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日々の恐怖 12月17日 ルームサービス

2015-12-17 18:48:09 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 12月17日 ルームサービス



 今はもう取り壊されたホテルでバイトしていたときの話です。
そのホテル、老舗の高級ホテルで建物は古いが、格式は高くプロ野球チームの常宿でもあった。
俺はルームサービスとしてお客さんの対応をしていた。
 古いホテルと言うのは必ず何かしらあるもので、先輩から色々聞いていたが、幸い怖い思いは殆どした事が無く、いくつか知らされていたヤバイ部屋に行っても、何も怖いと思ったことはなかった。
 22時頃、フロントからお客がわけの分からないことを言ってるから、見てきてくれと連絡が入る。
名簿で調べるとその部屋は航空会社の利用、すなわちお客はキャビンアテンダント。
部屋は先輩から知らされていたヤバイ部屋の一つ。
 ヤバイ部屋というよりCAの部屋と言うことでドキドキしながらノックをすると、裸にバスローブを着たCAがガバッと扉を開け、

「 とにかく入って、お風呂見て!」

と言う。
 違う意味でドキドキしながら部屋に入るとき、まるでお風呂の湯気で押される様な圧迫感を感じた。

“ どうせゴキブリでも出たのだろう・・・。”

と風呂場に入るといい匂いがした。

“ いやいや、別に何も問題は無さそうだ。
ゴキもいないし、なんなんだ?”

と思っていると、

「 洗面台の鏡を見て!」

とCAが言う。
 曇っていて気が付かなかったが、良く見ると鏡に10㎝位の無数の髪の毛が貼り付いていて、思わず、

「 うぉっ!」

と声が出た。
 この部屋、嫌な感じがするし部屋を換えて欲しい、とCAに言われた。
この状況を見て拒否することも出来ないので、フロントに電話をして別の部屋を用意させた。

「 準備が出来るまで、一人じゃ怖いから一緒にいて。」

と言われ、CAが言うには業務用で割り当てられる部屋は曰く付きのことが多く色々怖い思いをしたけど、ここまではっきり変なものが見えたのは始めてだと言われた。
 そして、

「 髪の毛以外にも見えたものがあるけど、怖がらせるから言えない。」

と言われた。
 部屋を移った後の片付けは俺の仕事、風呂場の掃除も俺の仕事だった。
CAの言葉に影響されて俺はビビッていた。

“ イヤだなァ・・・。”

部屋に入り鏡を見ると、何故か髪の毛は増えていた。
そして、鏡の状態を見てゾッとした。
 それは、たまたまビビッていたから、そう見えたのかも知れない。
顔型に曇りが残り、その頭部に髪の毛が付いていた。
それも3、4人。
目を閉じ、口を大きく開けた何とも無念そうな、例えれば突然の事故で死ぬ瞬間の様な顔だった。
 俺は腰を抜かしそうになり、掃除もほったらかしにして逃げ出した。
スタッフルームに逃げ帰り暫くするとまたフロントから、例のCAに連絡する様に言われ、電話をした。
 すると、

「 本当は黙っているつもりだったけど、どうしても気になったから言うね。
気が付かなかったみたいだけど、実は鏡には髪の毛の他に5人の顔が写ってて、あなたが風呂場に入ったら、その5人が一斉にニヤッと笑った。
そしてあなたが風呂場から出てきたら、その中の一人だと思う人がついてきて、あなたを上から見下ろしていた。
今日は塩を身に着けて、出来れば線香の1本でもあげてね。」

と言われた。
変な部屋に泊めさせられた腹いせでは無さそうな気が俺はした。











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