平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

龍馬伝 第43回「船中八策」

2010年10月25日 | 大河ドラマ・時代劇
 船中八策で<政治家>になった龍馬(福山雅治)。
 「みんなが笑って暮らせる世の中を作る」では、ただの<理想家>ですからね。
 その理想を実現するための政策や戦略がなくてはただのウソつき。
 この点で龍馬は、政策→船中八策、戦略→大政奉還、の両方をしっかり持っている。

 ただ理想を実現するのは難しい。
 鳩山元首相だって、<友愛社会>や<普天間基地県外移設>という理想を打ち出したが、いずれも頓挫してしまった。
 それは龍馬も同じ。
 理想の実現には必ず抵抗勢力がいる。
 まずは徳川幕府。
 中岡慎太郎(上川隆也)や木戸(谷原章介)が言ったように、権力・既得権を持つ者はなかなか手放したがらない。
 現代で言えば官僚の既得権。

 また理想はそれが突飛であればあるほど、実現は難しくなる。
 <武士階級をなくして平等な社会を築く>
 この結果、龍馬は徳川幕府だけでなく、武士階級まで敵にまわしてしまった。
 上士であることにこだわり、その既得権を守ることに汲々としている後藤象二郎(青木崇高)が、なぜ船中八策に賛同したかは疑問だが、武士階級の反発があることは必然。
 だから龍馬は暗殺されてしまった。

 そしてこの対立は明治の西南戦争まで続く。
 話は少し逸れるが、大久保利通という人物は大した政治家だと思う。
 何しろ武士をなくし、藩をなくしてしまったのだから。
 今で言えば、官僚の既得権を無くし、地方分権を成し遂げたようなもの。
 大久保は西郷などと比べて人望がなかったようだが、それにしてもよくやった。
 結果、反発を買い、紀尾井坂で暗殺されてしまったが。
 大久保はもっと評価されていい。

 ということで龍馬がやろうとしたことはあまりにも早過ぎて、大久保の時代になるまで待たなければならないことだった。
 西南戦争ほか幾多の血を流す必要もあった。
 理想とそれを実現していくための現実は大きく違うのである。
 幕府を無くすのだって、大政奉還は成し遂げられたが、結局は戊辰戦争で血を流すことになってしまった。
 しかし、龍馬のように理想を持つことは必要。
 それがたとえ徒手空拳のドンキホーテのような戦いであったとしても。

※追記
 薩土盟約。
 外交交渉でしたが、薩摩の方がしたたかでしたね。
 <大政奉還>に賛成しておいて、もし成し遂げられなかった場合、土佐が倒幕戦争に参加する。
 薩摩にしてみれば<大政奉還>などあり得ないと思っているから、事実上、土佐に倒幕戦争参加を約束させたことになる。
 まさに肉を斬らせて骨を断つのしたたか外交。
 もっとも歴史は薩摩の思惑どおりにならず<大政奉還>を選んでしまったが。

 ちなみに僕は龍馬暗殺の黒幕は大久保だと思っている。
 自分の描いたシナリオを次々と書き換えていく龍馬が邪魔になったのだ。
 先程評価した人物だが、こういった闇の面も含めて興味深い。
 作家の方で大久保を主人公にした幕末ものを書かれる方はいないだろうか。

※追記
 船中八策には龍馬が関わった人物がすべて関わっていた!
 木戸、横井小楠、吉田東洋、高杉、武市、勝、久坂、河田小龍。
 こういう作劇になるなら、もっとこれらの人物と龍馬の関わりを描いておけばよかったのに。
 横井、久坂、河田はドラマ上は確か1回ぐらいしか会っていない。 


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2 コメント

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今回だけを取れば (TEPO)
2010-10-25 20:24:07
今回だけを取るならばここ数回と同様になかなかに「格好いい」龍馬がよく描けていたと思います。特に「船中八策」は龍馬の生涯の集大成とも言うべき事跡であり、全編最大の盛り上がりと言ってよいでしょう。

ところが皮肉にも
> 船中八策には龍馬が関わった人物がすべて関わっていた!
>こういう作劇になるなら、もっとこれらの人物と龍馬の関わりを描いておけばよかったのに。

龍馬の人生の集大成なるがゆえに、本作全体の構成の弱さが出てしまった感じです。
本当だったら-龍馬が関わった人物がすべてしっかりと描き込まれていたならば-一人一人の名が挙げられるところで回想と相俟って「ぐっと」感動を呼ぶ筈だったのですが。
結局、連続物である「大河ドラマ」としての出来が問われてしまった感じです。
返信する
龍馬の成長 (コウジ)
2010-10-26 10:18:48
>一人一人の名が挙げられるところで回想と相俟って「ぐっと」感動を呼ぶ筈だったのですが。

まさにそうですね。
大河ドラマは主人公の一生、つまり成長を描くわけで、今回は龍馬の成長の過程がよく見えないんですね。
成長には人と出会って何を学んだかということが必要だと思うのですが、それが薄い。

「篤姫」なんかは、それがよく描けていました。
実の父親、斉彬、幾島、夫の家定など、それぞれが篤姫という人間を作っている。
ところが「龍馬伝」はどうも龍馬を取り巻く人間関係が薄い。関わっているのですが、他人がどう龍馬の骨の髄までしみ込み、血肉になったのかがわからないんですよね。
だから、シーズン3と4の間の龍馬には著しい成長がありましたが、それがなぜ、いつなされたのかがわからない。

もっとも「天地人」の兼続は一生成長しなかったですからね。ずっと青年のまま。
「天地人」はある意味すごい作品です。
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