イスラム国に対する空爆支持は正しい外交政策か
邦人殺害予告の猶予期間とされた72時間が経過した。
現段階で事態の変化を伝える情報は報じられていない。
邦人の無事救出が実現することを願う。
安倍首相は昨年9月にニューヨークでイラクのマスーム大統領と会談した際、
「日本は,イラク政府も含む国際社会のISILに対する闘いを支持しており,ISILが弱体化され壊滅されることにつながることを期待する」
ことを表明した。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/me_a/me2/iq/page1_000073.html
また、この直前、安倍首相はエジプトのシシ大統領としている。
日経新聞はこの会談について、
「首相「空爆でイスラム国壊滅を」 エジプト大統領と会談」
の見出しで、次のように伝えた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDE24H0A_U4A920C1EAF000/
「安倍晋三首相は23日午後(日本時間24日朝)、エジプトのシシ大統領と会談し、米軍による過激派「イスラム国」掃討を目的としたシリア領内での空爆について「国際秩序全体の脅威であるイスラム国が弱体化し、壊滅につながることを期待する」と述べた。」
安倍首相は、イスラム国(ISIS=ISIL)を空爆によって壊滅することを支持することを明言してきた。
こうした経緯があるなかで、安倍首相は1月17日、エジプトで開かれた「日エジプト経済合同委員会」で中東政策について、次のようにスピーチした。
「イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。
地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/me_a/me1/eg/page24_000392.html
安倍首相は
「ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」
と述べた。
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こうした経緯をたどると、安倍首相はイスラム国を空爆によって壊滅することを支持するとともに、イスラム国と戦う周辺国に資金支援をする意思を示したということになる。
邦人に対する殺害予告は、こうした安倍政権の対イスラム国外交の結果としてもたらされているものと理解することができる。
外国人を人質に取り、殺害予告によって身代金を要求する行為は是認されるものではないが、日本の主権者は安倍政権の外交政策の是非を論じ、その方向を是正する必要がある。
米国のブッシュ大統領は、2001年9月11日の、いわゆる「同時多発テロ」が発生した際、間髪を入れずに、
「これは戦争だ」
と宣言した。
これ以降、米国は「テロとの戦い」を戦争推進の大義名分に掲げてきた。
ブッシュ大統領の対応は、あらかじめ用意された対応であったかのように映った。
9.11の「同時多発テロ」については、無数の疑惑が浮かび上がっている。
そして、その謎はいまなお解明されていない。
米国はこの「同時多発テロ」をテコとして活用するかのように、その後のアフガン侵攻、イラク戦争、イスラム国爆撃などの措置に進んできた。
日本は2003年の米国によるイラク侵攻に際して、国連が米国の突出に反対意見を表明するなかで、いち早く、米軍の侵攻を支持することを発表した。
米国はイラクが大量破壊壁を保有していることを根拠にイラク侵攻を開始したが、結局、イラクから大量破壊兵器は発見されなかった。
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イラク戦争で発生した米兵の死者は4000人強とされている。他方、イラクの民間人の死者は世界保健機関の調査で15.1万人、PLOSメディシンジャーナルの調査で50万人とされている。
つまり、米軍を中心とするイラク侵攻により、イラクに住む罪なき市民が多数殺戮されているのである。
このことは、イスラム国に対する米軍等による空爆でも同じことが言える。
空爆で犠牲になるのは、イスラム国の指導者だけではない。
イスラム国が支配する地域に在住する罪なき市民が犠牲になっているのである。
イスラム国に対する空爆を実行しているのが、豪州、ベルギー、カナダ、デンマーク、フランス、オランダ、英国、バーレーン、ヨルダン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、そして米国を含めた「有志連合」である。
安倍首相は日本もこの「有志連合」に名を連ねたいとの願望を有しているように見えるのだ。
私たち日本の主権者は、日本の中東外交の基本を論じて、日本として進むべき道を定める必要がある。
日本は平和憲法を有し、戦争にはよらない、平和解決の道を探るうえでリーダーシップを発揮するべきである。
安倍首相が示す、突出した、暴走とも言える対外政策姿勢が今回の事件発生の一因になっている点を見落とすわけにはいかない。