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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

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☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 2月13日 すみません(2)

2017-02-13 18:36:52 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 2月13日 すみません(2)




 もう1つその病院であったことです。
そもそも、私は霊が見える人ではないと思っていた。
これぞ幽霊というものは見たことなかったし(人ではなく物ならあったが)、音や引っ張られるということがほとんどだったからだ。
でも、本当に見えていないのか、それとも気付いてないのか分からなくなった話です。
 私の勤めていた検査室の廊下をはさんだ向かい側には放射線室があった。
検査室に入るときに放射線室が少し見えるのだが、昼休みから帰って来たときB先生がその放射線室のパソコンの前に座っているのが見えた。
 何か作業でもしているのかと特に気にもせず検査室に入り、検査をしていると電話が鳴った。
電話はC先生からで、B先生を知らないかというものだった。
つい先ほど放射線室でB先生の姿を見ていた私は、

「 放射線室にいましたよ。」

と告げると電話を切った。
 ふと横を見ると同僚Aさんが不思議そうな顔をしていた。

「 どうしましたか?」

とたずねるとAさんが、

「 B先生、だいぶ前から診察室で業者さんと話してるけど・・・。」

と言った。

“ じゃあ、さっき自分が見たのは誰だったのか?”

 とりあえず、C先生に連絡をした。
私にとって幽霊よりC先生の方が怖かったからだ。
 あのとき見たのが何かは分からないが、私はB先生だと思っていた。
透けてもいなかったし異様な雰囲気を出してるわけでもない、ただただ普通の後ろ姿だった。
でも、Aさんは絶対にB先生はそこにはいなかったという。
それからは私は、自分が見ている人は本当に本人かは分からないものなのだ、と思っている。









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日々の恐怖 2月12日 すみません(1)

2017-02-12 20:24:05 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月12日 すみません(1)



 前に勤めてた病院の話です。
そこは出来てまだ2、3年という新しい病院だった。
病床19床で、循環器と透析をしている病院というか診療所、そこに新卒で私は入社した。
 町外れにあるにも関わらず、患者さんは多く、繁盛していた。
新しい病院なので建物もきれいで、激務であったがそれなりに快適に過ごしていた。
 私が勤めていたのは、その病院の検査室だった。
出入り口は1ヶ所しかなく病院の中央に位置するところだったので窓もない。
そこで私と私より10年上の女性Aさんと仕事をしていた。
 検査室内での検査だけが仕事ではなかったので、外来に採血に行ったり、心電図を違う部屋に取りに行ったりで検査室にいないことの方が多かったが、外来も心電図の部屋も検査室から近く、看護師や患者さんが訪ねてきても姿や声ですぐ気付いた。
 ある日、心電図をとっていると、

「 すみません。」

という声が検査室の方から聞こえた。

“ 患者さんかな?”

と思い、急いでドアから検査室の方を確認すると誰もいない。
気のせいかと思い、その日はそれで終わった。
しかし、それからというもの、“すみません”という声は続いた。
 この“すみません”は謝罪ではなく声かけのほうで、本当に軽く、

「 すみません、誰かいませんか?」

というようなものだった。
 その声がする度に確認に行くが誰もいない。
きっと私の気のせいなのだろうとあまり気にもしてなかったが、あまりにも続くのでAさんに、

「 最近こういうことがよくあって・・、働きすぎですかねぇ?」

なんて冗談ぽく言ったらAさんの顔色が変わった。
 なんとその声をAさんも聞いていた。
自分だけじゃないということで、なんとなくこれは本当に何かがきていたんだなという気がした。
 その日のうちに調理室から塩をもらい、検査室の出入口に盛り塩をした。
その日から、ぱたりと“すみません”の声は聞こえなくなった。
 あの声は何だったのか分からないが、私もAさんも亡くなった患者さんが、亡くなってるのを分かっているのか知らないがまた検査しに来ましたという感じなのだろう、と思った。
それくらいにあの“すみません”は自然で悪意もないただの呼び掛けに聞こえた。
 これ以外にもAさんといるときこの病院でいろんなことがあったが、Aさんも同じ現象にあったのはこれだけだった。










