大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆分野を選択して、カテゴリーに入って下さい。

A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 12月1日 振り子

2015-12-01 18:55:50 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 12月1日 振り子



 都内に住む大学生のWさんの話です。
小さい頃おばあちゃんの家に1m60㎝くらいのでかい柱時計があって、その振り子の揺れる音が嫌だった。
普通の振り子は、

“ カッチ、カッチ・・・。”

って音を想像するだろうけど、おばあちゃんの家のは違っていた、でっかい振り子が、

“ ギィ~、ギィ~・・・・。”

って揺れる音がしていた。
 おばあちゃんの家ではいつも二階で寝てたんだけど、寝てる部屋の入り口のすぐ脇から一階への階段が伸びていて、階段を降りたすぐそこに柱時計があった。
だからいつも、夜寝静まると階段の方から柱時計の振り子の音が延々と聞こえてくる。
 その音だけで不気味かもしれないけど、自分が嫌なのは音そのものじゃなかった。
一階から二階への木製の階段を踏みしめた時の、

“ ギィ~、ギィ~・・・・。”

って音が振り子の音に似ていた。
だから、まるで誰かが階段を登って来てるみたいに聞こえる。
 でも実際は振り子の音だから、その音は延々と鳴り続ける。
真っ暗な中、聞こえ続ける音と何かが階段を登ってくるイメージを想像してしまって、いつもなかなか寝付けなかった。
少し怖かったけど、親と同じ部屋だったし、毎回だから慣れた。
 そして小学校の低学年で都内に引っ越しした。
その結果、おばあちゃんの家に行く機会はだんだんと減って行った。
 高校くらいになって久しぶりにおばあちゃんの家に行ったとき、柱時計が昔と同じ階段のそばにあった。
振り子の動いている柱時計に近付き、

“ あ~、この振り子の音が不気味だったんだよな・・・・。”

と思った。
 でも、柱時計の振り子の揺れる音はほとんど無かった。
耳を近づけると、

“ キィ、キィ・・・・。”

と小さく聞こえるくらいだった。

“ あれっ・・・?”

と思いつつ、音が鳴らなくなったのか、記憶が間違ってるのか少し考えた。
まあ、音が鳴らなくなったんだろうと考えた。
 次は階段を登ってみた。

“ ギィ~、ギィ~・・・・。”

“ そうそう、これこれ。”

こっちは記憶どおりの音だ。

“ 確かにこの音だな。”

とそのまま二階に上がり寝ていた部屋を確認する。
 階段からすぐそこの部屋の入り口、その近くで寝ていた。
振り向いて一階を見る。
柱時計が少し見える。
 なんか、思ったより遠い。
というか一階から二階まで聞こえる音ってありえない。
日常的にかなりうるさいはず。
 でも振り子の音がうるさいとかの記憶はない。
実際に昔、振り子の音が鳴っていたとしても、とても二階に届く距離じゃないし、思い返すと夜寝る時以外に振り子の音を聞いた事がない気がする。
 ただ確かに、眠る前に真っ暗な部屋で延々と聞こえる階段からの音は覚えている。
木材が軋むような、

“ ギィ~、ギィ~・・・・”

って音だ。
踏みしめてる階段と同じ音だった。
 一階に降りて、もう一度振り子の音を確認した。
音は当然ちがう。
 もう一つ気づいた。
振り子の揺れるペースが、眠る前聞いていたあの音よりずっと早い。
 あの音は、もっともっとゆっくりだった。
真っ暗な階段で延々と鳴っていた音は確かに耳に残っている。
そして、自分はなぜ振り子の音と思い込んだんだろう。










童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

-------大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ-------