福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

今日は応和の宗論の行われた日

2024-08-21 | 法話

応和の宗論

応和三年963八月廿一日から五日間、村上天皇御願の『法華経』書写の完成にあたり、宮中清涼殿に南都北嶺の碩学各10人を招いて『法華経』の義理を講ぜしめた際、法相と天台の両宗間で行われた教義論争。天台宗は「一切皆成」を主張、南都の法相宗は五姓各別(成仏しないものがある)を主張。講経は毎日朝夕2座行われ、両方から講師と問者が相互に出て論義問答したが、第3日朝座に天台の良源が南都の法蔵を論伏、第5日朝座には南都の仲算が天台の寿肇を痛論、ついに勅令により同日夕座には良源と仲算が激論を戦わせた。『元亨釈書』巻4、『扶桑略記』巻26などには、良源の勝ちとしてあり、『本朝高僧伝』や此処に出す『応和宗論日記』などには仲算の勝ちを伝えるが、勝敗は決しなかったというのが真相とされる。(密教辞典等)

『応和宗論日記』

「今応和宗論記を勘みるに我朝第六十二代村上天皇御宇、応和元年961辛酉夏四月二十八日叡岳良源、清涼殿に参じ綸言を蒙るの次いで六宗長者特に法相に付せられ不安の旨奏達し密かに天気を伺ふ。許容無きにあらず、之に依りて良源、同年五月十五日を以て華厳宗玄慶、三論宗壹定と相語ひ天奏を経んと欲し、頗る許容あり。早く奏聞を経らるべきと。良源敬白已上。諸宗状に依り各天奏を経る。華厳宗の奏状は応和元年八月八日を以て兵部卿親王に付す。三論宗の相状は同年十月三日を以て治部卿源朝臣雅信に付す。天台宗の相状は同年十一月六日を以て右近中将延光に付す。応和二年三月宣旨を諸宗に下されて云く、申状に依り聞しめすに其の理無きに非ざるが如し、但し宗に依り浅深あるべきか。各の勘文を進るのみ、宣旨を下さると雖も勘文進まずの間、応和三年六月五日に至って重ねて宣旨を下され云く、来る十九日御筆御経供養参勤宜し。六月十九日延引。七月十三日に成り亦七月十三日延引。八月十一日に至り左中辨文範朝臣傳宣、左大臣宣奉勅今月二十一日庚子臨時に清涼殿に於いて五箇日二十口僧を以て法華経を談じ導師をして其の義を釈せしむ。五箇日の問、都合十坐講聴各別其の僧名。

三論宗 観理 律師東大寺。 華厳宗 玄慶 律師東大寺。 法相宗 安秀 已講興福寺。法相宗 法蔵 已講興福寺。

法相宗 仁賀 辞退。 法相宗 湛照 東大寺。 法相宗 平州。 法相宗 千理 辞退。 法相宗 真歸 興福寺。

法相宗 仲算 興福寺。 已上十人、南都法相。三論・華厳三宗。

天台宗 禅愉 延暦寺。天台宗 良源 延暦寺。 智興 壽肇 。天台宗 聖救 延暦寺。 天台宗 千観 辞退。 天台宗 増賀 辞退。 天台宗 餘慶。 能恵。賀秀。已上十人。北京天台宗。 都合廿人の内、仁賀・千理・増賀・千観、四人辞退。仁賀の闕 蔵 薬師寺。千理の闕 千到 興福寺。千観の闕 崇壽 延暦寺。 増賀の闕 覚慶 延暦寺内。蔵祈又辞退 其の闕 三論宗 円芸 東大寺。

(応和三年963八月)廿一日 巳刻、発願導師 無量の義理を釈す、観理。問者 餘慶。 夕座 導師 法華経一巻を釈す。 問者 能恵。

廿三日、朝座導師 (法華経)第二巻を釈す 安秀。 問者 賀秀。 夕座 導師 法相宗 法蔵。問者 覚慶。

其れ第四坐の問者詞はく「応に一分無性の無の義を出すべし」。導師法蔵大法師、詞鉾森然、敢て寸揚なく釈経の詞,稍群萃に推す。公卿已下感挊餘あり。爰に天台の良源、横に一分無性なかるべきの義を述べ、論じて二宗に於いて盛んなり。時已に戌四點(20時半頃)に及ぶ。衆会の疲労を思ふ為、導師述ぶ。以てその由返答を為す。次回に致す。問者宣旨に依り平州問者と為す。良源、経を釈するの間、時已に未の四點(午前零時半)に及ぶ。此の間法蔵大師、昨日の答を出す。夕座導師禅愉、第五巻を釈す。 問者 真喜 譽有り。 夕座導師 湛然 第七巻を釈す。 問者 崇壽 闕請。夕座 第八座。 二條問、導師進んで云ふ。属累品 云々。問者 仲算 法相宗。朝座畢る後、問者を了遅殿に召す。蔵人頭延光朝臣仰云く、今朝の論議謂つべし甚だ優なる事、叡慮に叶ふ。頗る感歎を致す。須らく夕座論議重以て奉仕しべし。其の中、因明一条加問、但し深義を省く。近視聴を欲する者、是は帝王なり。夕座導師 聖教・天台宗、普賢経を釈す。問者 仲算 宣旨に依り重役と為る。 爰に律師観理 奏して曰く、因明は義旨幽微、猶難視聴望也。因明停止者、即ち坐中に於いて仰せて云、因明停者。問者往復の間、論は一分無性に及ぶ。仲算則ち前日の良源所出の悉有仏性の文、三顧四牒の証を牒し一々之を難じ、之を嘲す。良源口を杜(ふさ)ぎ、目を嘱めて坐す。殿上殿下感動せざる莫し。遂に廿五日に至り夜半文範の所に勅旨を下し仲算を玉座の下に召す。群臣合掌、天子坏を勧む。是に於いて仲算掌中に銀器を擎げ鳳闕に威儀を失す。爾より六宗長官を以て永く法相の宗を留む。更に他宗に移さず。兼ねて法相宗、権長者を補すべき宣旨下さる。若爾、応和の風、天台旗靡き、天暦の塵、法相論に克つ。若し時の邪正を明むる、謂つべし天台堕負也。なんぞ応和論議を失む。而して法相と同日而已。

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