極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

不可抗な電力自由化

2012年05月22日 | デジタル革命渦論

 




【電力自由化の波】




経済産業省は2014年以降に家庭向けも含めた電力販売すべてを自由化し、新しい会社が参入する
のを認める方針を固めた。10電力会社が地域ごとに電力販売を独占している仕組みをやめ、家庭
が電力会社を選んで契約できるようにする。電気料金もできるだけ電力会社が競争して決めるよ
うに見直すという(朝日新聞、12.05.20)。

 

経産省の電力システム改革専門委員会(委員長=伊藤元重・東大教授)が18日、電力自由化を話
し合い、家庭向け電力販売にも自由に参入できるようにすることでほぼ一致した。自由化により
料金やサービスの競争を進めるねらいだ。これを受け、経産省は「委員会の考えに沿って対応し
ていきたい」(幹部)として、今夏をめどに具体策をまとめることにした。来年の通常国会にも
電気事業法改正案を提出する。混乱をなくすため自由化までに2~3年の準備期間を設けること
も考えるとのこと(同上)。

電力自由化は今回の福島第一原子力発電所の放射性物質禍により加速したことはいがめないが、
デジタル機器による通信能力や演算能力を活用して電力需給を自律的に調整する機能を持たせる
ことで、省エネとコスト削減、信頼性と透明性の向上を目指した新しい電力網と定義されている
スマートグリッド (smart grid)化であること、その背景として、米国の脆弱な送配電網を新たに
デジタルコンピュータ技術で低コストで安全運用手法の試行過程で生まれた構想で、電力網の供
給者と需要者の間をデジタル通信線で結ぶというアイデアに、家庭電化製品のネットワーク化推
進に失敗したメーカーやデジタル通信用のデバイス・メーカー、家庭内へデジタル回線を引き込
む機会と捉えた情報通信企業、プラグインハイブリッドカーや電気自動車、家庭用太陽電池発電
メーカらが次世代の送配電網の必要性の切迫がある。 

これが消費者や社会的利益に結びつくかは疑問符もつく。スマートグリッドを現実化するには、
(1)電力の送電網/配電網とその周辺の将来技術の予想や(2)電力需要の量的・質的予想、
(2)技術開発と規格統一といった多くの課題とされ、電力網全体に新技術を盛り込んだデジタ
ル式の通信、電力制御装置の敷設けでも巨額投資が見込めるため、電力機器メーカーや設備工事
業者、自動車メーカーやデジタル通信装置に関わる多くの関連業界が新市場と捉え、技術的優位
性を持つ日本や米国などは国際的な標準化の確立を目指している。
 
なお、最小のコストで送電網を構築コストの低減が大きな課題である。また、事業所や工場など
分散型でエネルギー供給源から末端消費部分を通信網で管理する場合も定義に含まれるため「マ
イクログリッド」とも呼ばれるケースがある。

ボース-アインシュタイン凝縮から高温超伝導へ

【個人的な3つの視点】

 Cooper pair

電力自由化を考えたとき個人的には、(1)交流方式か直流方式か(2)電力供給網のグローカ
ル化(3)逆潮流問題に関心がある。

まず、1つは送電の直流化課題。デジタル革命(第一則:シームレス)のパワー・エレクトロニク
スの進歩は、直流システムを再びスポットライトを当てる。これは直ちに交流送電体制を直流シ
ステムに転換する必要はなく、既設の交流システムを補完するかたちで、有効に連系できる(下
図表クリック)。パワー・エレクトロニクスは、電カエネルギーを半導体で制御し、電力の生産
や供給における無駄を減らすための技術領域で、あらゆる電力エネルギーの分野に及んでいる。
インバータは交流から直流の電力を得る変換装置で、交流電圧がプラス時に開路で、マイナス時
に閉路になるスイッチを組み合わせ、常に出力電圧がプラスになるようスイッチ群を動かす装置
だ。このような開閉を行う半導体素子の関連技術の進歩は周知のごとく。



周知の通り、直流送電は交直変換装置のコスト高の欠点があるが、それより増して利点の方が多
いのだ。まず、送電鉄塔は交流送電よりはるかに低く小さくできる。経済的送電効率は交流送電
に比べ送電距離に比例してよくなる。交流送電は30キロメートルが最適であるが、直流送電は、
一万キロメートルまで送電が可能になる(下表)。


