日々の恐怖 7月27日 野球部
私の高校時代の話です。
当時は、まだ昭和でした。
野球部の部室に遊びに行ったとき、なぜかマネキンの頭部が無造作にゴロンとありました。
「 何で野球部に、これがある訳・・?」
と部員(クラスメイト)に聞いたら、平然と、
「 帰って来るんだ。」
と言ってました。
不審に思って詳しく聞くと、どこに捨てても翌朝には部室にあるそうです。
そして、
「 こいつ、話せるんだぜ!」
と、意味不明なことも付け加えました。
「 はぁ・・・??」
私はその言葉に固まりました。
部員はマネキンのまだらになってる髪をつかみ上げ、
「 挨拶しろ!」
とマネキンに言っています。
はじめは私を担いでるのかと思いましたが、彼はマジでした。
もちろん、マネキンは話す訳がありません。
部員は、
「 恥かかせやがって!」
と床に叩き付けました。
あまりの部員のマジぶりに、
「 いつもなら話すのか?」
と聞いたところ、
「 ああ、片言だが少し話すんだ。」
と、マネキンが話さなかったため、少々ご立腹の様子です。
「 本当なんだぜ!」
と訴えかけて来る彼に、私は否定出来ませんでした。
「 まぁ・・、部員外の俺がいたからかもな・・・。」
と適当に合わせました。
私が、
「 このマネキン何で髪がまばらなんだ、どうせだったらお前と同じく丸坊主にしたら?」
と言ったら、部員が、
「 そいつ、バリカンで丸坊主にしたんだぜ。
まばらなのは伸びて来たんだ。
まったく、みっともねぇ・・・。」
マネキンを蹴りながら平然と言う始末でした。
野球部に遊びに行ったのは、これが最初で最後でした。
永久欠番のマネキンに聞きたい。
「 なぜ君は野球部に帰って来るんだ?」
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