たに「IV度(最重症)」を導入。
【I度】めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛などの症状があるが、意識障害は認めない患者。
 → 現場で対応可能。
【II度】頭痛や嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下が見られるJCS≦1の患者。
 → 医療機関での診察が必要、Passive Coolingを行い、不十分ならActive Coolingの実施のほか、経口的に水分・電解質の補給を行う(経口摂取が困難なときは点滴を利用)。
【Ⅲ度】中枢神経症状(JCS≧2、小脳症状、けいれん発作)、肝・腎機能障害、血液凝固異常のうちいずれかを含む状態。
 → 入院治療の上、Active Cooling(※)を含めた集学的治療を考慮。
【qIV度】表面体温40.0℃以上(もしくは皮膚に明らかな熱感あり)かつGCS≦8(もしくはJCS≧100)。
【IV度】qIV度に該当した患者にはActive Coolingを早期開始しつつ、深部体温の測定を早急に行い「深部体温40.0℃以上かつGCS≦8」に該当する例。
 → Active Coolingを含めた早急な集学的治療を実施。

※ Active Cooling:何らかの方法で、熱中症患者の身体を冷却すること。氷嚢、蒸散冷却、水冷式ブランケットなどを用いた冷却法、ゲルパッド法、ラップ法、(近年登場した)体温管理機器を用いる冷却方法。冷蔵庫に保管していた輸液製剤の投与(エビデンス不十分)、クーラーや日陰の涼しい部屋での休憩はActive Coolingではなく、「Passive Cooling」の範疇。

■ 日本救急医学会が「熱中症診療ガイドライン2024」を公表
加納 亜子=日経メディカル
2024/07/30:日経メディカル)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 日本救急医学会の熱中症および低体温症に関する委員会は2024年7月25日に「熱中症診療ガイドライン2024」を公表した(日本救急医学会のウェブサイトはこちら)。改訂は約10年ぶりとなる。ガイドライン2024では熱中症の重症度分類や診療アルゴリズムを変更したほか、熱中症患者の身体を冷却する「Active Cooling」の定義などを見直した
 改訂前の重症度分類では、I度(軽症)、II度(中等症)、III度(重症)の3段階としていたが、ガイドライン2024では、より重症な患者の分類として新たに「IV度(最重症)」を導入した。
 広く用いられてきた改訂前の「熱中症診療ガイドライン2015」における重症度分類では、「(1)深部体温≧40℃、(2)中枢神経障害、(3)暑熱環境への曝露──の3つを満たすもの」を重症と定義した「Bouchama基準」に、腎障害や肝障害、播種性血管内凝固症候群(DIC)などの症状を判断基準に加えた上で、その状況に至るまでの諸症状・病態を一連のスペクトラムとして「熱中症」と総称し、必要な処置のレベルに応じてI度~III度に分類していた。だが、入院加療が必要な「III度」の定義が幅広く、軽度の意識障害(JCS 2程度)のみに該当する場合から昏睡やDICなどの多臓器不全を呈する致死的状態までを同じ範疇で定義している状態だった。
・・・ガイドライン2015の重症度分類における「III度」の重症者のうち、「表面体温40.0℃以上(もしくは皮膚に明らかな熱感あり)かつGCS≦8(もしくはJCS≧100)」をqIV度と定義。現場ではまず、qIV度に該当する患者を迅速にスクリーニングするよう求めた。その上で、qIV度に該当した患者にはActive Coolingを早期開始しつつ、深部体温の測定を早急に行い「深部体温40.0℃以上かつGCS≦8」に該当すれば「IV度」、深部体温が39.9℃以下であれば「III度」に振り分ける流れとした。
 そのほか、めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛などの症状があるが、意識障害は認めない患者は「I度」と設定。頭痛や嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下が見られるJCS≦1の患者は「II度」中枢神経症状(JCS≧2、小脳症状、けいれん発作)、肝・腎機能障害、血液凝固異常のうちいずれかを含む状態を「III度」とした。
 重症度分類の見直しに伴い、診療アルゴリズムも変更した(図1)。I度は「現場で対応可能」II度は「医療機関での診察が必要」としてPassive Coolingを行い、不十分ならActive Coolingの実施のほか、経口的に水分・電解質の補給を行うよう求めた(経口摂取が困難なときは点滴を利用)III度では「入院治療の上、Active Coolingを含めた集学的治療」を考慮し、IV度では「Active Coolingを含めた早急な集学的治療」を実施するよう求めている。

図1 熱中症診療ガイドライン2024の診療アルゴリズム(熱中症診療ガイドライン2024から引用)

 また、Active Coolingについては、改訂前の「熱中症診療ガイドライン2015」では氷嚢、蒸散冷却、水冷式ブランケットなどを用いた従来の冷却法、ゲルパッド法、ラップ法など細かく個別の冷却方法を記載していた。近年、体温管理機器を用いる冷却方法が開発されていることを受け、ガイドライン2024ではActive Coolingを「何らかの方法で、熱中症患者の身体を冷却すること」と定義。包括的な記載に統一した。
 ただし、冷蔵庫に保管していた輸液製剤の投与、クーラーや日陰の涼しい部屋での休憩はActive Coolingではなく、「Passive Cooling」の範疇だと記した。また、冷蔵庫に保管していた輸液製剤の投与は薬剤メーカーで推奨された投与方法ではなく、実際の液温が不明であり、重症熱中症患者への有効性を示すエビデンスがないことにも言及した。また、重症例(III~IV度)への治療法については、Active Coolingを含めた集学的治療を行うことを推奨(CQ3-01:弱い推奨、エビデンスの強さB〔中等度〕)している。
 なお、ガイドライン2024はMinds(Medical Information Distribution Service)診療ガイドライン作成マニュアル2020(Minds2020)に準拠した形で作成した。定義・重症度・診断、予防・リスク、冷却法、冷却法以外の治療(補液、DIC、治療薬)、小児関連の5分野から24個のクリニカル・クエスチョン(CQ)を設定。システマティックレビューの結果がそろった段階で、執筆担当者14人で推奨決定会議を行った。満場一致で合意した場合はCQからバックグラウンド・クエスチョン(BQ)やフューチャー・リサーチ・クエスチョン(FRQ)へ変更し、推奨決定会議の経過は解説文に記載した。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« シンデレラ体重(BMI≦18)は... | トップ | ナノプラスチックはすでにあ... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

医療問題」カテゴリの最新記事