日々の恐怖 4月29日 恐怖の遠泳実習
うちの高校は体育系で、高校二年生の夏には遠泳実習という行事がある。
もちろん生徒にとっては苦痛極まりない行事で、毎年、2年生に成る生徒は愚痴をこぼしていた。
なんせ沖まで行って4、5時間泳がなきゃいけない。
体力の限界が来て溺れる生徒は毎年数人はいる。
ヘタすりゃ死ぬかもしれない。
そして、俺たちも2年生になり、遠泳実習を行う季節がやって来た。
実習の日が近づくにつれ、みんな溜め息が多くなってくる。
しかし、そんな俺たちに朗報が舞い込んできた。
毎年遠泳実習を行う海岸に、巨大なサメが出没したとのことだ。
このニュースを聞き、生徒の誰もが“遠泳実習中止”という言葉を脳裏に過ぎった。
予想通り急遽、特別ホームルームが行われることになった。
教室で先生を待つ俺たち。
その間、
「 俺たちってツイテル!」
や、
「 サメ様ありがとう!」
などの言葉が教室で飛び交っていた。
そして、先生がやって来た。
教室のドアを開け、静かにツカツカと歩き、教卓の前にヤツは立った。
みんながヤツの第一声であろう、
「 今年の遠泳実習は中止です!」
という言葉を待ち、ゴクリ、唾を飲んだ。
そして、ヤツは口を開いた。
「 え~、今からサメの退治方法を教えます。」
生徒の誰もが一斉に机ごとコケた。
その瞬間、教室は揺れていたに違いない。
俺はこの先、一生忘れないだろう。
先生様のあの冷静な口調と、ドリフターズ並にみんなが一斉にズッコケた光景、そしてサメの退治方法を。
サメの退治方法
俺が授業で習ったのは、サメって獲物に喰らいつくとき、一回沈んで、物凄い勢いで水面に向かって泳ぎ、その勢いで獲物を下から押し上げるようにかぶりつく。
先生様は、サメが下から来るその瞬間に出っ張ってる所をカウンターで殴れと言った。
無茶苦茶なことを言う先生様だった。
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