辺野古訴訟和解は誰にとって都合の良いものか
沖縄県名護市辺野古海岸における米軍基地建設問題で国と沖縄県が対立している代執行訴訟で国と県の和解が成立した。
国は訴訟を取り下げて工事を一時中断する。
和解条項の最大のポイントは、
県が今後、辺野古沿岸部での埋め立て承認取り消しに関して新たな訴訟を提起して判決が確定した場合に、
「政府と県がその判決に従う」
とともに、
「その後も互いに協力して誠実に対応する」
ことが盛り込まれた点にある。
この点を踏まえると、今回の和解は、国の主張が押し通される結果を早期にもたらすものになる意味を有すると考えられる。
国と県が訴訟を応酬してゆく場合、問題の最終決着には多大の時間を要する。
さらに、辺野古米軍基地建設の設計変更を行う場合、知事が承認を下さなければ、工事はできない。
和解条項には、
辺野古沿岸部での埋め立て承認取り消しに関して新たな訴訟を提起して判決が確定した場合に、
「政府と県がその判決に従う」
ことを確認してしまっているため、仮に県が訴訟で敗れた場合に、辺野古基地建設を阻止する行動が
「和解に反する」
との批判を招きやすくなることが予想される。
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沖縄県の翁長雄志氏の公約は、
「辺野古に基地を造らせない」
である。
この公約に対する行動の評価は、
「辺野古に基地を造らせない」
公約を守るために、最大の力を注いだのかどうかによることになる。
今回の和解で、工事は一時中断されることになるが、
最終的に辺野古に基地が造られてしまう
のなら、意味はない。
昨年8月から9月にかけて工事が一時中断されたことがあったが、一時中断以上の意味はなかった。
この時期、日本国内で最大の問題になったのは、安保法制=戦争法制だった。
安倍政権は戦争法制強行制定と沖縄問題の同時進行を嫌い、沖縄問題をこの期間だけ鎮静化する方策を講じたものと見られる。
今回は、今年夏に参院選と沖縄県議選があり、この選挙に向けて、基地阻止勢力がさらに勢力を拡大することを阻止するために、やはり、
この期間だけ工事を中断する
方策を講じたものと見える。
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辺野古基地建設阻止を主張してきたメディアは、今回の和解成立をプラスに評価する論説を提示しているが、問題の本質を見落としている。
問題の本質とは、
「辺野古に基地を造らせない」
公約が守られるかどうか。
その一点にある。
国と県が対立し、県知事が
「辺野古に基地を造らせない」
ためにあらゆる手段を、もっとも効果的に活用することが、
「辺野古に基地を造らせない」
結果を実現するためには、最も有効である。
「訴訟を仕切り直しして、その訴訟の判決が示されたら、その判決に従う」
ことを内容とする和解に応じることは、
「辺野古に基地を造らせる」
結果につながる可能性を著しく高める行動であると考えられる。
評価が定まるのは結果が判明してからということになるが、仮に
「辺野古に基地が造られる」
結果が生じる場合には、今回の和解案受け入れも、その重要な原因のひとつになったとの評価を受けることを避けることはできない。