大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 7月13日 牡丹

2013-07-13 18:03:29 | B,日々の恐怖




      日々の恐怖 7月13日 牡丹




 私の家の裏側にある小さな空き地(公共地)では、近隣の住民が勝手に隅の方を耕して土を盛って花壇にしている。
 そんな花壇の中の一つ、うちの庭のすぐ裏に、十年以上前に越した以前の隣の住人が残していった花壇に大株の牡丹がある。
毎年見事に花をつけるそれは、自分がバラを育て始めた数年前から私の疑問の種であった。
 2m×60㎝位の面積で盛り上げられた土に、キングローズと桃色の牡丹。
以前は白い牡丹もあったそうだが、それは何かの工事があった際に枯れてしまったらしい。
うちが越してきたのは18年程前だが、母いわく、その頃はまだ小さかったわねぇと。
 突然旦那が家出された隣の奥さんが気を紛らわそうと、それまで植えていた草花を一掃して、植えつけたばかりだったという。
越した頃、私は仕事を始めたばかりで忙しく、部屋の窓から裏を覗くことすらせず、私には紅白並んだ牡丹はおろか隣の住人の記憶さえない。
 誰もそのことに触れないが、手入れする人がいなくなってからは、近隣の誰かが剪定しているのだろう。
しかし、夏場あまり雨の降らない時期には、私も家の水遣りのついでに垣根の向こうにも散水してやることはあるが、それ以外特に水遣りの形跡を見ることはない。
 とすれば肥料など論外だ。
肥料喰いといわれる牡丹やバラを十年以上咲かせ続ける事が出来るなんて、どんな土を入れたのだろう。
これほど広いスペースに2株だけだから大丈夫なのかな。
 今年も牡丹は30ほどの大輪の花を株いっぱいにつけ、 桜の散った今、付近を散歩する人々の驚嘆と賞賛の声を一身に集めている。
間もなく隣のキングローズが、今度はその艶やかな濃緑の葉の間を、あでやかなローズ色のぽんぽんのような小さな花でびっしり埋めるのだろう。
 周りの住民は、ただ花を遠巻きに愛でるだけでそれ以上は触れない。
近くに新しい住民が越して最初の春、牡丹の説明をするたびに漂うわずかな緊張感がいったい何なのか、前の住人を知らない私が知る由などない。

















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