今回は事件の被害者、加害者家族の心象がていねいに描かれた。
(以下、ネタバレです)
刑事、民事でも救われない被害者家族の現実。
被害者家族は、加害者に心から反省し謝罪してほしいだけなのに、世間の心ない人からは「そんなに金がほしいのか」と言われる。
そんな世間に「刑事でも民事でも救われない被害者感情があることを伝えたくて」、被害者の父親・新開孝太郎(綿引勝彦)は、自分が出所した加害者・川北を殺したとウソを言う。
一方、加害者の家族。
これらもマスコミを始めとする世間の目にさらされ苦しんでいる。
母親は苦しみから病死、父親は失踪して行方不明。
姉の言葉も悲痛だ。
真犯人でもある姉はこう語る。
「弟のしたことで責められるより、自分のしたことで責められる方が楽」。
悲痛な言葉と言えば、被害者家族・新開夫婦の言葉もつらい。
「弁護士は賠償金の取り立てをしてくれるのか!」
「司法には失望しました」
「人の命を奪って(刑が)五年でいいわけがない」
「反省の手紙が最高裁の判決が出た後は一通も来ない」
「加害者の家族も自分の家族が起こした罪を背負うべきだ」
これらのやりきれない思いが募って、被害者家族の新開夫婦はウソの主張をしたわけだが、この行為について弁護士の瀬田宗明(渡哲也)は法の正義に照らし合わせてこう語る。
「あなたたちのしたことは間違っている。しかし私には自分の正義より、あなた方の感情の方が大切です」
法は完全ではない。
仮に判決で加害者が裁かれたとしても、新開夫婦が抱いたような怒りの感情は解消されない。
江戸時代のような復讐、仇討ち、罪は家族にも及ぶといったシステムがあれば、解消の度合いは違ってくるのかもしれないが、現在は法のもとで刑罰が決められる。
そして刑事や検事、弁護士や裁判官は不完全なものであったとしても、法を守り、それに基づいて執行していかなくてはならない。
ここには弁護士・瀬田が語った「私には自分の正義より、あなた方の感情の方が大切です」というジレンマがある。
ラストの右京(水谷豊)のせりふも深い。
犯人が姉であることを父親に右京が伝えたことについて、神戸(及川光博)が「右京さんは残酷ではないか」と訊く。
すると右京。
「それに耐えられないようなら、人に罪を問うべきではない。僕はそう思っています」
右京は事件のすべてに責任を持つ。
逃げて失踪した父親も罪を背負うべきだと考えている。
もし、父親が逃げずにいたら姉は弟殺しをしなくて済んだかもしれない。
反省しない息子を殴って改心させられたかもしれない。
だから右京は父親に対しても非情になる。
もっとも右京は、父親が罪を背負うことが、いずれは彼の救いになるとも考えていたのかもしれませんね。
現実から目を背け、逃げていたら何も始まらない。
(以下、ネタバレです)
刑事、民事でも救われない被害者家族の現実。
被害者家族は、加害者に心から反省し謝罪してほしいだけなのに、世間の心ない人からは「そんなに金がほしいのか」と言われる。
そんな世間に「刑事でも民事でも救われない被害者感情があることを伝えたくて」、被害者の父親・新開孝太郎(綿引勝彦)は、自分が出所した加害者・川北を殺したとウソを言う。
一方、加害者の家族。
これらもマスコミを始めとする世間の目にさらされ苦しんでいる。
母親は苦しみから病死、父親は失踪して行方不明。
姉の言葉も悲痛だ。
真犯人でもある姉はこう語る。
「弟のしたことで責められるより、自分のしたことで責められる方が楽」。
悲痛な言葉と言えば、被害者家族・新開夫婦の言葉もつらい。
「弁護士は賠償金の取り立てをしてくれるのか!」
「司法には失望しました」
「人の命を奪って(刑が)五年でいいわけがない」
「反省の手紙が最高裁の判決が出た後は一通も来ない」
「加害者の家族も自分の家族が起こした罪を背負うべきだ」
これらのやりきれない思いが募って、被害者家族の新開夫婦はウソの主張をしたわけだが、この行為について弁護士の瀬田宗明(渡哲也)は法の正義に照らし合わせてこう語る。
「あなたたちのしたことは間違っている。しかし私には自分の正義より、あなた方の感情の方が大切です」
法は完全ではない。
仮に判決で加害者が裁かれたとしても、新開夫婦が抱いたような怒りの感情は解消されない。
江戸時代のような復讐、仇討ち、罪は家族にも及ぶといったシステムがあれば、解消の度合いは違ってくるのかもしれないが、現在は法のもとで刑罰が決められる。
そして刑事や検事、弁護士や裁判官は不完全なものであったとしても、法を守り、それに基づいて執行していかなくてはならない。
ここには弁護士・瀬田が語った「私には自分の正義より、あなた方の感情の方が大切です」というジレンマがある。
ラストの右京(水谷豊)のせりふも深い。
犯人が姉であることを父親に右京が伝えたことについて、神戸(及川光博)が「右京さんは残酷ではないか」と訊く。
すると右京。
「それに耐えられないようなら、人に罪を問うべきではない。僕はそう思っています」
右京は事件のすべてに責任を持つ。
逃げて失踪した父親も罪を背負うべきだと考えている。
もし、父親が逃げずにいたら姉は弟殺しをしなくて済んだかもしれない。
反省しない息子を殴って改心させられたかもしれない。
だから右京は父親に対しても非情になる。
もっとも右京は、父親が罪を背負うことが、いずれは彼の救いになるとも考えていたのかもしれませんね。
現実から目を背け、逃げていたら何も始まらない。