日々の恐怖 12月22日 T字路
俺の実家は北海道の札幌近郊の小さな町なんだけど、正月休みだったから帰省していた。
それで家族3人(父、母、自分)で札幌に住んでる婆ちゃんの家にご飯食べに行こうってなった。
行きは父が車運転して、帰りは俺が運転したんだけど、ご飯食べて帰る時にはもう夜の8時過ぎてて周りは真っ暗だった。
札幌と言えど、郊外に行くと結構な田舎だ。
俺が車を運転して帰るのに、あまり運転に慣れてないのと、その道を自分で運転して走ったことないのとで、父に隣に乗ってもらって道を教えてもらいながら運転していた。
しばらく話しながら走って、俺が父に、
「 ここ、どの辺?」
と聞いたら、
「 今N町入ったとこだから、家までちょっとだよ。」
と言った。
暗くてよくわからなかったけど、そこは隣町のN町のようだった。
“ ああ、そしたらあと20分くらい走れば家に着くなぁ。
やっぱり長距離の運転は疲れる。”
みたいなこと考えながらそのまま夜道走ってると、道に見覚えがなくなった。
“ いつも親に同乗して乗ってたけど、自分で運転したらこんなもんか、夜道だし。”
とか思って走ってたら目の前に急にT字路が表れた。
家族みんなで?状態だった。
なぜなら、札幌からの帰り道、今までそんなT字路は一回も通ったことがない。
俺「 え・・・、父これどっち行くの?」
父「 み、右行け・・・。」
父の顔見るとかなり焦った顔してた。
それで父の言う通り右に曲がると細い農道みたいな砂利道だった。
そこからはもう街灯とかもないしUターンできないくらいの細い道だったから、怖くてかなりゆっくり走っていた。
いくら走っても地元の町に着かないし俺も両親もかなり不安になってきた。
そんなとき横に座ってた父が、
「 まるで狐につままれたみたいだな・・・?」
とか言い出した。
“ 狐か・・・、まぁ幽霊とかじゃなければいいか・・・。”
とか思ってそのまま走ってると、右前方に小さな動くものが見えた。
動物みたいだけど、こんなときに気持ち悪って思ってたら、それは本当に狐だった。
俺「 あ、狐だ!」
父「 猫かなんかだろ、あ・・・!」
減速して近づいて行くと、狐がこっちを見ながら砂利道を横切っていった。
北海道では別に狐が道路横切るなんてことは、そんなに珍しくないんだけど、それでもなんか気味が悪かった。
それからちょっと走ったらまたT字路に当たって今度も右に曲がった。
それで、やっと舗装してる道に出て、周りの景色を見ても、どことなく見覚えのある場所だったからやっと安心した。
それからはどこにも迷うことなく実家に帰れたんだけれど、帰ったあと家族で一杯やりながら話してたら父が気になることを言った。
砂利道を走ってるとき、父は言わなかったけど、実はあのとき確かに父の知ってる場所を走ってたらしい。
そこは地元近郊のゴルフ場近くの道なんだけど、N町の入り口つまり俺が父に、
「 ここどこ?」
って聞いた場所から何十キロも離れた場所にある。
俺が父に訪ねた場所から砂利道に迷い込むまでの時間は経ってても5、6分くらい。
到底そんな時間で何十キロも走れるわけないし、ましてその道を走り慣れてる父を隣に乗せて走ってるのに、そんな場所に迷い込む筈がない。
父曰く、俺が場所を尋ねた場所から少し行ったところに歯医者さんがあるので、その角から右折させたかったらしいけど、気がついたらT字路だった。
後日、不審に思って車で最初のT字路を探して行ってみたが、何故か見つからなかった。
狐が出て来たのは偶然だと思うが、訳の分からない出来事だった。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