『涼宮ハルヒ』シリーズの著者・谷川流さんは本当に<たとえ>が上手い。
たとえば、こんな文章。
今はもう秋のはずなのに、なぜだかちっとも涼しくない。地球はいよいよバカになったようで、秋という季節を日本に到来させることを忘れてしまているようだった。夏の暑さは無限の延長戦に入ったみたいにせっせと働き、誰かがサヨナラ打を打たない限り収まりそうもなかった。収まる頃には秋をすっ飛ばして冬になっている気もするけど。(『涼宮ハルヒの溜息』P48)
いつまでも続く夏の暑さを表現するために、地球を擬人化し、野球をかけ合わせて表現している。
表現としては誇張が多く、好き嫌いが分かれる所だろうが、僕は好きだ。
主人公・ハルヒの自己中の傍若無人ぶりは、こんなふうに表現されている。
なんせハルヒはオフサイドラインの遙か向こうでひたすらボールを待っているだけのような超攻撃的FWだからな。敵キーパーより後ろにいるかもしれない。そこにパスしても線審の旗が上がるのは確実なのだが、それはハルヒにすれば誤審に過ぎないのである。そんなルールがあるほうがおかしいとハルヒは大まじめで言うだろう。そのうちボールを手に持ってゴールポストに飛び込んでもそれは一点だと主張しかねない奴なのだ。(『涼宮ハルヒの溜息』P61)
サッカーとかけ合わせて、これだけキャラクターを表現でできるのはすごい。
ハルヒと語り手であるキョンのボケとツッコミの漫才が展開されるのもこのシリーズの魅力。
以下は、ハルヒが学園祭の出し物で映画を撮ることを宣言した時のやりとり。
「つねづね疑問に思っていることがあるのよね」
俺はお前の頭の中身が疑問だ。
「テレビドラマとかで最終回に人が死ぬのってよくあるけど、あれってすんごく不自然じゃない? なんでそうタイミング良く死ぬわけ? おかしいわ。だからあたしは最後のほうで誰かが死んで終わりになるヤツが大嫌いなのよ。あたしならそんな映画は撮らないわ!」
映画かドラマかどっちなんだ。
「映画作るって言ったでしょ。古墳時代の埴輪でももっとちゃんとした耳穴持ってるわよ。あたしの言葉は一言一句間違えずに記憶しておきなさい」
お前のイカレポンチセリフ集を暗記するくらいなら、近所を走っている私鉄沿線の駅名を橋から覚えた方が遙かに有意義だよ(『涼宮ハルヒの溜息』P34)
といった感じで、ボケとツッコミが続く。
こうしたやりとりが作品全体にわたって繰り広げられるのだから楽しい。
さりけげなく警句が織り交ぜられているのもいい。
結局、ハルヒの強引さに押し切られて映画を撮ることになったことに対し、キョンはこんな感想を漏らす。
どこの世界でも声のデカイ奴とシキリ野郎がいつの間にか偉くなってしまっているのは本当のことだからな。おかげで俺や朝比奈さんのような流されやすい善人が迷惑を被るってのが、冷酷非情な人類社会の矛盾点であり心理である。(『涼宮ハルヒの溜息』P36)
というわけで、文章にスポットをあてて、この作品を論じてきましたが、『涼宮ハルヒ』シリーズは、作品内容だけでなく、文章表現もアクロバティック!
アニメやコミックにはない、小説独自の愉しみがここにはある。
たとえば、こんな文章。
今はもう秋のはずなのに、なぜだかちっとも涼しくない。地球はいよいよバカになったようで、秋という季節を日本に到来させることを忘れてしまているようだった。夏の暑さは無限の延長戦に入ったみたいにせっせと働き、誰かがサヨナラ打を打たない限り収まりそうもなかった。収まる頃には秋をすっ飛ばして冬になっている気もするけど。(『涼宮ハルヒの溜息』P48)
いつまでも続く夏の暑さを表現するために、地球を擬人化し、野球をかけ合わせて表現している。
表現としては誇張が多く、好き嫌いが分かれる所だろうが、僕は好きだ。
主人公・ハルヒの自己中の傍若無人ぶりは、こんなふうに表現されている。
なんせハルヒはオフサイドラインの遙か向こうでひたすらボールを待っているだけのような超攻撃的FWだからな。敵キーパーより後ろにいるかもしれない。そこにパスしても線審の旗が上がるのは確実なのだが、それはハルヒにすれば誤審に過ぎないのである。そんなルールがあるほうがおかしいとハルヒは大まじめで言うだろう。そのうちボールを手に持ってゴールポストに飛び込んでもそれは一点だと主張しかねない奴なのだ。(『涼宮ハルヒの溜息』P61)
サッカーとかけ合わせて、これだけキャラクターを表現でできるのはすごい。
ハルヒと語り手であるキョンのボケとツッコミの漫才が展開されるのもこのシリーズの魅力。
以下は、ハルヒが学園祭の出し物で映画を撮ることを宣言した時のやりとり。
「つねづね疑問に思っていることがあるのよね」
俺はお前の頭の中身が疑問だ。
「テレビドラマとかで最終回に人が死ぬのってよくあるけど、あれってすんごく不自然じゃない? なんでそうタイミング良く死ぬわけ? おかしいわ。だからあたしは最後のほうで誰かが死んで終わりになるヤツが大嫌いなのよ。あたしならそんな映画は撮らないわ!」
映画かドラマかどっちなんだ。
「映画作るって言ったでしょ。古墳時代の埴輪でももっとちゃんとした耳穴持ってるわよ。あたしの言葉は一言一句間違えずに記憶しておきなさい」
お前のイカレポンチセリフ集を暗記するくらいなら、近所を走っている私鉄沿線の駅名を橋から覚えた方が遙かに有意義だよ(『涼宮ハルヒの溜息』P34)
といった感じで、ボケとツッコミが続く。
こうしたやりとりが作品全体にわたって繰り広げられるのだから楽しい。
さりけげなく警句が織り交ぜられているのもいい。
結局、ハルヒの強引さに押し切られて映画を撮ることになったことに対し、キョンはこんな感想を漏らす。
どこの世界でも声のデカイ奴とシキリ野郎がいつの間にか偉くなってしまっているのは本当のことだからな。おかげで俺や朝比奈さんのような流されやすい善人が迷惑を被るってのが、冷酷非情な人類社会の矛盾点であり心理である。(『涼宮ハルヒの溜息』P36)
というわけで、文章にスポットをあてて、この作品を論じてきましたが、『涼宮ハルヒ』シリーズは、作品内容だけでなく、文章表現もアクロバティック!
アニメやコミックにはない、小説独自の愉しみがここにはある。