平成エンタメ研究所

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「二千年…若しくは…二万年後の君へ」~「進撃の巨人」の最終話の曲は壮大な叙事詩だ!

2023年11月17日 | コミック・アニメ・特撮
「進撃の巨人」最終話で流れた曲「二千年…若しくは…ニ万年後の君へ…」
 ひとつの壮大な叙事詩になっている。

 曲は4部構成

1.ミカサとエレンの物語
 エレンを殺して生きる意味を失ったミカサ。
「いってらっしゃい、エレン」と見送って覚悟したのに後悔は絶えない。
 最後の口づけを赤く染めたのは私……という歌詞が胸を打つ。
 だがその時、鳥が飛んできてミカサのスカーフを巻く。
 エレンは自由に空を飛べる鳥になったのか?
 メソメソするな、強く生きろ、とミカサを励ましに来たのか?

2.ミカサの死
 エレンの墓参りに来る仲間たち。
 季節はめぐり年月は経ち、問題のこのシーン。

 

 ファンの間では、子供を連れてエレンの墓参りに来ているふたりはミカサとジャンではないか
 と言われている。
 髪の色が同じだからだ。
 ということは、ミカサはジャンと結婚して子供を得た?
 いや、ガビだよ、とミカサの純愛を信じるファンはガビ説を唱える。

 でも、ミカサも大人。
 エレンを思いつつも、誰かを求めることはある。
 ジャンも、ミカサのエレンへの思いも含めてミカサを愛したのだろう。
 こんな想像をさせてしまう所が上手い。
 ファンはここでさまざまな物語を想像してしまう。
 予定調和を壊して、ファンの心をざわざわさせる所は意地悪だ。

 そしてレクイエム……。
 レクイエム、レクイエム……と哀しく歌うLinked Horizon。
 ここは「進撃」ファンなら涙なしに見られない。

3.戦争、そして無
 3つめのパートになると世界は大きく変わる。
 人類はふたたび戦争を始めるのだ。
「記憶」は「進撃の巨人」のテーマのひとつだが、人はすぐに忘れる。
 どんなに悲惨な目に遭っても、世代が変わり記憶が薄れれば同じ愚行を繰り返す。
「投げ返す石を捨てられない臆病な人間たち」って言葉は今、すごく胸に突き刺さる。
 そして愚行を繰り返した結果、世界は「無」になる。

4.二万年後の世界
 犬を連れた少年がエレンの巨木の洞を訪れる。
 かつてユミルが巨木の洞を訪れたように歴史は繰り返すのだ。

 この「犬を連れた少年」には考察がなされていて、
 タロットカードの「愚者」ではないか、と言われている。
 タロットカードの「愚者」
 正位置では「すべての始まり」「無限の可能性」「自由」を意味し、
 逆位置では「無謀」「不安定」「衝動的」など、「愚者」を意味する。
 実に象徴的だ。


※壮大な叙事詩「二千年…若しくは…ニ万年後の君へ…」はこちら
「二千年…若しくは…ニ万年後の君へ…」Linked Horizon(YouTube)


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2 コメント

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連載・コミック・アニメ (TEPO)
2023-12-04 17:21:58
エンディングテーマについて考察されたのですね。
「連載」では「鳥が飛んできてミカサのスカーフを巻く」場面で終わっていましたが、その後の部分は「コミック」で加筆されたものでした。
私も「子供を連れてエレンの墓参りに来ているふたり」はミカサ・ジャン夫妻だと思います。
アルミンにはアニがいるので、ミカサのエレンに対する思いを包み込めむことのできる男性はジャン以外には考えられないでしょう。
我が家では「犬を連れた少年」を「始祖エレン」と呼んでいます。
つまり、それから彼は始祖ユミルと同じ事を繰り返すことになる暗示だと理解しています。