直流伝送の課題として超伝導物質による送電技術もあるがハードルは高い。勿論、超電導ケーブ
ルは、液体窒素温度(マイナス196℃)で超電導状態となる高温超電導線材を電流が流れる導体に
使用することで、小さな断面積で大電流を、低損失で流すことができる。現用の送電用ケーブル
と比較して軽量かつコンパクトな大容量送電線を実現でき期待されている。ケーブルの構造は、
フォーマと呼ばれる芯にテープ状のイットリウム系超電導線を多数本螺旋上に巻きつけ、その上
に、電気絶縁層、超電導シールド層、保護層を設けることでケーブルコアを形成し、ケーブルコ
アを断熱管の中に収納したものなどが開発されている。そこで、超伝導ケーブルを使い、自然エ
ネルギーの欠点である起電力の不安定さを『超伝導地球電力ネットワーク』を構築し解消すると
いう構想があるが、長期的には可能だ。因みに、このシステムはデジタル革命での第三則:ボー
ダレスに該当。

超高圧超電導ケーブル写真

※「超伝導ものがたり」、北澤宏一

また直流化は、太陽電池や燃料電池の分散型発電装置の普及にも不可欠だ。直流で送電が統一さ
れれば、後は蓄電装置と変圧装置が、国家政策の導入促進として実現すれば、従来の電力供給の
独占体制から解放され、2つめの「電力供給網のグローカル化」が進むといことになる。それは
前述した『超伝導地球ネットワーク』であり、国境越えを果たす(→全球化)であり、同時に、
最少ローカルセル(→地域社会)の自律分散型電力(太陽・燃料・風力)供給の実現であり、双
方を融合させた高度分業社会(=社会主義社会段階)の実現へと発展」するものだ。

最後に3つめの逆潮流問題。つまり、家庭や工場といった通常は電力を消費する側が反対に電力
系統に対し、電気を送り出す電力のことを「逆潮流」と呼んでいるが、電力系統内で配電する電
力の容量は電力消費の大小、需要に応じて設計されているが、逆潮流ではこの設計時には想定し
なかった供給者が電力系統に加わることによる予期せぬ問題を意味する。その1つとして、電圧
変動と周波数変動があり、電力系統でも大規模な送電系統では中央給電指令所の集中監視の下で
発電所の調速器によりこれら電力供給での品質が維持されているが、電力会社が発電量をコント
ロールできない逆潮流が多量に流入すると、電力の品質維持が困難になるというもの。また、事



業所発電のような大規模な発電を逆潮流として受け入れる場合、電線やにもそれなりの対応が行
えるが、無数の小規模な発電への対応は問題となる可能性がある。例えば同一の変圧器によって
配電される住宅地内の複数の家が発電した電力を同時に逆潮流として流せばその分だけ電圧は電
線や変圧器などの許容量に応じ局所的に上昇。電気事業法第26条および電気事業法施行規則第4
4条の定めにより101±6Vや202V±20Vの範囲内に収める必要があるが、各戸のパワーコンディショ
ナが規定通り機能すれば無効電力として売電されず。また、変圧器から遠い家では電圧上昇の影
響を大きく受け、変圧器に近い複数の家が逆潮流を行えば、配電系統の末端側は常に電圧の規定
値上限近くになり、最悪の場合には末端側の家は発電して余った電力を全く売電できなくなる可
能性がある。



図表の(1)変圧器を増やす、電圧制御装置の設置、電線を太くすると給電の電圧を上げるは前
述したように直流化で対応できる。(2)蓄電設備増設は(1)の対応と重なるところがあるが
発電部での蓄電装置の配備強化で対応すれば緩和されるものと考えているが、問題は標準化など
の法整備と配置促進のためのシステムづくりが肝要(→「未来国債の創造」への組込み)。なお、
直接関係ないと思われがちな「送電線埋設化」なども、モデル地域を指定して社会実験として併
せて行えば良いと考えている。超伝導ケーブルなどの供給不安はあるものの、供給力は過大に存
在し、「スマートグリッド」や「スパーハイウェイー」に対する潜在的な需要は旺盛な状況にあ
るなら「デフレ・一極集中・格差拡大の脱却の政策促進としても電力自由化は大変有効だと考
えている。

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