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日々の恐怖 2月10日 マンションの住人(2)

2017-02-10 18:53:55 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 2月10日 マンションの住人(2)




 5時前くらいに、またインターホンが鳴った。
今度はオートロックの方だった。
 おっさんがまた来たのかと思ってビビったけど、今度はオートロックの外だしどんな面してんのか見てやろうと思ってインターホン取ったら、画面の向こうに制服着た警察官が二人いた。
やっぱりおっさんは全戸聞いて回ったらしく、他の住人の通報で来たらしい。
 詳しく話が聞きたいから出てきて欲しいと言われたけど、外に出ておっさんがいたら嫌だし、エレベーター一人で乗りたくないしで、結局警察に入ってきてもらうことにした。
 廊下で警察におっさんとのやり取りを話してると、少し離れた部屋のドアが開いた。
彼氏の部屋に泊まりに来てたっていう女の子で、やっぱりインターホン取っちゃっておっさんと話してしまい怖かったようだ。
 女の子が話すやり取りも、ほとんど俺と一緒だった。
一通り話を聞いた警察は、周囲のパトロールを増やす事と防犯カメラのデータを調べてみますって約束して帰った。
 その後、すぐ近くに住んでた同業と飲んだ時に、おっさんは同業のマンションにも現れたって言うから、他のマンションも今も回ってんのかもしれない。
 ここまででも十分気持ち悪かったんだけれど、その4日後くらいに警察が今度は昼頃に来て、

「 ◯階のXXX室に住んでる住人と面識はあるか?」

とか

「 △階のXXX室の住人はどうだ?」

とか、4部屋分聞かれた。
 どれも俺が住んでた部屋の階と違ったし、知らないって答えたんだけれど、どうも殺人容疑のヤツとかが、防犯カメラの映像から引っかかったらしい。
そいつらはおっさん事件の次の日辺りには、夜逃げみたいに消えちゃったと言うことだった。
 俺が一番怖かったのは、同じマンションに本当にヤバイヤツがうじゃうじゃいたってことだった。











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日々の恐怖 2月9日 マンションの住人(1)

2017-02-09 18:29:57 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 2月9日 マンションの住人(1)




 6年前に港区で一人暮らししていた。
築浅の綺麗なオートロックマンションだったけどちょっと訳ありの人が住むマンションで、飲食業・売れないグラドル・絶妙な服装で絶対顔を見せない人とかが集まってるところだった。
 そういうマンションだから、夜こそ人がいなかった。
俺も飲食業だったから普段は夜に家にいることは全然ないんだけれど、その日は具合が悪いから店休んで家にいた。
 深夜3時ちょい前に部屋の電気消してベッドでゴロゴロしてた。
すると、急にインターホンが鳴った。
 そのマンションはオートロック越しの来訪と玄関直での来訪で音が違うんだけど、その時は玄関直の呼び出し音が鳴って、飛び上がるくらい驚いた。
 驚きすぎて起き上がったまま硬直してたら、2回3回とインターホンが押される。

“ 同じ階の住人に、何かあったんかな・・・?”

って思って仕方なくインターホンを取った。

「 夜分遅くに申し訳ありません。」

ちょっと酒焼けしたようなおっさんの声だった。

「 はい?」
「 お住いの方みなさんにお聞きして回っているんですが、ころしていただけませんか?」
「 ころして?」
「 私をですね、殺害してもらいたいんですよ。
殺人、ご存知ですよね?」
「 何言ってんの?」
「 無理なようでしたら、あなたを殺させて頂けませんか?」
「 頭おかしいんじゃねーの!」

インターホン叩き切って、またベッドに戻った。
 最初は、

“ 変なおっさんだったな、気持ち悪ぃ~。”

と思うだけだったんだけれど、だんだん怖くなって来た。
 オートロック通って中入っちゃってるわけだし、みんなに聞いて回ってるってことはまだこのマンション内にいる。
警察に連絡するべきだったんだけれど、当時は税金とか払ってなかったし、ちょっと問題起こした時の賠償金みたいなのもバックれてたときで、連絡出来なくてずっとそわそわしていた。











