米 露がシリアでの停戦に合意したが、その一方で戦争継続を目論むサウジとイ
スラエルが秘密会談
2016.03.03
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201603030001/
イスラエルの高官が率いる代業団が1月の後半から2月の前半、秘密裏にサウジア
ラビアの首都リアドを訪問し、サルマン・ビン・アブドルアジズ・ア ル・サウ
ド国王をはじめとする王室のメンバーと会談したという。その後にサウジアラビ
アのアデル・アル・ジュベイル外相がハ リド・アル・フマイダン総合情報庁
(GIDまたはGIP)長官を伴ってイスラエルを極秘訪問、シリアやレバノンでの軍
事作戦やイ ランに対する工作などが話し合われたという。話し合いの中でサウ
ジアラビア側はパレスチナでイスラエルが何をしようと気にしないとも口にした
ようだ。
こうした動きの一方で、ロシアとアメリカも接触していた。昨年9月30日にロシ
アが始めた空爆が効果的で、シリアに侵略していたアル・カイ ダ系武装集団 や
そこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILなどとも表記)の戦闘部隊が壊
滅的な打撃を受けただけでなく、トルコからシリアへ 延びていた兵 站線やシリ
アやイラクで盗掘された石油をトルコへ運ぶルートも寸断され、侵略勢力(アメ
リカ/NATO、サウジアラビア/ペルシャ湾岸産油 国、イスラエル など)の予想
を上回るスピードで崩壊していった。ワシントン・ポスト紙でさえ、ア レッポ
を政府軍がおさえたことで戦争自体の決着がついた可能性があると報道している。
当初、アメリカ政府は停戦を実現し、その間に侵略部隊の体勢を立て直そうとし
たようだが、間に合わくなり、国連主導の和平交渉は2月3日に 中断した。ア メ
リカ支配層が国連へ事務次長として送り込んだジェフリー・フェルトマンが体制
転覆工作に深く関わってきた人物だということは本ブログでも指 摘したことが
ある。
侵略勢力としては、自分たちの侵略軍への支援は継続したまま、ロシアの攻撃を
止めさせて戦況を好転させたいところだろう。軍事攻撃で民主化 はできない、
平和はこないという主張はもっともらしく聞こえるが、侵略軍に対する外国勢力
の支援に触れないなら、単なる侵略の応援団にすぎない。
本ブログでは何度も書いているが、アメリカ軍の情報機関DIAでさえ、2012 年8
月に作成された報告書で、 反シリア政府軍の主力はサラフ主義者、ムスリム同
胞団、アル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラと実態は同じだとしてい
る)であり、西 側、ペルシャ 湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているとし
ている。しかも、報告書が作成された当時にDIA局長だったマイケル・フリン中
将はアル・ジャ ジーラに対 し、IS の勢力が拡大したのはオバマ政権が行った
決断によるとしている。また、ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官は
CNNの番 組で、アメリカの友好国と 同盟国がISを作り上げたと語っている。
国連が停戦交渉を中断する一方、2月10日にヘンリー・キッシンジャーがウラジ
ミル・プーチン大統領と会談するためにロシアを訪問、2月22日 にアメリカ政府
とロシア政府はシリアで2月27日から停戦することで合意したと発表した。しか
も、ロシアの要求通り、アル・カイ ダ系武装集団、ダーイッシュ、あるいは国
連がテロリストと認定しているグループに対する攻撃は継続することが認められ
ている。キッシンジャー の動きから考えて、全面核戦争をどう考えるかでアメ
リカ支配層は割れているようだ。
サウジアラビア、イスラエル、さらにトルコやアメリカのネオコンも停戦をつぶ
し、どうにかしてアサド大統領を排除し、傀儡政権を樹立させた がっている。
石油戦略、大イスラエルの実現、オスマン帝国の復活など思惑はいろいろだが、
シリアやイランの現体制を破壊したいという望みは同じだ。
サウジアラビアはトルコへ戦闘機を派遣、自国の北部では大 規模な軍事演習を
実施、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、パキ
スタン、マレーシア、エジプト、モロッコ、ヨルダン、スーダン、 そして勿論
ト ルコも参加している。サウジアラビアからは、パキスタンから核兵器を購入
済みだという話も発信された。とにかく軍事的な緊張を高めようとして いる。
サウジアラビアとイスラエルとの同盟関係は昨日今日に始まったことではない。
前のGID長官、バンダル・ビン・スルタンもイスラエルを秘密 裏に何度も訪 問
していた。イランやシリアなど中東情勢について話し合ったと言われているが、
この2カ国にアメリカを加えた「三国同盟」は遅くとも1970 年代の終盤に 始
まっている。
ジミー・カーター政権で大統領補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーの戦略
に基づいてワッハーブ派/サラフ主義者やムスリム同胞団を中心 とする武装集
団が編成され、CIAが戦闘員を訓練、武器や兵器を供給、資金源として麻薬密輸
の仕組みも作り上げられている。(詳しくは拙著『テ ロ帝国アメリカは21世紀
に耐えられない』を)
2007年3月5日付ニューヨーカー誌にシーモア・ハーシュが書いた記事によると、
ア メリカはサウジアラビアやイスラエルと共同でシリア、イラン、そしてレバ
ノンのヒズボラに対する秘密工作を開始していた。その手 先がワッハーブ派/
サラフ主義者やムスリム同胞団だ。
アメリカのファシズム化を一気に進めただけでなく、世界規模で侵略戦争が始ま
る切っ掛けが2001年9月11日の出来事。西側の政府や有力 メディアは封 印して
いるが、この攻撃ではサウジアラビアやイスラエルの関与が疑われ、当然、疑惑
の目はこうした国々と同盟関係にあるネオコンにも向けられ ている。そう した
疑惑を持つ人が増えているひとつの結果が大統領選挙におけるドナルド・トラン
プの善戦だろう。