ところで、原作(漫画)とアニメとの変更点について考えてみました。
本作は基本的に壮大な「泣いた赤鬼」物語。
「青鬼」エレンの死と同時に、エレンによって消去されていた「赤鬼・エレンストッパーズ」全員の記憶が戻り、エレンの本心を知る、という展開でした。
アニメでは、「赤鬼」代表アルミンとエレンとが「道」で交わした対話がかなり拡充されていたように思いました。
アルミンは「地鳴らし」の即時停止を主張するのに対して、エレンは厳然として「お前たちが救えるのは(外部世界の人口の)2割までだ」と言い放ちます。
この「2割」をめぐるやりとりは何度も繰り返されて強調されています。
さらにエレンは、外部世界の文明水準を引き戻す(遅らせる)とも言っています。
エレンには、「赤鬼・エレンストッパーズ」の活躍による「地鳴らし」終結後に残された外部世界とパラディ島との間に「パワーバランス」が成立するためにはそれだけのハンディが必要だ、とする冷徹な現実主義的判断があったのでしょう。
無論、アルミンはほぼ全能を手にしているエレンの主張を受け入れる他は無く、「赤鬼組」にも100パーセント「人類の救済者」として胸を張ることができない「負い目」が残ることになります。
この「負い目」の意識は、外部世界からの和平大使団となったエレンストッパーズたちの発言にも、またキヨミ様と共に彼らをパラディ島で迎えるヒストリア女王の雰囲気にも影を落としていました。
象徴的なのは、「その後の外部世界」を描いた一コマ。
原作漫画では、平和な都会の中でガビとファルコのカップルに付き添われた車椅子のリヴァイが悠然と新聞を読み、ビジネスマン風のスーツに身を包んだオニャンコポン―この人は終始「良識人」でしたね―が颯爽と歩いていました。
しかし、アニメでは外部世界の描写は難民キャンプでのボランティア活動。
車椅子のリヴァイも子どもたちにキャンディを配る「奉仕」に勤しんでいました。
外部世界のダメージを強調するためでしょう。

エレンの死と地鳴らし停止後の場面は、漫画原作版の「風の谷のナウシカ」の最終場面を彷彿していました。
「腐海生態系との和解」という形でそれなりに美しくまとめたアニメ版とは異なり、原作の「ナウシカ」はより大きく深刻な世界観をもった物語でした。
ナウシカは巨大バイオコンピュータ(旧世界人類が人類生存のために作ったシステムで、それまで人々を「神」として支配してきた)を破壊し、そこでも本作同様、破局を生き延びた人々が過去の敵対関係を超えて手を取り合うという結末でした。
ナウシカは一応「プラスのヒロイン」―もっともバイオコンピュータの破壊については読者の間で賛否両論がありました―でしたが、本作の「青鬼・エレン」は「マイナスのヒーロー」でしたが。
返信する
ナウシカと進撃の巨人 (コウジ)
2023-12-05 10:14:48
TEPOさん

いつもありがとうございます。

「進撃の巨人」についてはいずれ書こうと思っていて、そのまま時が経ってしまいました。
・あの巨大ムカデは何か?
・始祖ユミルはミカサに何を見ていたのか?
・記憶とは何か?
このあたりをいずれ書こうと思っています。

>彼は始祖ユミルと同じ事を繰り返すことになる暗示だと理解しています。
ここは人に拠っていろいろ解釈が出来る所ですよね。
僕は、タロットカードの正位置が示す「無限の可能性」という部分に期待して、もしかしたら少年は憎しみ合いではない別の道を選ぶのではないかと考えたりもしています。

エレンとアルミンの会話は論議を呼んでいる所ですよね。
原作では「僕たちのために殺戮者になってくれてありがとう」
これだと、アルミンが殺戮を肯定していると誤解される可能性があるので、アニメでは「これは僕たちのやったことだ。地獄で会おうエレン」に変更されました。
アニメのせりふの方が、
>100パーセント「人類の救済者」として胸を張ることができない「負い目」が残る」こと
を的確に伝えています。

少し逸れますが、「どうする家康」で言えば、エレンとアルミンの関係は家康と本多正信ですね。
報復されないための人類の8割の削減は豊臣家の滅亡に通じるものがあります。

キャンディを配るリヴァイは「外部世界のダメージ」を描くと共に、リヴァイの別の面を描きたかったのでしょうね。
掃除好きのリヴァイは結構人気なようですし。

「ナウシカ」の裏設定は「旧人類がつくった巨大なバイオコンピュータ」だったんですね。
「進撃の巨人」で言えば「巨大ムカデ」に該当するのかもしれません。
僕は「巨大ムカデ」を「生命力」「生きて増殖して種を保存する存在」として解釈しているのですが、これを「種の保存の遺伝子」と考えると、「バイオコンピュータ」と言えるのかもしれません。
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