日々の恐怖 7月16日 隠れんぼ
Aさんと弟の姉弟が田舎の実家で経験した話です。
Aさんは子供の頃の夏休み、毎年田舎に帰っていました。
その田舎の家は農家で、明り取りの窓も小さく薄暗くだだっ広い家でした。
Aさんと弟は田舎に帰ると、毎日家で隠れんぼしたり虫取りしたりして、飽きることなく過ごしていました。
ある日、いつものように二人がただっ広い家の中で隠れんぼをしていた時のこと、Aさんは鬼で、隠れた弟を探していました。
しかし、探しても探しても弟は見つからず、もう15分は経過していました。
いつもなら弟は怖がりなのですぐに見つかるのですが、今回はめぼしい場所を探してもどこにもいないのです。
それで、Aさんは駄目もとで押し入れを探すことにしました。
すると、暗い所が大嫌いなはずの弟が押し入れの奥にうずくまっていました。
ようやく見つけたAさんはホッとして、
「 見つけた、早よ出てきい!」
と声を掛けました。
ところが弟は押し入れの奥から動かず、出てこようとしないのです。
Aさんは、
“ 返事もせずに、まだ隠れているつもりなのか・・・。”
と思いました。
それでAさんは苛つき、早く鬼を交代したい一心で押し入れの奥に手を伸ばし、見えていた弟の手を引っ張りました。
ところが弟はそれでもその場から動かず、逆にAさんの腕をうずくまったまま引っ張りはじめました。
Aさんがいい加減にしろと叱りかけた瞬間、
「 お姉ちゃん、どうしたん・・?」
背後から弟の声が聞こえました。
振り向くと、今にも泣き出しそうな弟が立っていました。
“ えっ・・・?”
とAさんが思った瞬間、押し入れの中の誰かはパッと手を離しました。
驚いたAさんは押入れの奥を覗き込んだのですが、もう誰もいなかったのです。
弟はAさんがあまりにも遅いので、心配になって隠れていた奥の部屋から探しに来たと言う話でした。
二人は、
“ 何か変だなァ~。”
とは思ったのですが、それにも懲りず、しばらく隠れんぼはやめられなかったと言うことです。
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