日々の恐怖 4月10日 二段ベッド(1)
Sさんの友人が子供の頃に体験した話です。
小学生の頃、家に帰ったらこげ茶色の立派な二段ベッドが部屋に置かれていた。
親父さんが知り合いから格安で譲ってもらったらしく、友人は前からベッドが欲しかった。
友人は大喜びで、その日から友人が上の段、友人の姉が下の段で寝ることになった。
ところがその夜、夜中に寝返りをうって友人は目を覚ました。
寝る前は右側に壁があったのはずなのに、今は左側にある。
いつの間にか寝ている位置が左右逆になっていた。
寝ぼけていた友人は、自分が寝相が悪くベッドの中で頭と足の位置が入れ替わったのだろう、と思ってそのまま寝た。
翌朝、起きてみると壁はちゃんと右側にあり、友人はきちんと布団に入って寝ていた。
友人は不思議な事があるもんだと思ったが、せっかく買ってもらったベッドなので両親にはその出来事は話さなかった。
その日の夜、友人は夜中にトイレに行きたくて目が覚めた。
二段ベッドの梯子を降り、半分寝ている頭でドアのほうに向かって歩くと、顔面から壁にぶつかった。
よく見ると、ドアがあるのは反対方向の壁だった。
どうやらまた寝ている位置が逆になっていたようだったが、眠かった友人は深く考えず、トイレを済ませてからまた寝た。
翌朝、さすがに2日連続不可解なことが続いたので、友人は今までの事を両親に話してみた。
案の定、両親は、
「 気のせいか夢でも見たんだ。」
と笑ったが、下の段に寝ている姉も同じ体験をしたらしく、青い顔で、
「 本当だよ。」
と言った。
このベッドで寝ていると、寝ている位置が夜中に目が覚めたときに変わっていて、朝に気が付くと元に戻っているらしい。
普段は仲が悪い姉弟も、この時は結託して両親に訴えてみたが一笑で終わった。
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