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しづめばこ 2月8日 P475

2017-02-08 18:45:19 | C,しづめばこ



 しづめばこ 2月8日 P475  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 2月7日 記憶(3)

2017-02-07 19:35:29 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 2月7日 記憶(3)




 そう言った話は、ときどき聞くことがある。
で、知りたいと言うことだから、一応、実例で説明してみる。
大人でもあるんだが、子供だと起こりやすいことなんだ。
それは、自分で記憶を書き換えちゃうんだよ。

 俺の同級生Aが親に怒られて家出したのが小6の時だった。
隣の家の同級生B、よく一緒に遊んでた小1のCと三人で家出した。
 三人で所持金は千円もなかったと思う。
大騒ぎになって、見つかったのが十日後だった。
数十キロ離れた隣県の、海辺で遊んでるのが発見された。
 AはBを誘って家出した。
それにくっついって行ったのがCだった。
Cは両親が共働きで、いつもBにくっついて遊んでいた。
 家出して最初は山に行ったらしいんだが、Cが海が見たいといったんで、別方向に歩き出して海を目指したそうだ。
 移動は徒歩だった。
海に行って、観覧車に乗ったら、Cが、

「 もっと綺麗な海がいい。」

と言って泣くので、さらに綺麗な海を目指して歩き出した。
 途中見知らぬ婆さんに泊めてもらったり、食べ物を貰ったりして海を目指した。
そして、たどり着いた綺麗な海で遊んでるときに、警察官に発見されて保護された。

 おかしいのは、保護された時のAとBの記憶では、家出が3~4日の出来事だったということだった。
Cはいっぱい歩いたことと、空を飛んだ、とか言ってたことだ。
 三人とも学校の勧めで定期的にカウンセリング受けてたんだが、数年後のCの記憶では、家出事件は半日ほどの記憶になっていた。
 Cとは仕事の関係で付き合いがあるんだが、本人は半日ぐらいのことだと思い込んでいて、

「 それ、一週間だよ・・・?」

と言う周囲との記憶とのギャップを不思議がっている。












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日々の恐怖 2月6日 記憶(2)

2017-02-06 19:42:33 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 2月6日 記憶(2)




 三年前に母は他界した。
遺品整理の折に、行李の中から数冊の日記を見つけた。
俺が行方不明になった日は、母の激しい懺悔が記されていた。
 そして、そこに張り付けられていたのは俺が残したメモ。
ただ、俺の記憶と違うのは、それが緑のペンで書かれていたことだ。
そして、その後の日記から、俺はどうやら行方不明で警察も動いたらしいことが読み取れた。
 日記には段々憔悴していく母の様子が記され、ある日、

“発見”

という一語のあるページで日記は終わっていた。
 その日を俺が行方不明から発見された日だとするのなら、行方不明になったときから二週間、俺はどこに行っていたんだろう?
 保育所で起きたこと、小学校の入学式のこともおぼろげながら覚えている。
その家に帰ってからのことも、それなりに覚えている。
だけど、その2週間の間のことは先に書いたことくらいしか覚えていない。
 父は十数年前に他界しているし、主だった親戚もいない。
当時と住んでいるところも変わっている。
母親は俺に何も言わなかったし、俺は俺で家出していたのは1日だけのことだと思っている。
いったい何があったのか、今更だけど知りたい。










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日々の恐怖 2月5日 記憶(1)

2017-02-05 20:02:58 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 2月5日 記憶(1)




 小学校2年生の頃、理由は覚えていないが母親に激しく怒られた。
理由は覚えていない、が、

「 あんたはうちの子じゃない!」

みたいなことを言われたのだろう
 はっきり覚えてるのは、大泣きしながら母親が仕事で使っていた赤のサインペンで破った自由帳に書いたこと。

“ ほんとのおかあさんをさがします ”

