日々の恐怖 12月24日 四国の老舗ホテル
会社員Sさんの話です。
10年前、外回りの仕事していて出張とか当たり前だった。
それで、いつものように仕事を終えた後、会社が提携している某四国の老舗ホテルに泊まった。
毎月のようにその県に行くと決まってそこに泊まっていたから、満室の時でも部屋を融通してくれるようになっていた。
いつもだと、シングルが満室だったらツインやダブルにシングル料金で格上げしてくれる。
しかし、常に即答なのに、その日は電話での空室の確認のとき、一瞬返事に間があった。
ホテルに着いて部屋を案内されたが、いつも泊まる部屋の場所とは違う方向だった。
まぁ、その時は満室なのを無理にあけてもらったんだなあ、という解釈をした。
部屋に入った印象と言うか、何と言うか、不思議なことに何故か窓が無い。
正確には、部屋の上の方に換気用の申し訳程度の小さな窓があるのみだった。
そのときは、ホテルが大通りに面しているから夜でもネオンが眩しいのでこういう部屋なんだ、と自分に言い聞かせた。
東南アジアに海外旅行に行くようになって熱帯の日差しを避けるため、窓のない部屋があるホテルが存在するってのは後で知ったことなんだけど。
出張旅費を浮かせて自分の金にしたいのと、酒を飲まないから出歩くこともなく、ホテルに着く前に買った弁当を部屋で食べていたとき、何だか奇妙な音が聞こえる。
田舎でテレビ局も少ないんで、テレビを消してから最初外からの音って思っていた。
その部屋にはラジオもあったけど、部屋についてからラジオなんて触っていない。
部屋の中から聞こえる気がしたが、エアコンを入れて部屋の気温の変化で、部屋の壁やベットが膨張や収縮して音が鳴ったんだと思った。
奇妙な音を聞きながら、
“ こういうのが、心霊番組とかで言うラップ現象なのか?”
と、怖いというより今起きている現象を自分なりに分析していた。
すると、光の玉のような物体が目の前を横切るのが見えた。
“ 錯覚か・・・?”
仕事疲れによる光が目の焼き付きか何かかと思ったんだが、目の焼き付きとかって、こう空間に浮かんでいるものが動いている様子がはっきり見えるものなのか。
その浮かんでいる物体が人の顔に見えたり、聞こえている奇妙な音が人の声に聞こえていたのなら、きっと怖がっていたんだろうが、目の前の不思議な現象を正直理解できないでいた。
ただ本能というか直感が、この部屋で今起きていることは何かがおかしいと思えた。
何だかわからないけど、とりあえず部屋を出ようということで廊下に出た。
隣の部屋に同僚が泊まっているのでそれとなく聞いてみたが、その部屋は特に何もないらしい。
結局、部屋に戻ってその奇妙な現象は収まっていたので、その部屋で寝ることにした。
その後、何回か同じホテルの別の部屋に宿泊しても、とくにこれと言ったことは無く、またいろんな場所でいろんなホテルの部屋に宿泊したが、あの晩の現象みたいなのに遭遇したことはない。
老舗ホテルなら、部屋での自殺や事件なんか過去にあってもおかしくはないのだろうか。
今はその老舗ホテルは廃業して建物は取り壊され、別のホテルが同じ場所に建っている。
肝試しとか嫌いな自分が、今まで体験した奇妙な経験3回のうちの中の1つです。
安易に何でも心霊現象に結びつけることは嫌いだが、今でも納得できるような答えが見つからない。
実際体験してみると、怖いと言うよりも、理解できない納得出来ないと言う感覚のほうが大きいと思います。
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