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日々の恐怖 5月2日 国民休暇村

2013-05-02 19:20:03 | B,日々の恐怖









       日々の恐怖 5月2日 国民休暇村









 昨日の、Sこと僕の続きです。
これはSが社会人1年生として東京で就職し、そのT株式会社の新入社員研修中の話です。

 新入社員研修は4月1日から約2ヶ月かけて、博多から関東まで7ヶ所の研修地で行われた。
研修途中で逃げ出す者が出るほど研修は厳しいモノだった。
 社員は全国から集まってきており、自分の地元の近くになると逃げ出す者が出てくる。
登録外務員という国家資格を取得しなければ営業にはでられず、その為の勉強と「超」サラリーマンとしての肉体・精神造りという説明で参加させられていました。
一日に5~10キロのマラソン、最低1000回程のスクワットや腕立て伏せ、腹筋。
 研修期間中は直接女性との会話は一切禁止。
許されるのは電話のみ。
それを破るとクビ。
それは何の会社か解らないほど、心技体知全てを鍛える研修だった。
 研修地は全て国民休暇村。
博多→愛媛→香川→淡路島→和歌山→栃木→東京。
そしてあの忘れられない出来事はことも在ろうか、Sの故郷である淡路島でおきた。

 “S年の家・国民休暇村”

ここはSが小学校の時にも霊体験をしている場所でした。
近所にある戦没者慰霊碑は地元では有名な霊スポットであった。
 小学生の時は4人部屋。
しかし今回は120人相部屋の通称タコ部屋。
何の心配もしていなかった。
 タコ部屋の手前から1班から10班まで順に間取りして寝床を決定した。
1班から3班までの場所はかなり日当たりが悪く班員は皆嫌そうであった。

毎日5時半起床。
海までランニング、体操後、海に腰まで浸かって大声で自分の今の気持ちを叫ぶ「注魂」。
宿舎に戻り朝食。
午前中は勉強。
午後は5時までトレーニング、午後7時から10時まで勉強。

これが毎日休み無く続けられる。
そして異変が起きたのは2日目の朝だった。
 1班10人中8人、2班10人中9人、3班10人中5人が発熱し県立淡路病院に緊急入院した。
帰ってきた人事部の上司から効いた病名はコレラ。
Sが小学校の頃(30年ほど前)流行った病であった。
 現代ではほぼ見られることのないコレラがなぜ・・・??
しかしみんなあまり気にしていなかった。

 その日の夜、1~3班の空いたスペースを詰めて広々としながら寝床についた。
しかし翌朝、異変は再び起こった。
次の日の朝、昨日その場所で寝ていた班員が同じくコレラで緊急入院した。
そしてその運ばれたほとんどの班員が、

「 金縛りにあった。」
「 誰か居た。」
「 何か音が聞こえた。」

と口々に漏らしていた。
 夕方、班員全員で話し合い、

「 これはどう考えてもおかしい。」

という結論にいたり、霊感の強い班員を選抜し原因を追求するというプランを立てた。
 自己申告で霊感の強い10名の班員がそこで寝ることとなった。
Sは自己申告していなかったが、うちの班からは誰もいないということでその中の1人になってしまった。

pm10:00 消灯、皆眠れない。
pm11:00 懐中電灯の灯りでSは勉強していた。3人就寝。
am 0:00 6人就寝。
am 1:00 8人寝た。
am 2:00 2人でタバコを吸いに行く。
am 3:00 Sが最後に就寝。
am 4:00 Sは不思議な感覚に目がさめる。

 あまりにも目覚めの悪さに少し気持ちが悪かった。
目を開け上体を起こし辺りを見渡すと不思議なくらい静かであった。
誰も起きておらず、何も動いていない、かすかな物音や寝息すら聞こえてこない。
不思議な空間がそこには広がっていた。
 再度布団の中に入り眠り始めるとすぐに金縛りにあった。
凄く神経が研ぎ澄まされ、さっきまで聞こえなかった時計の秒針の音までが耳元で聞こえている感覚がしはじめた。
Sは金縛りにあうと、必ずこういう状態になる。
 3分ほどたった時、

“ ミシミシ、ミシミシ、ミシミシミシミシ・・・。”

Sたちの周りで誰かが畳を踏みしめながら歩いていた。
 しかし、Sはこういう事態には慣れていた。
それは思いこみ。

“ たぶん誰かが見回りに来てるんや!”

そう思いこみ、そのまま寝入った。
 朝起きると10人中5人が発熱していた。
まず10人で昨夜起こった事を話し合った。
 全員一致していたのは全員が金縛りにあい、誰かが周りをぐるぐる回っていたという事だった。
しかし発熱した5人にはそれ以上の異変が起こっていた。
 彼らの話を総合すると、

「 金縛りにあう数分前、窓の外を見ると割烹着を着た老婆がほうきを持ち、中をジロジロ覗きながら歩いていた。」

夜遅く大変だな、皆そんなぐらいにしか思っていなかった。
 しかしその老婆が通り過ぎた後、すぐに金縛りにあった。
何人かはすでにあの老婆がこの世の者では無いという気がしていたらしい。
 約3分後、僕たちの周りをその老婆が大きく大きく回っていた。
視界の端にかすかに割烹着や髪や手が見えた。
その時A班員とB班員は目を合わせお互いに事態を確認した。
 全員が怖くなり目を閉じていた。
しかし足音はすぐに近寄ってきたらしい。
それでも固く目を閉じていた。
 その後、全員に同じ事が起きた。

「 起きてんの解ってんねんでぇ~!!!!!!!!!」

耳元で老婆が、朝まで何度か間隔をおいて皆に呟いていた。
 皆に確認をしたところ同じセリフを言われたと言っていた。
言葉の語尾に「でぇ~」とつけるのは淡路弁で、知るはずもない僕以外の班員が口をそろえてその言葉を言っていた。
 皆で話をしていた時、班員の1人が、

C班員「 本当にいたかもしんねえじゃん!」

そう言い老婆が歩いていた窓際に近づいた。

C班員「 みんなちょっと見てよ!!!」

皆で窓際に近づき外を確認したところ、窓から地面までは軽く3メートルはあった。
 その後、会社は緊急に研修地を海辺に移しテントで研修を再開した。
それからは誰も発熱する事はなかった。
その研修地あたりは戦時中たくさんの死者が出たと言われており、未だに元弾薬庫なども残っている。




















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