福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

今日は大師が護命僧正の八十を賀する詩を作られた日です

2024-09-23 | 諸経

性霊集巻十、「暮秋に元興の僧正大徳(護命のこと)の八十を賀する詩」「それ天に翔けるの雁も次第を忘れず、地に蚊はうの螘ありもまた陳列を守る。いかに況や天地の最霊、含識の首たる誰か長老を尊び眉寿を貴ぶことを遺れんや。礼には郷飲を著し(礼記・郷飲酒義「郷飲酒の礼は長を尊び志を養ふ所以なり」)経には供宿と称す(月灯三昧経巻五「若し是れ耆宿ならば供養恭敬し頭面接足すべし」)、まことに以あり。
元興寺の大徳僧正、年八十に登んで智十二に明らかなり(十二部経)。無著・世親の論、奥を探り旨を諳んず。慈恩(法相初祖)・慧沼(法相第二祖)の章、文を括り、義を綜べたり。昼はすなわち筌蹄(経典)に対して食を忘れ夜はすなわち魚兎(経典の意味)を観じて寝を廃つ。このゆえに津を問うもの遠近に雲の如くに集まり、疾を懐くもの小長(老若)霧のごとくに合る。二美(福智)兼修し六度(六波羅蜜)つぶさに行ず。いいつべし佛家の棟梁、法門の良将なるものなりと。鋭鋒脱し易く、皐響すなわち達す(こうきょう、低い沢の鶴の声が天に届く)。弘仁の太上大僧都に抜きんで、天長の今、僧正に任ず。人よく法を弘むといふ、これを古に聞けり。道能く人を通すること今に見つ。貧道恭なく下菜(天子より賜る官位)に備って上聖に斎しからんことを思う。澆醨(ぎょうり)を礼儀に慨んで(礼儀の薄いことを痛み)、陵遅を道徳に悲しむ(道徳のすたれることをかなしみ)。この故に郷飲上歯の礼(長老を尊び祝う飲酒の礼)を取って大士供尊の義を仰ぐ。いささか二三子とともに茶湯の淡会を設け、醍醐の淳集を期す(最上の集めた会であることを期待)。この日、金風管に入り(秋風が竹に筒に入り)玉露菊に泣く(菊花の上の露は喜び饌の涙)、
闥婆(乾闥婆という伎楽神)楽を奏し、緊落(きんら・緊那羅)すなわち舞う。八音寥亮として四衆(比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷)味を忘る。これを言うに足らず・故に詠歌を事とす。乃ち詩を作っていはく、寂業の遺教(お釈迦様の教え)その人に転授す、三蔵古を稽え、六宗これ新なり。法相の将、師を推すに仁に当たれり(法相宗の師として推されて傑出している)。その体を瑚璉にしてその身を龍象にす(常に戒律を保って貴い僧となり)。弁は邪鍔をくだき、(邪悪な理論をくだき)、智は正因に明らかなり(仏法の正因縁を明らめている)。経を論じ論を講ずること、乍ときは秋、乍ときは春なり(年中である)。聴くもの市井のごとし。学徒雲の如くにいたる。著世(無著・世親)の幽趣、公にあらざれば陳べず。両帝仰止し(嵯峨帝・淳和帝はその徳を仰ぎ)、四衆漂津とす(拠り所とした)。名の賓は僧正(僧正として待遇されているが)実徳は佛に隣れり。ここに余、徳を尚んで饌(祝賀宴)を設けて賓を迎う。絲竹金土(金、石、糸、竹、匏、土、革、木の八音中の四音)鬼神を感動せしむ。怨親すでに歓ぶ、いかにいわんや昵懇をや。卓たる彼の人宝、謂ひつべし国の珍と。天長六年九月二十三日沙門遍照金剛上つる。」

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