「人生80年でもカネは足りないかと思っていたのに、政府が突然言い出した100年なんてことになったら全然足りない。「長生きしすぎ、食えなくなったらどうしよう」という心配で年金まで三割預金しようと行動する老人が増えています。1829兆円の個人資産が一向に使われません。日本は世界で一番、個人がカネを持っている。しかし、高齢者の多くは何故か暗い顔をしている。イタリア人は死ぬとき貯金が1銭でも残っていると「もったいないことをした」と考える。宵越しの金をたんまり持つ日本人の国民性と、権力者を忌み嫌う習性が日本の空気を悲観的にしています。個人レベルで空気を変えていくしかありません。
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日本銀行が先月27日に発表した2018年1-3月期の資金循環統計によると、家計が保有する金融資産残高は3月末時点で前年比2・5%増の1829兆円だった。年度末の残高として過去最高を更新した。
そのうち、現金・預金の残高は961兆円と約52%を占めた。相変わらず、現金・預金の増加が続いている。これまで1200兆円だ、1500兆円だと騒がれていた個人の金融資産は、ついに1800兆円を超えてしまったわけだ。
この1800兆円のうちの1%、18兆円でも市場に出てくれば(購買に回れば)、消費税を7%減額したのと同じ効果があり、日本の景気は大いに刺激されるはずだ。しかし、金融資産のかなりの部分が、0・1%ほどしか金利のつかないところに置かれている。貯金を少し持っていても、増えている感覚がないので、人々は使う気にならないのだ。しかも、政府が突然「人生100年時代構想」と言い出したので、ますます使えなくなる。
私の同年代の友人たちの多くは、「人生80年でもカネは足りないかと思っていたのに、100年なんてことになったら全然足りない。大前、おまえは何でそんなにカネを使うことができるのだ。バイクで日本全国を回っている場合じゃないだろ」と、余計なお世話のイヤミを言ってくる。
現在、日本人は、貯金、年金、そして保険で、三重に老後に備えている。しかし、それでも不安だ、ということで年金の3割近くを貯金に回している。こんな国、世界にない。したがって、亡くなったときも、使わずに残された資産が世界で一番多い。イタリア人は死ぬとき貯金ゼロ、が理想だ、という。それで持ち金を全部バケーションなんかに使って人生をエンジョイする。
日本人はなぜこんなふうに貯めるのか。政府を信用していないからだ。それで、いつも将来を悲観して、おびえた生活をしている。これがカネが市場に出回らない理由になっている。
この問題を解決するには、思い切って、「最後は国が全部、面倒をみる」と宣言するしかない。「大前研一ライブ」から抜粋