日々の恐怖 12月12日 実家への帰郷(2)
M子さんが答えると、Kさんは言った。
「 そう。
じゃ、明後日の朝7時に学校の前で待ち合せしましょう。」
M子さんは携帯番号を教えてもらい、
Kさんと別れた。
翌日、部屋の掃除と洗濯を済ませて明日の準備をしていると、携帯に電話が掛かって来た。
実家からだった。
久しぶりの帰省に喜ぶ母親に、明日は近くのキャンプ場で友達と泊まってから、翌日に家に向かう事を告げると、
「 キャンプ場なんて有ったかしら?」
と言う。
ハイキングコースのゴミ拾いのボランティアの事を説明して、その近くだと言うと、
「 ハイキングコースなんて無いでしょう?
お前、忘れたの?
あそこはセメント工場のハゲ山だったでしょう。」
そう言われたM子さんは、子供の頃に電車から見えた、木のない削り取られた灰色の山々をハッキリと思いだした。
Kさんに電話して問い合わせるのもためらわれたM子さんは、サークル仲間に電話してKさんの事を聞いてみた。
「 ああ、あの合コンのきれいなお姉さん?」
サークル仲間によると、みんなKさんとはあの時が初対面で、都合が悪くなった女の子の代理で来たと言っていたという。
「 じゃ、その都合が悪くなった女の子は?」
と聞くと、友達の友達とかいう人で良くは知らないし、携帯とかの番号も聞いていない。
翌日の待ち合せには、M子さんは行かなかった。
“ Kさんから電話が有ったらどうしようか・・・?”
と怖かったが、電話は掛かって来なかった。
友達と一緒にKさんの携帯に電話してみると、何度掛けても呼び出し音が鳴り続けるだけで、二日後には通話不能となった。
調べてみると、Kさんの言っていたハイキングコースなど無く、キャンプ場も存在していない事がわかった。
学校に問い合わせると、Kさんという生徒は在籍していなかった。
都合が悪くなったという女の子も、未だに見つかっていない。
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