学校健診から「座高測定」が外され、
「成長曲線」が導入されたのは2014年だそうです。
そう昔のことではありません。
逆に言うと、2014年までは身長と体重を点として評価するのみで、
線として評価してこなかったということになります。
成長曲線とは、横軸に年齢を、縦軸に身長と体重をプロットして作成するグラフです。
母子手帳の後ろの方に付録としてついているので、
親になると見覚えのあるグラフだと思います。
学校健診の場では、内科診察の際にこの成長曲線を参照します。
遺伝要素や病気による影響がないかどうかを検討する有用な材料です。
身長・体重は標準の成長曲線に乗っているか?
身長・体重のバランスはどうか?
等々。
成長曲線を眺めるだけで、隠れている病気の存在が浮かび上がることがあります。
わかりやすい解説サイトが目に留まりましたので、参照&一部引用させていただきます。
長崎大学小児科准教授 伊達木澄人
(ラジオNIKKEI:小児科診療 UP-to-DATE)
◆ 標準曲線からどの程度離れているかを評価する方法には、
① パーセンタイル
② SD(標準偏差)
の二つがある。
小児科診療の現場ではSDを用いることが多いが、
なぜか学校健診ではパーセンタイルを用いている。
…専門学会と文部省に問いたい、この辺の無駄なギャップ、何とかなりませんかねえ。
◆ 学校健診の際、測定した身長・体重は養護教諭(保健室の先生)によりパソコンソフトに入力され、
自動で成長曲線が描かれる。
◆ パソコン得意の自動検索条件により検索がかけられ、
成長曲線に問題ありと疑われる例は検出さっる。
自動検索条件は以下の9つ;
① 身長の最新値が97パーセンタイル以上(統計学的な高身長)
② 過去の身長Zスコアの最小値に比べて最新値が1Zスコア以上大きい(身長の伸びが異常に大きい)
③ 身長の最新値が3パーセンタイル以下(統計学的な低身長)
④ 過去の身長Zスコアの最大値に比べて最新値が1Zスコア以上小さい(身長の伸びが異常に小さい)
⑤ 身長の最新値が -2.5Zスコア以下(極端な低身長)
⑥ 肥満度の最新値が20%以上(肥満)
⑦ 過去の肥満度の最小値に比べて最新値が20%以上大きい(進行性肥満)
⑧ 肥満度の最新値が -20%以下(やせ)
⑨ 過去の肥満度の最大値に比べて最新値が20%以上小さい(進行性やせ)
以上9つの検索条件から、以下の異常を検出;
1.高身長(97パーセンタイル以上)・・・チェック項目①
・児童100人中2-3人はこの群に属するが、ほとんどの場合は病気ではない体質的家族性の高身長。
・身長が成長曲線に沿っていて、随伴症状(※)がなければ、基本的には経過観察可。
・まれに高身長を伴う疾患(Marfan症候群、Klinfelter症候群)が含まれる可能性あり。
※ 随伴症状:発達遅滞、思春期未発来、側湾など。
2.身長の伸びが異常に大きい・・・チェック項目②
・思春期早発症、甲上腺機能亢進症、単純性肥満症などの鑑別が必要。
【思春期早発症】
・生理的範囲の思春期早発傾向の児との鑑別が難しいため、専門医の判断を要することが多い。
・病的な思春期早発症は早期の成長停止につながり、成人身長の低下に至る可能性がある。若年齢、低身長合併例では要注意。
【思春期遅発症】
・二次性徴の出現、身長スパートが一般生徒に比べて遅れ、中学・高校生になって伸びる生理的な体質をいう。
・遅れて身長スパートが出現したとき、一般生徒の成長率は既に停滞する時期にあるので、この群に当てはまってしまうことがあるが、この場合は学校健診での経過観察でよい。
・ただし、中学3年生で身長スパートが来ていない児童生徒は性腺機能低下症の鑑別が必要(二次性徴の確認)。
3.低身長(3パーセンタイル以下)・・・チェック項目③と⑤
・身長が成長曲線に沿っていて、随伴症状がなければ経過観察可。
・チェック項目⑤に当たる -2.5SD以下の極端な低身長があれば、医療機関受診を指示。
・低身長+肥満 → 症候性肥満の可能性あり要精査。
(例)Cushing症候群、偽性副甲状腺機能低下症
4.身長の伸びが異常に小さい・・・チェック項目④
・治療の必要のない思春期遅発症が多く含まれるが、早期診断・治療が必要な疾患(※)の可能性もあるため、医療機関受診を指示。
※ 脳腫瘍、後天性甲状腺機能低下症(萎縮性甲状腺炎)、Cushing症候群、愛情遮断症候群(虐待)、クローン病、その他全身性消耗性疾患。
5.肥満(肥満度20%以上)・・・チェック項目⑥⑦
・現在、小学校高学年〜中学生における肥満の割合は全体の10%前後であり、多くの生徒がこの群に該当する。
・現実的な対応として、軽度肥満(肥満度20%以上〜30%未満)は学校での栄養生活指導が望ましい。
・それでも改善のない場合、進行性の肥満、高度肥満(肥満度50%以上)は医療機関受診を指示する。これらの肥満群の中には生活習慣病(※)が含まれており、成人肥満、動脈硬化性疾患の予防のためにも早期の医療的介入が望まれる。
※ 高脂血症、糖尿病、高尿酸血症、高血圧、脂肪肝など。
6.やせ(肥満度ー20%以下)・・・チェック項目⑧⑨
・軽度のやせ(肥満度 -20%以上〜 -30%未満)は進行性でない限り、学校での栄養生活指導で経過観察を基本とする。
・重度のやせや進行性やせを伴う場合は病気(※)を疑う。
※ 神経性やせ症、過度な運動、その他全身性消耗性疾患。
・思春期やせ症は致死率の高い病気である。
・近年、部活動による過度の運動負荷と相対的栄養不足のため、やせに加えて月経異常とそれに伴う骨密度の低下、繰り替えず骨折を伴う児童生徒が増えてきている。