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日々の恐怖 12月14日 見覚えのない写真

2015-12-14 18:03:11 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 12月14日 見覚えのない写真



 仕事帰りの飲み屋で、一枚の写真を手に上司が話してくれた。

「 知ってるだろうけど、俺は山に行くんだ。
写真を撮りにね。
大学の頃から山はしょっちゅう登ってたから、技術には自信を持ってたんだけど、今から15年くらい前かな。
あまりにいい景色だったんで夢中でシャッターを切ってたら、足を滑らして転げ落ちちゃったんだ。
 根が卑しいのかカメラをしっかり持ってたんだけど、なんとか体を引っ掛けることが出来た。
でも危険な状態だった。
 一メートル先は完全な崖だったんだ。
なんとか体はとどめているけど、いつまた滑り出すか分からない。
 その時、上からザイルがするすると降りてきたんだ。
カメラを首にかけて夢中で登ったよ。
 安全なとこまで登りきって一息ついたんだけど、誰もいない。
叫んでみたけど返事もないんだ。
 是非お礼を言いたかったのだが、仕方がないと思って、その日は山を降りた。
家に帰って写真を現像してみると、山の写真の中に一枚見覚えのない写真があるんだよ。」

そう言って、上司は写真をよこした。
 崖に引っかかっている時に偶然撮れてしまった写真らしい。
そしてその写真の真ん中に、崖の上から覗きこむようにして男の顔が映っている。

「 俺はこの人にお礼が言いたくて、いつもこの写真を持ち歩いてるんだ。
だけど、お前、分かるか?」

写真の男の顔は皺だらけであったが、上司の顔にそっくりであった。

「 年々、俺の顔がそいつに似てきてるんだ。」

上司はそれを悩みの種にしているようだった。










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