そして、俺は家出した。
 両親は共働きで、俺は小学校に入るまで母の職場の保育室で育った。
だから電車の乗り方は知っていたし、実際その時も当時の自宅から数百メートルの距離にある。
 T駅から電車に乗った、そして母の職場とは逆方面の電車に乗ったのは覚えている。
あとはその家出中に、誰か優しい女性と海に行った記憶がある。
そして、凄くまぶしい草原のイメージ。
 次にある記憶は、俺が目を覚ますと自宅で寝ていて、父親と母親が号泣して俺に縋り付いている場面だった。
 それからは、俺は普通に生活していたと思う。
中学~高校~大学~就職と、今を生きている。
 ただあの日以来、何か世界が変わったような感覚が、今でも拭いきれない。
それ以来、母が人が変わったように優しくなったからだ。










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日々の恐怖 2月4日 窓の外(2)

2017-02-04 19:24:44 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 2月4日 窓の外(2)




 赤ちゃんはその日一番長々と、

「 うあうあー!きゃきゃー!!あーい~、きゃきゃ~!」

とIPadの画面を叩きながらはしゃいだ声を上げた。
 すると画面に、

“ 大宮さんがきよる。”

と表示された。
 姉が、

「 えー、なんか文章になった!
すごい~!
大宮さんて誰かな~??」

と笑う。
 すると祖父母が、

「 えっ!?」

と画面に顔を近づける。

「 大宮さんて、この機械に入れよるんかね?
名前を入れよるんかね?」

祖父が不思議そうに画面を眺める。
 姉は、

「 えっ??」

と祖父を見る。
 祖母が、

「 大宮さんて網元の、おじいちゃんのお友達じゃった人じゃが・・。
大宮さんが来よる、いいよるね・・・。」

と、同じく不思議そうに画面を見る。
 すると母親が、

「 あの・・・・・。」

と窓を指差す。

「 離れの方に・・・・・。」

 全員が窓の外を見ると、庭の向こうの離れの前に、日よけの帽子を被ったような人影が俯きがちに立っているように見えた。
祖父はすぐに、

「 ・・・、大宮さんじゃね・・・・。」

と呟く。
 祖母も、

「 大宮さんじゃあ・・・・。 
2月に亡くなりはったんじゃけどね、なして(どうして)じゃろうね・・・?」

と窓の外を見つめる。
 俺たちは、

「 え?え?」

とよく分からずに窓の向こうを覗き込むように首を伸ばしていると、祖母が

「 いけんいけん、いけんよ!」

と立ち上がり、カーテンをスッと閉めた。













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しづめばこ 2月3日 P474

2017-02-03 20:21:38 | C,しづめばこ



 しづめばこ 2月3日 P474  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



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日々の恐怖 2月2日 窓の外(1)

2017-02-02 18:45:51 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 2月2日 窓の外(1)




 昨年の夏に聞いた話です。

 昨日の話です。
今四国の田舎に帰ってきてるんですが、姉夫婦が1歳の娘を連れてきてるんだけど、夜が蒸し暑くてなかなか寝付いてくれなくて、祖父母、父母、姉夫婦、俺、そしてその赤ちゃんの8人で居間で夜更かししていた。
 田舎は海沿いの古い家で、庭に面した窓からは離れが母屋の明かりに照らされて浮かんでいて、それ以外には姉夫婦の車が見えるだけだった。
海沿いなので網戸越に波うちの音が聞こえて、蒸し暑いけど田舎の心地よさに包まれていました。
 皆でお茶を飲んで語らっていると、姉はIPadを持ち出してきて、

