推奨本朗読】衆議院議員石井紘基著『日本が自滅する日「官僚経済体制」が国民のお金を食い尽くす!』(PHP2002年1月23日発行)
第四十九回目朗読 (2019.03.04)
第二章 経済むしばむ“官企業”―特殊法人と公益法人など (P112-186)
http://www.asyura2.com/09/senkyo68/msg/1067.html
第二節 特殊法人は法的には幽霊だ (P122-130)
●世界一の住宅ローン会社 - 住宅金融公庫 (P139-142)
住宅金融公庫は昭和二五年、戦後の厳しい住宅事情の中で、国民にせめて住
む所をと、床面積一〇〇平方メートル以下の家を建てる資金を貸す制度として
発足した。こうした事業は発展途上の時期には有効な政策だが、経済の成熟化
とともに民間にゆだねるのが普通だ。
アメリカを始めとする多くの資本主義国では、一般金融とともに住宅融資も
普通の銀行の仕事になっている。政府はせいぜいその保証なり、税制上の措置
を講じるなどをして、あくまで 「政策」の城を超えないようにしている。
しかし、政府(行政)によるビジネスは、政治家にとっても官僚にとっても
うまみがあるので、なかなかやめられない。住宅金融公庫も旧住都公団とのコ
ンビネーションで、どんどん縄張りを広げていった。とくに高度成長からバブ
ル期には乗りに乗っていた。
昭和五〇年には住宅リフォームにも金を貸すようになり、昭和六〇年には高
規格住宅、昭和六二年にはセカンドハウスもOKに。さらに平成六年になると面
積を二八〇平方メートルまで広げたのである。
そうなると次々に新たな“理論”が必要になる。いわく、「質の高い住宅」
「居住水準の向上」「長寿社会への対応」など、もっともらしい口実がつくら
れた。注文住宅、ビル、マンション建設、建売住宅、財形住宅、市街地再開発
まで何でもござれ、広さ・規模無制限、融資対象は個人でも公社でも再開発組
合でも、みんないらっしゃい、という具合で住宅、ビル建設など不動産の総元
締めとなり、東京都文京区の後楽園の隣に地上一六階、地下二階の超近代的本
社ビルを持つに至った。銀行にはローン窓口や査定などをやらせて少々の手数
料をくれてやる。そして、若干のローン貸しのおこぼれを銀行にも出せるよう
にしてやっている。
いまや、住公 (住宅金融公庫) の誇り高きキャッチフレーズは 「住ま
いに関するあらゆるニーズに対応する公庫」だ。平成八年三月まで四六年間の
融資実績は、戸数でじつに一五四七万戸。これは戦後建設された全住宅の三四
%に相当する。
こうしたなかで、住公の財投からの借金残高は平成一〇年度末で七八・五兆
円に達した。平成八年には六四兆円だったから二年ほどで二四兆円以上も借金
が増えたのだ。
年間の運営はどうやっているかというと、収入としては、財投からの約一〇
兆円の借り入れと、過去の貸し付け分の返済受け入れが六兆円弱ある。計一六
兆円である。
それに対して支出は、ローンの新規貸し付けが二兆円強、借入金の返済が利
子を含めて八兆四〇〇〇億円の計一九・五兆円となっている。これでは経費も
出なければ二五〇人の人件費も出ないから、国から利子補給金の名目で年に四
四〇〇億円の補助金を受けとる。
それでも毎年多額の損失金が出て、立ち行かなくなったので、平成九年末の
特別損失金六七一〇億円を政府予算に計上した。数年前にも損失金の“たまり
〟を税金で処理したが、またしても“たまり”が膨らんでしまったのだ。これ
らの特別損失金は向こう一一年間にわたって分割計上するから、その間の金利
は一二〇〇億円くらいになるはずである。したがって、平成一九年の時点にお
ける特別損失はまだ実質八〇〇〇億円あると言える。
住公は平成三、四年頃から「ゆとりローン」を大々的に売り出した。「ゆと
りローン」とは、当初五年間の返済額を安くして、六年目から返済額がハネ上
がっていく制度である。「六年後には給料も上がるから」といわれ、念願のマ
イホームほしさに不安を持ちながらも口車に乗った利用者は多い。しかし、六
年目がくるのは早い。その間に子どもはできるわ、税金なども増えるわで、返
済できなくなり、六ヵ月以上返済が滞っている延滞件数は二万件、三四〇〇億
円である。返済不能になり、公庫住宅保証協会の代位弁済に持ち込まれたもの
が約一万件、一五〇〇億円を超えた。
住公のもう一つ大きな問題は、最近の低金利で、住公の金利よりも市中金利
の方が大幅に安くなった結果、ローン利用者の多くが他の金融機関から借り換
えをして住公に繰り上げ返済していることである。平成七年以降だけで二〇兆
円も繰り上げ返済をうけた住公は、その金を財投に返して支払い利息の負担を
軽くしたいところだが、財投は繰り上げ返済を認めない制度になっているた
め、住公は借りた当時の高い金利を支払い続けなければならない。
こうした条件は他の特殊法人などでも同じで、くしくも、政府機関だけが
「巨額資金の長期連用ができる」との謳い文句のまやかしが証明されてしまっ
た。何のことはない、穴を開けても税金で補填してしまうことが前提の「トリ
ック」に過ぎないのだ。
住公に投入された税金は表面だけでもすでに七兆四三〇〇億円で、毎年一〇
兆円規模で膨らみ続ける財投への借金残高は、まもなく八〇兆円に達する。も
ちろん、財投から借り入れたお金の多くは、住宅ローンとして国民に貸し付け
ているので、これが、そのまま不良債権になるわけではないが、住公の仕組み
そのものが破綻していることから、借金の増大はさけられない。
今後、毎年五〇〇〇~六〇〇〇億円の税金を注ぎ込んだうえに、なおかつ、毎
年生ずる損失金が千数百億円出るだろう。私の予測ではさらに損失金がたま
り、住公が存在する限り、限りなく税による手当てが膨らむはずだ。
(続く)