大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 4月8日 村の神様

2016-04-08 18:16:30 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 4月8日 村の神様



 私の母方の親戚に脳に障がいがある子がいて、その子の話です。
去年のお盆に実家に帰省していた時、その子達家族が我が家へ遊びに来ました。
その子は13才になるけれど、知能は幼児レベルしかなく、私の横にぴたっとくっついて座り、おもちゃとかテレビ漫画とかについてつらつらと喋っていたんだけど、ふと、

「 ねえねえ、ちっちゃい○○ちゃんはどこ?」

と言うのです。
○○は私の名前です。
 私が、

「 ○○ちゃんは、ここにいるじゃない。」

と言うと、

「 ううん、ちがうちっちゃい○○ちゃん。」

とやっぱり言うので、私も調子を合わせて、

「 あらら、どこにいたの?」

と聞いてみました。
 すると、その子は、

「 あっち。」

と、私の使っていた子供部屋を指差しました。
 その子と私は20近く年が離れているし、私は高校進学で学校の寮に入ったため、15才までしかその家に住んでいませんでした。
ですから、その子が小さい頃の私を知っている筈がないし、子供部屋は物置になっていましたから、ひと目ではその部屋が子供部屋とはわかりません。
 私はびっくりして、

「 今はもういないの?」

と聞くと、

「 さっきまでいたんだけど、隠れちゃったかなあ・・・。」

と言ったきり、その子はまたおもちゃの話を始めてしまいました。
続きが聞きたかったけど、あんまり根掘り葉掘り聞くのもあれだし、それ以上のことは聞けませんでした。
 私は子供の頃とても神経質で過敏で、友達が少ない子供だったんですが、今はとても図太くなり、社交的だと周囲によく言われる大人になりました。
勿論、環境の変化や出会った友人達のおかげだとは思いますが、私は子供の頃の自分を、あの家に置いてきたのかもしれません。
 実家から戻る時、

「 一緒においで、置いてきぼりにしてごめんね。」

と思いながら家を出ました。
彼女が今も私の中にちゃんといてくれると良いなあと思います。
今ならきっとその子を抱きしめてあげられると思うからです。
 この話をあとで母にした時に、母が、

「 あの子は神様みたいなもんだから。」

と言いました。
 私の母は特に信仰心が篤いわけでもなく、珍しいこと言うなあと思って更に聞くと、なんでも母の生まれた村では、そういう障がいのある子供が各家に持ち回りの様にして生まれてくるということでした。
複数いることはなく、大概は村にひとりなんだそうです。
 それで、村のひと達は

「 この子は神様がつかわしてくれた子なんだなあ。」

と、そういった子供をとても大切に思っているそうです。
 その親戚は母の実家の後を継いでいるので、その家にその子が生まれた時に、母は、

「 うちの順番なんだなあ。」

と思ったと言っていました。
 閉鎖的な田舎でそういった子を持つ家を除け者にしないための知恵だとは思いますが、ちいちゃい私を見つけてくれたあの子は、やっぱり神様に近い所にいるのかも知れないなあと納得しました。











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