パリを出発してアミアンにやってきた。7年ぶりのことだ。
初めて目にしたアミアン大聖堂は後陣の姿だった。まるで無数の刃の切っ先を突き立てたようなその姿に威圧感を感じつつ、
中心部に突出した高さ112mの尖塔を仰ぎ見て、西に進むと、
ようやく西正面の雄大な全体像にたどり着く。
この大聖堂は、ロマネスク様式だった以前の聖堂が火事で焼失してしまったのを機に、1220年にゴシック様式で着工された。
ちょうどこの時期はパリ・サンドニの聖堂を始めとして続々と新様式ゴシックの大聖堂がシャルトルやランスに立ち始めていた。
従来のロマネスク様式の聖堂は、とても厚い壁で造られた。それは、石で造られた天井の重みを支えるにはそれだけの頑丈な壁が必要となり、強度を損なってしまう窓も小さめにしか設置できなかった。
その問題を解決したのが、フライングバットレスという手法だった。
ヴォルトと呼ばれるこうした天井は、石の重みを外に広げ、壁を押し倒そうとする強い力が働く。
その力を受け止めるために、外壁に新たな「控え壁」を設けて天井からの圧力を解放するという「フライングバットレス方式」が編みだされた。
これによって、聖堂はよりスマートに、より高く、という願いを実現することが可能となった。
さらに、大きな窓が造れるということは、ステンドグラスという新たな芸術の展開を可能にした。
天にも届け! 天からの光よ 堂内にも差し込め!
神との距離を縮めてしまうようなゴシックの大聖堂が、中世のヨーロッパに次々と建ち始めた。
(もちろんそれは人間の欲望、虚栄心のなせる業でもあったのだが・・・)
そんな中でも最も雄大で最も華麗といわれるのが、アミアンの大聖堂だ。
青空の下でも美しいフォルムは実感できるが、夕焼けの時間になると、一層輝きを増してくる。
見上げる姿は迫力満点。さらに石とは思えぬ軽やかさも感じ取れる。
そして夜。ライトアップされたファザードは、濃い青の夜空を従えてくっきりと浮かび上がる。
建物というより芸術作品だ。
「この大聖堂は讃迎すべき女性である。聖母である。これほどに美しい大聖堂を再び見ることは、芸術家にとって何という喜びだろうか!」彫刻家ロダンがアミアン大聖堂を前にして語った言葉だ。
最後にもう1枚。プロジェクションマッピングによって仮想復元された、建設当初のあでやかな色彩に彩られた大聖堂を。
この連載中に改めてマッピングの模様を特集する予定です。
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