大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 5月28日 写真

2013-05-28 19:54:13 | B,日々の恐怖







    日々の恐怖 5月28日 写真







 Tさんが写真の話を始めた。
よくある話なんだろうけど、実際に体験してみたら奇妙なことだった。
十数年前になるけど、仕事で現場監督やってて、工事現場の現場写真撮ってた。
 先輩のKさんの作業しているところを写真に撮ってその日に現像した。
次の日の夕方に写真整理しながら、その作業中のKさんの写真を見ると足がない。
それで、おかしいなと思って写真を調べた。
 立った状態で作業しているKさんの足は写真には写ってないけど、左右で作業している作業員の足はちゃんとある。
光の加減でこうなったと思いたかったが、心霊写真なんてよくテレビでやっている。
 隣の机に座るKさんが「どうしたん?」とオレに言ったんで、ヤバイかもと思って「別に・・・」と言って誤魔化し、その写真はKさんには見せなかった。
 でも、その作業中の写真は現場では重要な作業の写真だし、撮りなおしも効かないし何とかならないかと、いつもの写真屋に行った。
 それで、写真屋の社長に聞いた。

「 この写真何かおかしいよね?足がないけど。露出?」
「ちょっと、待ってて・・・。」

数分後、写真屋の社長が笑いながら、

「 これ、TV局とかに投稿すれば?たぶん、そんな写真。ははっ。」
「 まじで・・・?」
「 だって、Kさんの足だけ写ってないなんて考えられないし、Kさんの後ろにあるトラックはきれいに見えてる。
足だけが透けてる感じだよね。」
「 えー、勘弁してよ、もー。」

なんて言いながら、写真のネガを二人で凝視した。

「 やっぱりネガにも写ってないねー。」
「 写ってない。」

 結果を言えば、それから数日後、Kさんは飲酒運転で大事故を起こす。
両足が切断とかじゃなかったけど、とにかくKさんの両足の折れた大腿骨が、槍のようにもうすぐで肝臓に突き刺さる直前だった。
 たまたま、救急病院にいた当直の外科の先生が、交通事故で運ばれた血だらけの患者を運びながら、両足の位置がおかしいと考えて調べたところ、Kさんの両足は腰から上に随分とめり込んでいたそうだ。
オレはその話を明け方の5時に聞いて、寝ぼけた頭の中であの足のない写真を思い出す。
あの足のない写真はまだ会社のオレの机の中にしまったままだった。

「 実はこんな写真なんだけど・・・。」

会社の事務員に、神主の知りあいがいて、半信半疑でその写真を見せることにした。
もしかしたら、そんな写真を撮って、ほったらかしにしていたオレがいけないのかもしれないと思ったからなんだけど。
 神主はごくごくフツーに、

「 お祓いしなきゃね・・・。」

と、言いながらその写真とネガを丁寧に持ち帰ってくれた。
 後日、足のない写真はちゃんとお祓いした、とその神主から手紙が届いた。
手紙の最後のほうに、オレについて書かれていた。

「 T君はもう随分前に、事故で左足の大腿骨を骨折しましたよね?」

“ だから何なんだ?
もう随分前の話じゃないか?
十代の時に単車で事故っただけだろ?”

思い出したら止まらなくなった。
初対面の神主とやらに自分の過去を見られるなんて、って感じだった。
 神主はその手紙の最後に、

「 あなたの身近な親族で、足の不自由な人はいませんでしたか?」

と書いて、“?”でその手紙は終わっていた。
いたよ、じいちゃんが。
オレが生まれた時からずっと車椅子だった。
 じいちゃんの葬式の日に、生前ずっと愛用していたお茶碗をみんなの前で割った時、確かにまだ5才のオレの左ふくらはぎにその破片が刺さって3針縫った。

“ 何かあるのか?何かあるのか?
足のない写真を撮ったオレが悪いのだろうか?
Kさんにとって、そうなんだろうか?”

あれからKさんはずっと車椅子なんだ。
















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