日々の恐怖 4月12日 二段ベッド(2)
気味が悪い二段ベッドだった。
使いたくはなかったが部屋のスペースの問題もあり、その日もベッドで寝ることになった。
夜中、誰かの泣き声で友人は目が覚めた。
姉の声だ。
階段で下に降りようと思ったが、どちらに壁があるのか確認するのが怖かった友人は、頭に布団を被ったままベッドから右側に手を伸ばしてみた。
壁の感触がある。
安心した反面、なにか嫌な予感がした友人は、左側にも手を伸ばしてみた。
壁の感触がある。
驚いた友人は布団から頭を出して周りを見てみた。
部屋の横方向がベッドの幅に圧縮されているように、左右に壁があった。
友人は頭パニックになりながら、とりあえず足元のほうからベッドのヘリを使って下に降り、下の段の姉の布団に飛び込んだ。
姉も顔をグシャグシャにしながら泣いていて、姉弟は抱き合いながら布団を被って夜を明かした。
翌朝、目が覚めると母親の顔が目の前にあった。
しかもかなり怒っている。
何を怒っているのかわけもわからず、友人は姉とベッドから出て周りを見て目が点になった。
部屋のドアを塞ぐように、ベッド本体が移動していたのだ。
母親は2人が夜のうちにイタズラをして移動させたと思ったらしい。
部屋のドアは内開きだったので、寝ている2人をベッドごと跨ぐ様にして母親は部屋に入ったとの事だった。
姉弟は泣きながら昨夜の出来事を話した。
初めはイタズラか、2人で寝ぼけたのかと笑っていた両親だったが、ベッドを元の位置に戻す段階でおかしい事に気が付いた。
どう考えても小学生の2人が移動させられるベッドの重さではなかったからだ。
結局、そのベッドは家からは消えた。
親父さんが返品したのか、捨てたのかは知らない。
曰く付きだったのかもわからない。
友人の家では二段ベッドの話はタブーとなっているので、未だに真相は闇の中だ。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