「 面白いもの見せてあげるわ!」

とボタンを押した。
 メモ帳画面でマイクのボタンを押すと、口述筆記みたいに話した言葉を文字にしてくれる機能だ。
姉はそれを赤ちゃんの口元に寄せて、

「 何か話してごらん~。」

とあやすと、赤ちゃんは、

「 あうあうあう~。」

と言葉にならない言葉を話す。
すると画面に、

「 合う会う、ううー良い愛ー。」 

みたいに、赤ちゃんの声を無理やり文字に起こしたものが表示され、姉は、

「 赤ちゃんの言葉やで!」

と笑う。
 祖父母も父母もうれしそうに、

「 おおー!すごいなー!」

と笑った
 夜もふけていく中、皆でその遊びをしばらく続けていました

「 あいあい~たー、うう~。」

という、言葉にならない赤ちゃん語を、

「 会い合い~他、右ー。」

みたいに表示していくIPad。
祖父母は、

「 最近の機械はえらいもんじゃのう!」

とはしゃぎ、俺たちも笑う。
 赤ちゃんは皆がうれしそうに笑うのと、田舎の家の薄暗さの中で光るIPadの画面に大喜びし、

「 うあうあいい~!!わーわー!きゃあー!」

と声を上げ続ける。
 姉は赤ちゃんを膝に乗せなおし、

「 はい、おじいちゃんって言ってごらんー!」

と赤ちゃんにIPadを向ける。










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日々の恐怖 2月1日 枕(2)

2017-02-01 20:21:47 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 2月1日 枕(2)




 しかし、日に日に眠りが深くなりすぎて、今度は仕事中でも眠気が酷い事になって来た。
それは同僚の人も一緒でとにかく眠くって、家に帰ったらすぐにあの枕で寝ていた。
最初は、

“ 疲れてるのかな・・・。”

と思っていたけれど、祖母が心配になって、

「 最近寝すぎちゃうか?」

って聞いてきた。
 眠かった母は、

「 う~ん・・・。」

って適当な返事をしながら枕に顔をうずめた。
その時、顔をうずめた瞬間、初めてその枕に違和感を覚えたらしい。
 音?におい?感覚的に、

“ あれ、変だな・・・?”

って思った。
 ガバっと起き上がると、急に眠気がふき飛んで怖気が背筋を走った。
何を思ったか、買ってそんなに使い込んでもいない枕を母はハサミで開けた。
もったいないとかそんな概念はなく、ただすぐ中身を見たかったらしい。
 そしたら、ソバ殻が、

“ バッサー!!”

って散らかった。
それを見てた祖母が思わず、

「 ヒィ!!」

って声を上げた。
 ソバ殻ってこげ茶色っぽいんだけど、中身の大半が明らかに赤黒い何かを塗ってあった。
でも、祖母が声を上げたのはそれが原因じゃなくって、一緒に入ってた写真だった。
ポラロイドで撮ったと思われるモノで全然知らないおっさんが竹林で手を振ってる写真。
それと皮のついた短めの髪の毛。
 唖然とする母が枕の内側をみると同じような赤黒い何かの跡があった。
三本指で線を引くような跡。
 祖母が封を切ったように勢い良く塩をもってきて部屋の中だってのにかまわずふりかけまくった。
そして母がハっとして、急いで中身をビニール袋に一粒残らず入れてお寺に持って行ったらしい。
 住職さんは差し出されたビニール袋の中身を確認するとすぐにお祓いしてくれた。
でも、ずっと薄気味悪い写真が頭の中でちらついてた。
さすがにその日は一切、眠れなかったそうだ。
 翌日、そのことをすぐに同じ枕を買った同僚に話したら、その同僚はダッシュで家に帰って中身を確認したらしい。
案の定、薄気味の悪い写真(でも同僚のほうは、どこかの海で撮った手を振るおっさん)と髪の毛だった。
それと枕の内側に二本の線。
同僚は同じようにお寺で供養とお祓いしてもらった。
 すぐに職場の寝具売り場担当にその事を言うと、

「 その枕は入荷が5個で売り切れた。」

という。
 売り場の担当は証拠もないし、ただの冗談だと思って真剣に取り合ってくれなかったし、出荷元もいたって普通の寝具屋だった。
いまだにアレはなんだったのか、残り3個の枕はどうなったのか、分からず仕舞いだった。
 証拠の枕を警察に持って行けばよかったのかもしれないが、そのときは警察に連絡するというより、気持ち悪さが先に立ってお寺行きだった。
 気持ちが悪い出来事だったけど、そうしたからかは分からないが、別にその後害はなかったし、怪談話の十八番にしてるって母は言っていた。
だけど、枕だけはいまだにソバ殻は無理だ。












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